裏口の謎
「ふう……今日もバラは綺麗に開花中、と」
庭をゆっくりと歩きながら、私は植えられた緑の様子をひとつひとつ確認していった。目立つのは花をつけている植物だけど、気にするべき点は花だけにとどまらない。葉の緑を楽しむもの、枝葉の形そのものを楽しむものなど、庭園美を楽しむポイントは多岐にわたるからだ。
一通り見てまわり、庭の入り口に戻ってきたところで私は足を止めた。
「今日もいつも通りの配達ね」
私はぼんやりと屋敷の裏口に目を向けた。
門の造りこそ大きいものの、お客を出迎える正面玄関とは違い、ほとんど装飾らしい装飾は施されていない。使用人の出入りや、食料品などの荷物を受け入れるための門だから、当然の話だ。
行動範囲が屋敷全体に広がってから、時々見ている場所である。
下級聖女として長く神殿の運営に関わっていたせいだろうか? ついつい、どんな業者が出入りしていて、何が運びこまれているのか気になってしまうのである。
さすが富豪アシュトン家というべきか、毎日庶民の暮らしとはかけ離れた量の食品や雑貨が出入りしている。しかしその中でひとつ腑に落ちないものがあった。
「……やっぱり、衣類の業者がいない」
様々な業種の出入りするアシュトン家だけれど、女性もののドレスや靴などを扱う洋品店の馬車だけが見当たらないのだ。
私の部屋には、毎日のように豪華な衣装が届けられているというのに、だ。
アクセサリーを持ち込む馬車がないのはわかる。小さく高価な宝石類は、外商がうやうやしく正面玄関から届けるものだ。
しかし絹地が何枚も重なっているような豪華なドレスはかさばる上に、あまり何度も折りたためない。どうしたって大きな箱にいれて荷馬車で運び込むほかない。
どうしたって目に入るはずなのに。
「どこから調達してるんだろう……?」
他に荷物の搬入ルートがないか調べてみたけれど、入り口は正面と裏口だけ。富豪の屋敷とはいえ、さすがに抜け道が地面の下に通されていたりはしないだろう。わざわざドレスだけそこから運ぶとも思えないし。
どこからか湧いて出たとしか思えない。
ディアンさんにもそれとなく聞いてみたけれど、微妙な笑顔ではぐらかされてしまった。
旦那様が勝手に用意したのだから、ありがたく受け取っていればいい、ということらしい。
「でも、ちょっと気になるのよね」
首をかしげながら、足を庭に向け直した時だった。
「みーつけた」
女の子の声が、間近で聞こえた。
「ひゃっ?!」
いつの間に現れたのか。
振り向いたそこには、少女がひとり立っていた。
歳は十四、五くらいだろうか。まだ成人するには一歩足りないくらいの年齢だ。よく手入れされたきらきらの金の髪に緑の瞳。目の覚めるような美少女とは彼女のことを指すのだろう。良家のお嬢様であることが一目でわかる。
そして、この声には聞き覚えがあった。
「あ……」
「初めまして、私はマリオン・フェアフィールド。あなた、お兄様のお嫁さんよね?」
以前、庭に入り込んでカイルと口論していた子だ。




