024_冷め(冷めるのも一瞬)学生、蛙化現象、1022字
「じゃあな、亜香里」
そう笑っていう健一の顔は、1年の時から私がずっと追いかけてきたものだ。
周りから「付き合ってないのが不思議」と言われるほど仲が良かったし、毎日一緒に帰って、くだらないLINEを交わす。でも、そこから先にはどうしても進めない。
「ねえ健一、土曜日、駅前にできたカフェ行かない? ペア限定のパンケーキがあるんだって」
内心心臓をバクバクさせながら誘ってみるけど、
「あー、俺そういう店苦手だしな。颯太あたり誘えば?」
健一は携帯に目を落としたまま、気のない返事をする。
いつもそう。
ちょっとでも進展させようと思っても、健一は急に引いてしまう。
はぐらかされるたび、私の胸はじくじくと痛んだ。
私からの思いは、健一にとって迷惑なのかな。
その日の夜、健一の親友である颯太から電話がかかってきた。
「亜香里、ちょっと話せる?」
いつになく真剣な声で言う。
近くの公園で会うと、颯太はいつものお調子者っていう感じはなくて、まっすぐに私を見て言った。
「俺、高1の時からずっと亜香里が好きなんだ。健一にも、ずっと前から相談してて…」
颯太の告白に頭が真っ白になって続きはよく覚えてない。
颯太の言葉が、過去の健一のそっけない態度と一瞬で結びついた。
はぐらかし、私を遠ざけるような態度は、全部わたしが「親友の好きな人だから」という理由だからか。
―― なんだ、そうか。へー ほー ふーーーん。
私より、颯太との友情を選んだのか。
それであの態度。さいあく。なにそれ。
私の気持ちはどうでもいいってこと?
あ、その程度ってことか。友達に譲れる程度。
3年間で積み上げられた恋心が、一瞬で崩れ去っていく。
あんなに好きだったのに、もう心は一ミリも動かない。
幻滅ってこういうこと。
翌日、健一はいつも通り、校門の前で私を待っていた。
「よお、亜香里。昨日言ってたパンケーキの店、やっぱ行くわ……」
どこか決意したような、ぎこちない笑顔。
きっと颯太から「告白した」と聞いたのだろう。
私に向けるその視線が、最高に不快だった。
「ううん、もういい。他の人と行くことなったから」
私は立ち止まらずに、健一の横を通り過ぎた。
「え? おい、亜香里?」
焦った健一の声が背中に響く。
でも振り返る気には、もう微塵もならなかった。




