表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お前は、ヒロインではなくビッチです!  作者: もっけさん
オブシディアン領で労働中

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

201/207

聖女が増殖を始めました3

 ――“聖女増殖事件”。


 それはもはや事件ではなかった。


 災害である。


「八人目です!!」


「九人目も確認!!」


「二桁いきましたぁぁぁ!!」


「やめてぇぇぇぇ!!」


 ユイの悲鳴が綺麗にハモる。


 誰か録音して。


 後で元気ない時に聞くから。


「……増えすぎじゃない?」


 さすがの私もドン引きである。


 想定の三倍速で増殖してる。


 これ絶対どこかで培養されてるでしょ。


「報告によりますと」


 フリックが淡々と読み上げる。


「“夢で神の声を聞いた”“急に光った”“なんとなく名乗ってみた”など」


「最後雑すぎない?」


 “なんとなく聖女”って何。


 軽率にも程がある。


「さらに」


「まだあるの!?」


「“隣の人も聖女っぽいので私も”“友達がやるなら私も”といった連鎖反応が」


「パンデミックじゃん」


 感染してる。


 概念が感染してる。


 もう手遅れでは?


「……リリアン」


 ユイが震える声で言う。


「これ、止めないとまずいんじゃ……」


「うん、そうね」


 私はあっさり頷く。


 そして――


「加速させようか」


「なんでぇぇぇ!?」


 全力ツッコミいただきました。


 今日一番のキレ。


「だって中途半端が一番ダメなのよ」


 指を立てる。


 なぜか説教モード。


「混乱ってね」


 やたらいい声で言う。


「極まると逆に落ち着くの」


「そんなわけあるか!!」


 あるんだなこれが。


 たぶん。


「フリック」


「はい」


「今何人?」


「現時点で……十二名」


「よし」


 私はにっこり笑う。


「倍にしよう」


「やめてください」


 即拒否。


 珍しい。


「なぜですか」


「国が耐えられません」


 正論。


 でも押す。


「大丈夫大丈夫」


 軽く手を振る。


「どうせもう壊れかけてるし」


「それを止めるのが役目です」


「えらい」


 褒めた。


 でも無視する。


「伝令!」


「は、はい!」


「“聖女名乗り大歓迎”って触れ回って」


「火に油ぅぅぅ!!」


 ユイがもう叫び芸の域に達してる。


 将来有望どころか完成されてる。


「あと」


 私は続ける。


「“参加特典あり”もつけて」


「特典!?」


「なに配る気なの!?」


「うーん……」


 ちょっと考える。


「パン」


「現実的!!」


「大事でしょ食料」


 むしろ最強の集客アイテム。


「……フリック」


「はい」


「パン、いける?」


「倉庫を確認いたします」


「ノリいいな!?」


 止めてほしいところで加速するのやめて。


「さらに」


 私は手を叩く。


 もう何回目かわからない。


「“聖女検定試験”やろう」


「新しい制度作った!?」


「筆記と実技で」


「ガチじゃん!!」


 ユイのツッコミが止まらない。


 いいね、リズムがいい。


「筆記は?」


「“聖女とは何か”について800字」


「作文!?」


「実技は――」


 少し考える。


「光るかどうか」


「雑ぅぅぅ!!」


 判定基準がゆるすぎる。


「あと回復魔法とか」


「急にそれっぽくなった!」


「バランス大事」


 何のバランスだ。


「……リリアン様」


 さっきの偉そうな人が、震えながら言う。


「これは……あまりにも……」


「うん?」


「無秩序です」


「知ってる」


 にっこり。


 満点回答。


「でもね」


 私は少しだけ声を落とす。


「無秩序って」


 一歩前に出る。


「誰かが“秩序”って言い張れば」


 指を鳴らす。


 パチン、と音が響く。


「それになるのよ」


 しん、と静まる一瞬。


 ――の、はずだった。


「聖女様ぁぁぁ!!」


 ドドドドドドッ!!!


 新しい集団が雪崩れ込んできた。


 何人いるのこれ。


 数えるの諦めた。


「私が聖女です!!」


「いや私です!!」


「私もです!!」


「ついでに友達も!!」


「巻き込み式!?」


 ユイのツッコミが追いつかない。


 処理落ちしてる。


「よし」


 私は満足げに頷く。


「いい感じに増えてきた」


「いい感じじゃない!!」


「フリック」


「はい」


「今何人?」


「……三十を超えました」


「早いなぁ」


 成長速度が怖い。


 この国の未来も怖い。


「じゃあ――」


 私は両手を広げる。


 完全にテンションがおかしい。


「全員、並んで」


「並ぶの!?」


「はい整列ー!」


 なぜか従う聖女(自称)たち。


 統率取れてるのが一番怖い。


 ぞろぞろ並ぶ。


 食堂が埋まる。


 圧。


 すごい圧。


「……壮観ね」


「地獄だよ!!」


 ユイ、ついに敬語消えた。


 いいぞ、そのまま行け。


「えーと」


 私は一同を見渡す。


 全員キラキラした目。


 自己主張の塊。


 カオスの化身。


「じゃあまず――」


 にっこり笑う。


「“自己紹介からどうぞ”」


「合コンかな!?」


 ユイの叫びが響く。


 その瞬間。


「はい私から!!」


「いいえ私が!!」


「いやここは年長者が!!」


「順番決めてぇぇぇ!!」


 ――大爆発。


 音量の暴力。


 情報の洪水。


 完全なる崩壊。


「……」


 私はその光景を見て。


 ゆっくりとスープを飲んだ。


 まだ温かい。


「リリアン!!なんとかして!!」


「んー?」


 ユイの必死な声に、適当に返す。


「大丈夫大丈夫」


「どこが!?」


「そのうち」


 私は肩をすくめる。


「誰も何言ってるかわからなくなるから」


「もうなってるよ!!」


 正解。


 完全正解。


「だからほら」


 私はにやっと笑う。


「ここからが本番」


 混沌のど真ん中で。


 私は楽しそうに呟いた。


「――全部、暴いてあげる」


 なおその声は。


「私が本物ですぅぅぅ!!」


「違いますぅぅぅ!!」


「パンどこぉぉぉ!!」


 という絶叫に完全にかき消された。


 ……うん。


 まあいいか。


 どうせ聞こえても聞こえなくても――


 状況は、もう。


 取り返しがつかないのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ