第一話「新たな被験体」
本作は『聖魔剣戦記』の外伝です。
本編では語られなかった人物たちの過去や、物語の裏側で起きていた出来事を描いていきます。
彼らが何を経験し、何を思い、どのような道を歩んできたのか。
本編とはまた違った視点から、『聖魔剣戦記』の世界を楽しんでいただければ幸いです。
それでは、外伝の物語をお楽しみください。
聖魔剣戦記 外伝 ― 被験体201番
馬車が止まった。
「全員、降りろ」
冷たい声に促され、子供たちは一人ずつ馬車から降りていった。
目の前にそびえ立っていたのは、周囲を高い石壁に囲まれた巨大な建物だった。
窓は少なく、建物の入口には武装した兵士が立っている。研究施設だと聞かされていたが、少女が想像していた場所とはずいぶん違っていた。
「……ここが、そうなの?」
少女は小さくつぶやいた。
隣にいた少年が建物を見上げる。
「すげえ大きいな。こんなところで何を研究してるんだろう?」
「さあ……。でも、ここなら僕たちの魔法ももっと上手くなるのかな」
別の子供がそう言うと、何人かが期待を込めた表情を浮かべた。
彼らは皆、魔力が高いことを理由に、この施設へ送られてきた子供たちだった。
特別な教育を受けられる。
魔法の才能を伸ばせる。
そう説明されていた子供もいた。
少女も、その言葉を信じていた。
少なくとも、ここにいる間は自分たちだけではない。
同じ境遇の子供たちがいる。
それだけで、少し心強かった。
「おしゃべりはそこまでだ。全員、列に並べ」
兵士の一人が声を張り上げた。
子供たちは慌てて整列する。
入口の扉が開かれ、白衣を着た研究員が姿を現した。
研究員は子供たちを順番に見渡すと、手元の書類に視線を落とした。
「今回搬送された者たちだな。人数に間違いはないか?」
「はい。指定された子供たちは全員そろっています」
兵士が答える。
研究員は書類をめくりながら、淡々と告げた。
「では、これより施設内での管理を開始する。全員、こちらについてこい」
子供たちは研究員の後を追い、建物の中へ足を踏み入れた。
扉が閉じる。
重い音が、背後から響いた。
少女は思わず振り返った。
外の光が、閉じた扉の向こうへ消えていく。
「……大丈夫だよね」
誰に向けた言葉なのか、自分でも分からなかった。
少女は小さく息を吸い、再び前を向いた。
このときの彼女は、まだ知らなかった。
この施設で待ち受けているものが、どれほど残酷なものなのかを。
第一話「新たな被験体」 完
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回の外伝では、『聖魔剣戦記』本編では語られなかった物語をお届けしました。
本編では描ききれない人物たちの過去や、それぞれが歩んできた道。その裏側にある出来事を知ることで、物語の世界をより深く楽しんでいただけたら嬉しいです。
これからも、本編では描かれない物語や人物たちの知られざる一面を、外伝を通してお届けしていきたいと思います。
少しでも楽しんでいただけたなら、ぜひ感想や応援をいただけると励みになります。
これからも『聖魔剣戦記』をよろしくお願いします!
三國ユウ




