016_現代_恋愛中(地球最後の日)
空が不穏な赤に染まっている。
鳴り響くサイレン、遠くで崩れるビルの轟音。
世界が終わりを迎えるその瞬間を前に、人々は逃げ惑うのをやめ、ただ静かに最後の時を待っていた。
私たちの部屋は、まるで世界の崩壊から切り離されたように静まり返っていた。
窓の外を見つめる背中は、いつになく小さく見える。
怯えているのだろうか。それとも、すべてを諦めてしまったのだろうか。
私はそっと歩み寄り、その広い背中に後ろから抱きついた。
驚いたように一瞬だけ震えた身体に、ぎゅっと力を込める。
「……怖くない?」
あなたの掠れた声が、静かな部屋に響く。
背中に顔を埋めたまま、私は小さく笑った。恐怖なんて、とっくに通り過ぎている。あなたとここにいる、その事実だけで、私の心は満たされていた。
「全然。むしろ、ちょっとすっきりしてるくらい」
顔を離し、振り返ったあなたの真っ直ぐな目を見つめる。
そして、ずっと胸の奥で温めていた、私の本心を言葉にした。
「地球最後の日、来るなら来い!って思ってる。
だって、いつどこでどうなったって、私はあなたの名前を呼びながら倒れる覚悟をしてるから」
あなたは目を見開いた。絶望に染まりかけていたその瞳に、小さな光が灯る。
やがて、困ったような、いつもの優しい笑みがあなたの唇に浮かんだ。
「敵わないな」
世界がどれほど残酷に壊れようとも、私たちの間に流れる空気は、狂おしいほどに温かかった。
重なる唇の向こうで、地鳴りが大きく響く。
私たちは互いを強く抱きしめ合い、ただ、その名前を呼び合った。




