第一幕 十二
朝、レオンは宿の卓に二つの荷を置いた。
一つは肩から提げる大きさの袋だった。もう一つは、紐で縛られた細い包みである。
レオンは大きい方を自分の肩へ掛けた。次に、細い包みを持ち上げ、華を見る。
華は包みを受け取った。
重くはない。けれど、昨日まで自分で選んだ服や板とは違う。誰かへ渡すためのものらしい。
レオンは宿の入口を指し、その先の通り、さらに城門の方を指した。
それから華の包みを指し、自分の荷を叩く。
一緒に行く。
たぶん、そういうことだ。
華は黒い板を布袋へしまい、部屋の鍵を確かめた。
*
門を出ると、石の道はすぐに土の道へ変わった。
荷車の跡が、昨日まで歩いた街の通りより深く続いている。両側には低い草と、ところどころに畑らしい区切りが見えた。
森とは違う。
道の先も、戻る門も見える。それでも、街の壁の外へ出るだけで、足元の確かさが少し減った。
レオンは華の半歩前を歩いた。
包みを肩へ寄せようとすると、紐が腕に当たる。華が持ち直す前に、レオンが振り返った。
自分の荷の紐を指し、胸の前を斜めに通してみせる。
華は包みを下ろした。
見た通りに紐を掛け直す。今度は、腕に当たらない。
レオンは頷き、また歩き出した。
*
街道の脇に、小さな屋根があった。
壁は低く、荷車が二台ほど止められる広さしかない。屋根の下では、二人の男が木箱を開けていた。
レオンは近づくと、包みを持った華を見た。
華は少し迷ってから、男たちの方へ歩いた。
どちらへ渡せばいいのかは分からない。けれど、二人のうち片方が、レオンの大きい荷を見て手を上げている。
華は細い包みを持ち上げ、その男へ差し出した。
男は包みを受け取った。
何か言って、華を見る。
華は意味が分からず、レオンを見る。
男は短く笑い、頷いた。
伝わったかどうかは、やはり分からない。
それでも、受け取る相手を見て、自分で出せた。
*
帰り道、レオンは道の脇の石のそばで止まった。
荷を下ろし、水袋を取り出す。
華も杯を出そうとして、石の上へ置きかけた。
石は日を受けて熱くなっている。
レオンは何も言わず、その少し横の草のない土を指した。
華は手を止めた。
土を足先で確かめる。乾いていて、平らだった。
そこへ杯を置く。
レオンが水袋を差し出す。華は二つの杯を出し、先に自分の分へ少しだけ注いだ。次に、レオンの杯へ注ぐ。
森で初めて湯を渡された夜のことを、短く思い出した。
あのときは、杯を受け取ることしかできなかった。
今は、水袋の口を押さえながら、こぼさずに戻せる。
レオンは自分の杯を取ると、道の先を見た。
華も、門の方を見る。
帰る場所は、壁の内側にある。
けれど、門の外へ出ても、すぐに何も分からなくなるわけではなかった。
持つもの。置く場所。水袋を扱う手つき。
知っていることが、少しだけある。
レオンが荷を肩へ戻す。
華は二つの杯を重ね、水袋をレオンへ差し出した。
今度は、レオンが見せる前にできた。
レオンはそれを見て、先へ歩き出した。
華はその横へ並んだ。




