第99話 黒歴史の一端
7階での初戦を終えた後も、秀矢たちの探索は順調そのものだった。
巨大な白熊、騎士、僧侶、魔法使い、戦士。
遭遇するモンスターは、いずれもデータにない新規のものばかりで、6階とは比較にならないほど強い。
しかし、秀矢たちも6階の時とは違い、法龍院巳月という頼もしい味方の加入のおかげで命を繋ぎとめてる。
ただ、巳月の戦い方を何度か目にした秀矢は、居た堪れない気持ちになっていた。
《どうしたの? 秀矢。浮かない顔して》
7階の探索を進める最中、亜由美が声をかけてきた。
「うーん」
《え? 何? エロガキが気になるの? ダメよ。犯罪者になるわよ》
現在の隊列は、前にポチ、荒川、巳月。
その後ろに長光。
長光の後ろに、日下部、秀矢という列を組んでる。
情報が少ない内は、指令塔を取り囲む陣形を敷くのが慣例らしい。
「なんかなあ、痛々しいというか、気恥ずかしいというか――」
《? 確かに、エロガキの戦い方は危なっかしいけど、じっちゃんの娘だけあって度胸と実力もあるし、私達との連携もちゃんとしてるわよ。新人のくせに》
「わかったわ!」
突然、話の腰を折った日下部に目をやる。
「サクナ!?」
「巳月ちゃんの戦い方……何か既視感あるなあ、とは思ってたんだけど、よくよく考えたら、小っちゃいころの師匠と同じなのよ」
(それか!?)
日下部の言葉で、自分の身に起きてる不可解な感情の正体がハッキリした。
巳月の奮戦が、昔の自分と重なって、目を背けたくなるような痛々しさと気恥ずかしさがこみ上げてきた。
《小さいころの秀矢……か。くっ……奈央姉。昔の秀矢はどんな感じだったの?》
「……いや、待て待て。俺、小学校のペイントゥーン大会の時はサクナと組んでたけど、その頃は少し落ち着いてたはず」
「固定組む前から、野良で何度か一緒にプレイしたことあるわよ」
「そうだっけ?」
「うん。大会に出る一年前辺りから、デスコードで私の募集に何度か参加してくれたのを覚えてるもん。まあ野良で組んだ人の名前は、あまり覚えないから仕方ないか」
《忘れてくれればいいのに》
「大会に出る1年前って言ったら――」
「怖いもの知らずでヤンチャだったわよね。あの頃の師匠は――」
「そ、そうですね」
「弟みたいに生意気で時折、鼻につく物言いが引っかかってたけど」
「はい、あの時はすみませんでした。海よりも深く反省してます」
《秀矢にも、そんな時期があったのね》
「でも味方への暴言は無かったし、小学生なのもあって、あの時一緒に遊んだ人はみんな受け流してくれてたわね」
《そういう所は昔から変わらないんだ》
「色んな配信者の動画を履修してたから、味方への暴言は控えるように気を付けてたよ」
「弱い武器とか使えないスキルは、情け容赦なく叩いてたけどね」
「そこは若気の至りというか、無知で人生経験の浅い若輩者の過ちというか――」
《奈央姉! そういう話、もっと頂戴!》
「止めろ! 俺の黒歴史を掘り返すようなことは止めてくれ!」
過去の自分。
小学校低学年の時は、勝つために考えるという発想はなく只管、敵を倒し続けるプレイスタイルを貫いた。
その方がわかりやすくて楽しかったし、何より勝ち続けることができたから。
しかし、攻撃一辺倒の立ち回りは、どこかで頭打ちになる。
それは、秀矢も例外ではなかった。
(巳月に悪気がないのは理解できる。勝利ってのは、チームへの最大の貢献だからな)
一緒に戦ってみてわかったのは、巳月は戦いとなるとクールな雰囲気とは裏腹に、血気盛んで圧倒的な力で相手を叩きのめすが好みのようだ。
《へえ~、イキリ小学生の秀矢も見てみたかったなぁ》
「今だから笑えるけど当時は、もう目の前に居たら手が出てたわね。固定組んだ頃には丸くなってたから、よかったけど」
秀矢が物思いにふけてる間にも、二人は秀矢の昔話で花を咲かせてたようだ。
「あの……サクナさん……そろそろ勘弁してくれない?」
「人の秘密をバカにした、お返しよ」
「何でだよ!? あれはサクナの自滅だろ!?」
「三人とも、お楽しみのところ悪いね」
秀矢たちの間に、長光がボイスチャットで割り込む。
「長光さん、何かありましたか?」
「宝箱を見つけた」




