第5章 子供たちの旅立ち
本作は『聖魔剣戦記』の外伝です。
本編では語られなかった人物たちの過去や、物語の裏側で起きていた出来事を描いていきます。
彼らが何を経験し、何を思い、どのような道を歩んできたのか。
本編とはまた違った視点から、『聖魔剣戦記』の世界を楽しんでいただければ幸いです。
それでは、外伝の物語をお楽しみください。
聖魔剣戦記 外伝
ある司祭の決断
翌朝。
教会の施設には、魔力適性を認められた子供たちが集められていた。
これから特別な施設へ向かい、魔法の才能を伸ばしていく。
そう説明されている子供たちは、期待に胸を膨らませている者もいれば、不安そうに周囲を見回している者もいた。
司祭は子供たちの前に立ち、ひとりひとりの顔を見つめた。
「みんな、これから新しい場所へ向かうことになる。そこでたくさん学び、自分の力を磨いてきなさい」
いつもどおりの言葉だった。
けれど、司祭の胸は重かった。
「先生、僕たちはどこへ行くの?」
ひとりの子供が尋ねた。
司祭は一瞬、言葉に詰まった。
「……君たちの才能を伸ばすための場所だよ。心配しなくていい」
そう答えながらも、視線をそらしてしまった。
やがて、迎えの者たちが到着した。
子供たちは順番に名前を呼ばれ、それぞれの案内役のもとへ向かっていく。
ある子供たちは、魔法を学ぶための特別施設へ。
そして、別の子供たちは、司祭の知らない場所へ。
迎えの者たちは名簿を確認しながら、淡々と子供たちを振り分けていた。
司祭は、その様子に小さな違和感を覚えた。
同じように魔力適性を認められた子供たちなのに、迎えに来た者も、向かう先も違っている。
「……行き先が違うのか?」
思わず漏れた言葉に、近くにいた係の者が振り返った。
「それぞれに適した教育を受けるためです。ご心配には及びません」
それ以上、説明はなかった。
司祭は何かを尋ねようとした。
しかし、昨夜の枢機卿の顔が脳裏をよぎり、口を閉ざした。
自分はもう、この件には関わらないと決めたのだ。
「……そうか」
司祭は、それだけ答えた。
子供たちは次々と施設を出ていく。
「先生、また会えるよね?」
去り際に、ひとりの子供が振り返った。
司祭は笑顔を作ろうとした。
「ああ……きっと、また会えるよ」
その言葉が、本当に叶うと信じていたわけではなかった。
それでも、そう答えることしかできなかった。
やがて最後の子供が連れ出され、施設には静けさが戻った。
司祭は、子供たちが去っていった扉を見つめていた。
彼らがどこへ向かったのか。
これから何をさせられるのか。
司祭は知らない。
そして、知ろうとすることもできなかった。
彼は家族を守るために沈黙を選んだ。
だが、その決断が正しかったのか。
その答えを、彼は生涯見つけられないのかもしれない。
司祭は目を伏せ、ゆっくりとその場を離れた。
子供たちの足音は、もう聞こえなかった。
第5章 子供たちの旅立ち 完
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回の外伝では、『聖魔剣戦記』本編では語られなかった物語をお届けしました。
本編では描ききれない人物たちの過去や、それぞれが歩んできた道。その裏側にある出来事を知ることで、物語の世界をより深く楽しんでいただけたら嬉しいです。
これからも、本編では描かれない物語や人物たちの知られざる一面を、外伝を通してお届けしていきたいと思います。
少しでも楽しんでいただけたなら、ぜひ感想や応援をいただけると励みになります。
これからも『聖魔剣戦記』をよろしくお願いします!
三國ユウ




