第一幕 十三
乾物屋の前を通りかかると、店主がレオンへ手を上げた。
昨日、荷車のそばにいた男だ。
レオンは足を止めた。華も少し遅れて止まる。
店主はレオンへ何か言ってから、華を見た。
視線が自分へ移るだけで、肩が少し固くなる。
レオンが答える。店主がまた短く言う。
自分について話しているらしい。
けれど、何を聞かれ、何を答えたのかは分からない。
華はレオンの横顔を見た。
声の調子は、荷運びのときに店主と話していたものと同じだった。急いでいる様子も、困っている様子もない。
店主は棚の端から、小さな包みを一つ取った。
華へ差し出す。
中身は見えない。華は受け取っていいのか分からず、レオンを見る。
レオンが包みと華を順に見て、頷いた。
華は両手で受け取った。
店主は何か言って笑い、また店の奥へ戻っていく。
華は包みを持ったまま、レオンの方を見た。
何だったのかは分からない。
ただ、店主はレオンだけへ物を渡したのではなかった。
*
「その子、どこで拾った」
店主の問いに、レオンは答えた。
「森だ」
「森」
店主は眉を上げた。
「で、今は一緒にいるのか」
レオンはすぐに返せなかった。
森で見つけた。街へ連れてきた。宿を取って、食べるものと、使えるものを渡した。
それだけなら、保護していると言えばいい。
だが華は、宿の中で水を頼んだ。街の道を覚え、届け物を渡し、見たものを板に残している。
自分が決めた通りに動かす相手ではない。
「連れだ」
口に出すと、少し曖昧だった。
店主はそれ以上尋ねなかった。
「なら、これも持っていけ」
さっき華へ渡した包みを指す。
「甘い実だ。食える」
レオンは頷いた。
華にはまだ、言葉で説明できない。
けれど、何かを渡して待てば、自分で確かめようとする。
それで今は足りていた。
*
店を離れてから、華は包みを開けた。
乾いた小さな実がいくつか入っている。
匂いを確かめてから、一つだけ口に入れた。
甘かった。
華は少し目を見開き、包みをレオンへ差し出した。
レオンは一つ取る。
店主が華を見たとき、何を言ったのかは分からない。
それでも、レオンはその場で華を遠ざけなかった。
店主が華へ包みを差し出したときも、レオンは代わりに受け取らなかった。
華が決めるまで待っていた。
華は残りの実を包み直し、布袋へしまった。
通りを歩き出すレオンの横へ、少し遅れて並んだ。




