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第三話「最初の検査」

本作は『聖魔剣戦記』の外伝です。


本編では語られなかった人物たちの過去や、物語の裏側で起きていた出来事を描いていきます。


彼らが何を経験し、何を思い、どのような道を歩んできたのか。


本編とはまた違った視点から、『聖魔剣戦記』の世界を楽しんでいただければ幸いです。


それでは、外伝の物語をお楽しみください。

聖魔剣戦記 外伝― 被験体201番


翌朝。


施設内に、甲高い鐘の音が鳴り響いた。


ルミナは驚いて目を覚ました。


「……何の音?」


眠い目をこすりながらベッドから起き上がる。


すると、扉の向こうから研究員の声が聞こえてきた。


「192番から201番まで、全員ただちに廊下へ出ろ!」


ルミナは慌てて身支度を整え、扉を開けた。


廊下には、すでにほかの子供たちが集まり始めていた。


「おはよう、201番」


声をかけてきたのは、200番の少年だった。


「おはよう、200番」


ルミナは周囲に研究員がいることを確認し、番号で返事をした。


ルカは少しだけ笑みを浮かべると、声をひそめた。


「眠れたか?」


「うん。でも、鐘の音でびっくりしちゃった」


「俺もだよ。何が始まるんだろうな」


二人が話していると、研究員が近づいてきた。


「私語は慎め。全員、ついてこい」


子供たちは口を閉じ、研究員の後に続いた。


長い廊下を進んだ先には、昨日の部屋とは違う、大きな検査室があった。


中央には台座が置かれ、その上には透明な水晶が据えられている。


周囲には見慣れない装置が並び、白衣を着た研究員たちが忙しそうに作業をしていた。


「これは……?」


誰かが小さくつぶやいた。


「これから、お前たちの魔力量を測定する」


先頭に立つ研究員が説明した。


「魔力の量と性質を正確に把握するための検査だ。指示に従い、一人ずつ前へ出ろ」


子供たちは緊張した面持ちで水晶を見つめた。


「最初は192番」


呼ばれた子供が台座の前へ進む。


「水晶に手を置け」


言われたとおりに手を置くと、水晶が淡く光り始めた。


近くの装置に数字が表示される。


研究員はその数値を記録した。


「次。193番」


検査は順番に進んでいった。


子供たちはそれぞれ水晶に手を置き、そのたびに研究員が数値を書き留めていく。


やがて、200番の番が来た。


ルカは一度だけルミナを振り返った。


「大丈夫かな……」


小さくつぶやき、水晶に手を置く。


水晶は青白く輝いた。


研究員が数値を確認する。


「……なるほど。記録しておけ」


ルカは手を離し、列へ戻ってきた。


「どうだった?」


ルミナが小声で尋ねる。


「よく分からない。でも、痛くはなかったよ」


そう言って、ルカは肩をすくめた。


「次はお前だな」


ルミナはうなずいた。


「201番、前へ出ろ」


呼ばれたルミナは、ゆっくりと台座へ向かった。


目の前の水晶は、先ほどまでと同じように静かに輝いている。


「手を置け」


ルミナは右手を伸ばし、水晶に触れた。


その瞬間だった。


水晶の内部に、光が走った。


最初は淡い青色だった光が、次第に強さを増していく。


「……ん?」


研究員の一人が顔を上げた。


装置の表示が急激に変化していた。


数値が上昇していく。


「おい、計測値を確認しろ!」


別の研究員が装置へ駆け寄った。


水晶はさらに強く輝き、検査室全体を照らし始めた。


ルミナは驚いて手を離そうとした。


「そのままにしろ!」


研究員の鋭い声が飛ぶ。


ルミナの肩がびくりと震えた。


何が起きているのか分からない。


ただ、水晶から伝わってくる不思議な感覚に、ルミナは戸惑っていた。


やがて、光がゆっくりと弱まり、装置の数値が止まった。


研究員たちは表示を見つめ、互いに顔を見合わせた。


「……この数値は本当なのか?」


「装置の故障ではありません。再確認します」


「いや、待て。記録を残せ。責任者にも報告するんだ」


研究員たちの声が、検査室の中で交差した。


ルミナは不安そうに彼らを見つめた。


「……あの、もう終わりですか?」


研究員の一人が、ようやく彼女に目を向けた。


「手を離して、列に戻れ」


「……はい」


ルミナは水晶から手を離し、急いで列へ戻った。


ルカが心配そうに声をかける。


「201番、大丈夫か?」


「うん……。でも、何だったんだろう?」


「分からない。けど、研究員たち、ずいぶん驚いてたな」


ルミナは自分の手のひらを見つめた。


何も変わっていない。


痛みもなかったし、特別なことをしたつもりもない。


それなのに、なぜ研究員たちはあんな顔をしていたのだろう。


検査が終わると、子供たちは部屋へ戻された。


その一方で、検査室に残った研究員たちは、ルミナの測定結果を囲んでいた。


「201番の魔力量は、ほかの被験体とは明らかに違う」


一人が記録を指でなぞりながら言った。


「この数値なら、今後の研究にも大きな影響を与える可能性がある」


「責任者への報告は?」


「すぐに行う。追加検査も必要だろう」


研究員たちは書類をまとめ、検査室を後にした。


誰も、少女本人には何も説明しなかった。


その日の夕方。


ルミナは自室のベッドに腰を下ろしていた。


扉が開き、廊下に出るよう指示される。


そこには、ほかの子供たちと一緒にルカもいた。


研究員が離れた隙に、ルカが小さく声をかけてきた。


「なあ、ルミナ」


名前を呼ばれ、少女はほっとしたように顔を上げた。


「なに、ルカ?」


「今日の検査、怖かったか?」


ルミナは少し考えてから、正直に答えた。


「うん。研究員たちが急に大きな声を出したから……」


「そっか」


ルカは心配そうに彼女を見つめた。


「でも、何があっても一人じゃないからな」


ルミナは目を丸くした。


「……うん!」


二人は小さく笑い合った。


そのとき、遠くの廊下から研究員たちの声が聞こえてきた。


「201番の追加検査は明日だ」


「分かりました。責任者にも予定を伝えておきます」


ルミナの笑顔が、わずかに曇った。


明日も検査がある。


何をされるのかは分からない。


それでも、ルミナは胸元の金属板をそっと握りしめた。


自分には名前がある。


そして、その名前を呼んでくれる友達がいる。


それだけを心の支えにして、少女は翌日を迎えようとしていた。


  第三話「最初の検査」 完


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


今回の外伝では、『聖魔剣戦記』本編では語られなかった物語をお届けしました。


本編では描ききれない人物たちの過去や、それぞれが歩んできた道。その裏側にある出来事を知ることで、物語の世界をより深く楽しんでいただけたら嬉しいです。


これからも、本編では描かれない物語や人物たちの知られざる一面を、外伝を通してお届けしていきたいと思います。


少しでも楽しんでいただけたなら、ぜひ感想や応援をいただけると励みになります。


これからも『聖魔剣戦記』をよろしくお願いします!


三國ユウ

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