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お前は、ヒロインではなくビッチです!  作者: もっけさん
オブシディアン領で労働中

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強制イベント発生・聖女召喚されました2

 ――あ、終わった。


 と、その場にいた全員が思った。


 例外は一人もいない。


 満場一致である。


 異議申し立て、ゼロ。


 拍手すら起きそうなレベルの「終わった感」だった。


「さて」


 私はパン、と手を打つ。


 軽い音。


 なのに全員ビクッと跳ねる。


 なにこれ、私いつの間にかボスキャラになった?


「とりあえず現状整理ね」


 指を一本立てる。


「無許可で異世界召喚」


 二本目。


「安全対策ゼロ」


 三本目。


「責任者、誰も名乗り出ない」


 四本目。


「そして――」


 少女の手を軽く引き寄せる。


「被害者、ここ」


「ひっ」


 神官の一人が小さく悲鳴を上げた。


 あ、今“被害者”ってワードで刺さったわね。


 いい傾向。


「で?」


 にっこり。


「言い訳、ある?」


「……」


「ないのね」


 即断。


 即死。


「じゃあ次」


 パン、ともう一回手を叩く。


「この子の処遇」


「それは……その……」


「“聖女として保護”とか言う気?」


「……っ」


 図星。


 はいビンゴ。


「テンプレすぎて逆に芸術点高いわね」


 思わず拍手しそうになる。


 しないけど。


「で、その“保護”って具体的に何?」


 一歩近づく。


「囲い込み?」


「監視?」


「それとも“都合のいいお人形化”?」


「ち、違う……!」


「違うの?」


 首を傾げる。


「じゃあ“本人の意思を尊重する”って言える?」


「……」


「言えないのね」


 はい終了。


「アウト三連コンボ」


 ドン、ドン、ドン。


 心の中でゴング鳴らしとく。


 K.O.です。


 ありがとうございました。


 ――と、その時。


「……あの」


 小さな声。


 少女だ。


 おずおずと、私の袖を引く。


「その……私、帰れますか?」


 空気、凍結。


 第二ラウンド開始。


(うわぁ……)


 これはキツい。


 地味に一番キツい質問来た。


 神官ども、目逸らした。


 おい。


 お前ら。


 今だぞ責任。


 ほら言えよ。


 言ってみろよ。


 ――誰も何も言わない。


(はい知ってた)


「……ねぇ」


 私は振り返る。


「帰還手段、あるの?」


「……古文書には、その記述は……」


「ないのね?」


「……はい」


「はい詰み」


 軽く言う。


 軽く言ってるけど内容は重い。


 クソ重い。


 少女の指がぎゅっと私の服を掴む。


 震えてる。


(そりゃそうよね)


 知らん世界に拉致られて、

 帰れませんって言われたら。


 普通に人生ハードモードすぎる。


 バグ報告案件。


「……大丈夫」


 私はしゃがんで、目線を合わせる。


「すぐには無理でも、方法は探す」


 断言する。


 根拠?


 ない。


 でも言う。


「絶対に、帰す」


 少女の目が少しだけ揺れた。


 不安と、ほんの少しの希望。


 うん、それでいい。


 まずはそれでいい。


 立ち上がる。


 振り返る。


 神官どもを見る。


「聞いた?」


 にっこり。


「今の、“私の仕事”だから」


 宣言。


 完全に縄張り主張である。


「異論ある?」


「……」


「ないのね、よし」


 勝手に進めるスタイル。


 嫌いじゃないでしょ?


 知ってる。


「で、あんた達は」


 指を向ける。


「“やらかした側”」


 一語一語、はっきり。


「だから――」


 一拍。


「働いてもらうわよ?」


 全員の顔が引きつる。


 あ、いい顔。


 すごくいい。


「資料洗い出し」


「古文書の再調査」


「召喚術式の完全解析」


「あとついでに」


 笑顔。


「責任の所在もはっきりさせるから」


「……っ」


 誰かが息を呑む。


 うんうん。


 逃げ場ないよ?


「逃げたら?」


 優しく言う。


「追いかける」


 即答。


「地の果てまで」


 即断。


「物理で」


 確定。


 ――沈黙。


 そして。


 全員が悟った。


(これ、ブラック企業より逃げられないやつだ)


 と。


 フリックが一歩前に出る。


「配置、指示を」


「お願い」


 私は軽く頷いた。


「徹底的にやって」


「かしこまりました」


 その瞬間。


 空気が変わる。


 さっきまでの“やらかした空間”が、


 一気に“強制労働現場”へと変貌した。


 人ってここまで顔死ぬんだなぁ。


 新発見。


「さて」


 私は少女を見る。


「とりあえず名前、聞いてもいい?」


「……えっと、ユイ、です」


「ユイね」


 頷く。


「いい名前」


 ほんとに。


 呼びやすいし。


「私はリリアン」


 一応名乗る。


「さっきも言ったけど――」


 軽く笑う。


「ここで一番マシな人間」


「……うん」


 小さく頷くユイ。


 よし。


 信頼ゲージ、さらに+1。


「で」


 私は歩き出す。


「まずはご飯食べよっか」


「……え?」


「お腹空いてない?」


「……空いてる」


 正直でよろしい。


「でしょ?」


 振り返る。


「世界がどうとか、その後」


 軽く手を振る。


「優先順位、大事だから」


 少女は少しだけ笑った。


 ――その瞬間。


 張り詰めていた空気が、ほんの少しだけ緩む。


 でも。


 裏では。


 確実に歯車が動き始めていた。


 教会内部の権力構造。


 ナリスの動向。


 そして――


 “二人の聖女”。


(あーあ)


 心の中で呟く。


(絶対めんどくさいやつじゃん、これ)


 でもまあ。


 逃げる気はない。


 むしろ――


「来なさいよ」


 小さく笑う。


「全部まとめて相手してあげる」


 ――嵐はまだ、始まったばかりだった。

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