扉の奥の鬼
「え、え、え」
「……」
ま、まさかそんな事……
女っぽいとは思っていたけど。
そこに立っているのは紛れもなく麗しい美少女。
「バッツ、さん……」
「は、はい……」
「私の本当の名はロレイン。すみませんでした隠してて……」
「あ、いやまあ怒ってないけど、戸惑ってるだけで……うーん、何か訳があったんでしょ?」
「私男の人と喋るの苦手で、変装してたんです」
「それが理由? それだけ?」
「……」
「まあ、いいや。ところで俺は今夜外で寝るよ」
「え!」
「だってまずいだろ」
「そんな事! 私が宿を出ます!」
「そんな事させられないよ!」
「分かりました。せめてこれを、寝袋です」
「ありがと」
「すみませんすみません! 皆さんには明日言います」
そして頭の整理がつかぬまま夜が開けた。
さすがに皆びっくりした。
ローランドさんが聞いた。
「でも『男の子と喋るのが苦手だから』と言う理由だけなのは少し無理がないか?」
「……」
カミュさんは言った。
「まあいいよ。いつか話してくれれば」
「ありがとうございます! これから皆さんのお役に全力で立ちます!」
でその日の炊き出しをロレインに手伝ってもらったがこれが手際が良くて良かった。
その日の終わりに
「バッツさんどこ行くんですか」
「これからスベルさんに教えを乞うんだ」
そして俺はスベルさんの扉を開いた。
ところが気のせいか扉が重い。
何だこの感覚。
扉を開けるとそれまでと異なる雰囲気のスベルさんが立ち俺を横目で不審者の様にじろりと見た。
「え? 何この雰囲気?」
「何だ?」
「あ、あの、先日お伝えした通り料理を教えて欲しく!」
「そうか、だが厳しいぞ」
「え?」
「儂は弟子にだけは態度が全然違うんだ」
どういう事?
「覚悟はいいか? 儂を鬼と思ってくれて構わない」
「え?」
「今ためらいがあったな?」
「だ、大丈夫です!」
「だを二回言ったな? それがためらいだ」
「や、やります!」
「今度はやが二回になってるぞ」
「やります!」
「良し。ではここを綺麗にしろ」
「はい」
約十分、掃除を激しい緊張の中終わらせた。
ところが俺は初めてスベルさんの雷を受けた。
「真面目にやれ!」
「ひい!」
そしてまた十分やり直した。
「やり直し! 終わったら食器と道具をピカピカにしろ」
どうなってるんだこの人、何かとり付いてる?
「ひょっとして儂がもっと優しいと思ったか?」
「い、いえ!」
「いが二回になってる。図星だな」




