第一幕 二十三
城門を出てしばらくは、華にも見覚えのある道だった。
低い畑が続く。荷を積んだ車が、来た道の方へ戻っていく。道の脇の草は、前にレオンと立った場所より遠くまで伸びていた。
四人は、車が通り過ぎるときだけ端へ寄った。
レオンは、ほかの二人と短く話す。前を歩く男が道の先を指せば、レオンもそちらを見る。荷を肩で直すときには、後ろの男が紐の緩みを言い、レオンは立ち止まって結び直した。
華は、その少し後ろを歩いた。
昼を過ぎると、畑の間は広くなった。城壁は、振り返ったときにしか見えない。
それでも街道には、歩く人と、荷車があった。
*
休むために道の脇へ寄ったとき、レオンは水袋を取り出した。
華が杯を出すと、レオンは先に水を注いだ。もう一人の冒険者が、その様子を見ていた。
華が少し離れた草のないところへ座ると、男はレオンへ声を落とした。
「あの娘、何なんだ」
レオンは水袋の口を締めた。
「分からない」
「分からない?」
「街の外で見つけた」
「漂着者か」
「そうかもしれない」
男は華の方を見た。華は杯を両手で持ったまま、こちらを見ている。
「それで宿に置いてるのか。今度はベリカまで連れていく」
「集落までだ」
「それで、あとはどうする」
レオンはすぐには答えなかった。
「まだ、その先までは決めてない」
男は水袋を受け取り、少しだけ眉を動かした。
「お前らしくないな」
レオンは返さず、立ち上がった。
*
華には、二人の話は分からなかった。
知らない音が続く。その中で、男が自分を見る。レオンが何か答え、こちらへ目を向ける。
自分のことらしい。
華は杯を置き、立ち上がった。
レオンは荷袋を肩へ掛け、街道の先を指した。
「イサ」
華は頷いた。
歩き出す。
*
日が低くなっても、レオンは来た道を戻らなかった。
見えるのは街道の先と、畑の向こうの木立だった。白い鳥の壁も、石の門もない。
やがて、道の脇に建物がいくつか見えた。低い屋根の家と、荷車が止まる土の広場。軒の下には、旅の荷らしい包みが寄せられている。
前を歩いていた男が、そこへ向かった。
レオンも続く。
中から出てきた人へ、ほかの二人が何か言う。硬貨が渡され、戸が開く。
華は入口の前で足を止めた。
知らない建物だった。
レオンが先に入り、荷袋を床へ下ろす。振り返って、華の布袋へ手を向けた。
華は中へ入った。
外の光が、扉の向こうで低くなっていく。
レオンは、そこにいた。




