↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/30

第一幕 十二

 朝、レオンは宿の卓に二つの荷を置いた。


 一つは肩から提げる大きさの袋だった。もう一つは、紐で縛られた細い包みである。


 レオンは大きい方を自分の肩へ掛けた。次に、細い包みを持ち上げ、華を見る。


 華は包みを受け取った。


 重くはない。けれど、昨日まで自分で選んだ服や板とは違う。誰かへ渡すためのものらしい。


 レオンは宿の入口を指し、その先の通り、さらに城門の方を指した。


 それから華の包みを指し、自分の荷を叩く。


 一緒に行く。


 たぶん、そういうことだ。


 華は黒い板を布袋へしまい、部屋の鍵を確かめた。


     *


 門を出ると、石の道はすぐに土の道へ変わった。


 荷車の跡が、昨日まで歩いた街の通りより深く続いている。両側には低い草と、ところどころに畑らしい区切りが見えた。


 森とは違う。


 道の先も、戻る門も見える。それでも、街の壁の外へ出るだけで、足元の確かさが少し減った。


 レオンは華の半歩前を歩いた。


 包みを肩へ寄せようとすると、紐が腕に当たる。華が持ち直す前に、レオンが振り返った。


 自分の荷の紐を指し、胸の前を斜めに通してみせる。


 華は包みを下ろした。


 見た通りに紐を掛け直す。今度は、腕に当たらない。


 レオンは頷き、また歩き出した。


     *


 街道の脇に、小さな屋根があった。


 壁は低く、荷車が二台ほど止められる広さしかない。屋根の下では、二人の男が木箱を開けていた。


 レオンは近づくと、包みを持った華を見た。


 華は少し迷ってから、男たちの方へ歩いた。


 どちらへ渡せばいいのかは分からない。けれど、二人のうち片方が、レオンの大きい荷を見て手を上げている。


 華は細い包みを持ち上げ、その男へ差し出した。


 男は包みを受け取った。


 何か言って、華を見る。


 華は意味が分からず、レオンを見る。


 男は短く笑い、頷いた。


 伝わったかどうかは、やはり分からない。


 それでも、受け取る相手を見て、自分で出せた。


     *


 帰り道、レオンは道の脇の石のそばで止まった。


 荷を下ろし、水袋を取り出す。


 華も杯を出そうとして、石の上へ置きかけた。


 石は日を受けて熱くなっている。


 レオンは何も言わず、その少し横の草のない土を指した。


 華は手を止めた。


 土を足先で確かめる。乾いていて、平らだった。


 そこへ杯を置く。


 レオンが水袋を差し出す。華は二つの杯を出し、先に自分の分へ少しだけ注いだ。次に、レオンの杯へ注ぐ。


 森で初めて湯を渡された夜のことを、短く思い出した。


 あのときは、杯を受け取ることしかできなかった。


 今は、水袋の口を押さえながら、こぼさずに戻せる。


 レオンは自分の杯を取ると、道の先を見た。


 華も、門の方を見る。


 帰る場所は、壁の内側にある。


 けれど、門の外へ出ても、すぐに何も分からなくなるわけではなかった。


 持つもの。置く場所。水袋を扱う手つき。


 知っていることが、少しだけある。


 レオンが荷を肩へ戻す。


 華は二つの杯を重ね、水袋をレオンへ差し出した。


 今度は、レオンが見せる前にできた。


 レオンはそれを見て、先へ歩き出した。


 華はその横へ並んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。