第十一話「生き残った研究員」
本作は『聖魔剣戦記』の外伝です。
本編では語られなかった人物たちの過去や、物語の裏側で起きていた出来事を描いていきます。
彼らが何を経験し、何を思い、どのような道を歩んできたのか。
本編とはまた違った視点から、『聖魔剣戦記』の世界を楽しんでいただければ幸いです。
それでは、外伝の物語をお楽しみください。
聖魔剣戦記 外伝 ― 被験体201番
研究施設の中に、悲鳴が響いていた。
アルヴィンは廊下を走っていた。
背後から聞こえる足音。
そして、仲間たちの声が次々と途絶えていく。
「くそっ……!」
振り返る余裕はなかった。
黒いローブをまとった工作員たち。
彼らは研究員を一人残らず始末するつもりだった。
アルヴィンにも、それは分かっていた。
このまま逃げ続けても、いずれ追いつかれる。
どこかに身を隠さなければならない。
やがて、彼は教会へと続く入口付近にたどり着いた。
そこには、すでに何人もの研究員が倒れていた。
「……みんな……」
見慣れた仲間たちの姿に、アルヴィンは足を止めかけた。
しかし、立ち止まっている時間はない。
彼は倒れている仲間たちの間に身を横たえ、動かないように息を潜めた。
やがて、複数の足音が近づいてくる。
「周囲を確認しろ。生存者を残すな」
工作員たちの冷たい声が聞こえた。
アルヴィンは目を閉じ、必死に気配を殺した。
足音がすぐ近くで止まる。
「……こちらは全員死亡しているようです」
「研究資料は回収したか?」
「はい。必要な資料は確保しました」
「よし。入口を封鎖しろ」
その言葉の後、何かが崩れる大きな音が響いた。
研究施設へ続く入口が、瓦礫によって塞がれていく。
「任務完了。行くぞ」
工作員たちの足音が、少しずつ遠ざかっていった。
それでも、アルヴィンは動かなかった。
彼らが本当に立ち去ったのか、確かめる必要があったからだ。
しばらくして、周囲が静まり返る。
アルヴィンはゆっくりと目を開けた。
「……行ったのか?」
声にならないほど小さくつぶやく。
仲間たちは、もう誰も動かなかった。
アルヴィンは唇を噛みしめた。
生き残ったのは、自分だけなのかもしれない。
だが、ここで終わるわけにはいかなかった。
彼には、まだやらなければならないことがあった。
第十一話「生き残った研究員」 完
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回の外伝では、『聖魔剣戦記』本編では語られなかった物語をお届けしました。
本編では描ききれない人物たちの過去や、それぞれが歩んできた道。その裏側にある出来事を知ることで、物語の世界をより深く楽しんでいただけたら嬉しいです。
これからも、本編では描かれない物語や人物たちの知られざる一面を、外伝を通してお届けしていきたいと思います。
少しでも楽しんでいただけたなら、ぜひ感想や応援をいただけると励みになります。
これからも『聖魔剣戦記』をよろしくお願いします!
三國ユウ




