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月の光に導かれ  作者: カムイコタン
第1章 月の光教団
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6/15

第5話 追手

毎週金曜18:00頃更新予定なのですが

12月の予約まで全て埋まったので掲載致します。


 絶世の美女と29歳半裸おじさんが2~3話ぶりに小河の座椅子用の大木に別れを告げて、山道を歩み始めました。


 おっ、ということは、説明パート終わりですな。


「リオン、ところでどこに向かってるの?」


「ヒカリさま、ここはもうアヴァリスィア王国の領土に入っています。陽光教からの追手を撒くためにも王都グラントを目指します。その後、冒険者ギルドに登録し、生活の基盤を整えるつもりです。そして数多の冒険者の頂点を目指し、ヒカリさまの素晴らしさを世界に広める布教活動へと移行します。」


 おお、すげぇトップギア入ってる。


 どこに向かってるのか聞きたかっただけで、世にも奇妙な未来予想図Ⅱを聞くつもりはなかったんですけど。おい、その先は地獄だぞ。


「そういえばさっき、追手くらい楽勝って言ってたけど本当に大丈夫そう?」


「ヒカリさまのおかげで()()()()()、強くなりました。しかし、ヒカリさまはこの世のすべての女性から狙われるような恰好をしている上、紙装甲です。非常に危険です。」


「紙装甲・・・」


 君、俺の使徒だったよね?大丈夫?その辛辣発言。


「もしもワタシの虚をつかれ、ヒカリさまにかすり傷でも付こうものなら・・・自害するしかありません。」


 ヒエッ・・・自害・・・。

 かすり傷何ていくらでも付くでしょうに。命さえありゃ何となるんですわ。


「いやいや、リオン大丈夫だから、かすり傷くらいなr」


「絶対にダメです。」


「山道歩いてるんだから、こけて怪我することもあるs」


「ワタシの力不足です。自害に該当します。」


「ほ・・ほら敵さんも物凄い数の追手を出してるかもしれないから、かすり傷くらいはあるかもs」


「自害に該当します。」


 俺の凡ミスすら美女の自害に匹敵するなんて、気が抜けない異世界生活開始やん。

「あれ~転んじゃったぁ、膝擦りむいちゃったよ、てヘペロッ」⇒リオン自害


 いや、やばい。俺へのプレッシャーが尋常じゃないことになってる。


 あるぇ?俺が望んだ異世界生活って、こんな感じでしたっけ?


 ま・・・まぁそうは言うても現在こちらは29歳半裸オジ。変態としてしか扱われない上、前世では男としての価値なんてなかったんだから、ちょっとケガするくらい無問題。敵さんもわざわざこんな俺を攻撃のターゲットなんかには選ばんだろ。リオンてば大げさなんだからー♪


「それにほら、29歳半裸オジが居たって、だーれも攻撃なんてしてこないって大丈夫よ。」


 自害発言による空気の重さに耐えかね、場を和ませるために手をぷらぷらさせながら左右に軽く踊るというキモい動きをしてみた。


「ヒカリさま・・・なんて煽情的(せんじょうてき)な動きをするんですか。いいですか、ヒカリさま、この世の女はすべて獣です。ええ、ワタシもそうです。今すぐそこの茂みにあなたを連れ込んでめちゃくちゃにしたいのを必死で我慢しているんです。そんなあなたが半裸でふらふら誘おうものなら攻撃どころかめちゃくちゃにされますよ。」

 

 顔を赤らめながらリオンがキレた。ええ・・・何か冷静な感じでとんでもないこと言われたぞ・・・。

誘ってる踊りとかじゃなかったんだけどなぁ。


 まぁリオンから”めちゃくちゃされる”のは望むところではあるが、こんな所では少し嫌だなぁ・・・野外だし。


「めちゃくちゃにして頂けますか?」


「それは、もう。」


 ん~~、現代社会日本を生き抜いてきた童貞アラサー男子としては、女性から求められるという実感がまだ湧いてないんですよ。


 真横に絶世の美女が居て、俺の白シャツを濡れ透け修道服の上に羽織って、慕われているなんて現状を数日前には想像すら出来てないし。リアリティがないというか何というか。


 ちなみにじゃあ、白シャツ返してって言ったら聖遺物を守護するのは使徒の役目ですと断られた。


 半裸の俺はどうすれば良いのでしょか?聖遺物とは?


 ん?ちょっと待てよ・・・そんなエッな気持ちを俺に持って頂けるなら、ちょ・・ちょっとエッなイタズラしても怒られないよね。


 ・・・なろう系主人公が序盤では出来ない事やってみてもいいかな?いいよね?ポリスメンとかいないよね?


「どうしました、ヒカリさま?疲れましたか?」


 二人並んで歩いていたのに、俺が考えごとをしてたせいで立ち止まったので、リオンから少し離れてしまう。うつむき加減の俺を心配したのかリオンが後ろを振り返りながら声をかけてきた。


 よーし、やるぞ!やるぞ!俺は出来る子だ!


 よくある異世界転移もの主人公の鈍感ニブチン純情野郎とは違うってとこ見せてやる。


 ノクターンノベルズ移動も視野に入れた行動を俺は取ってやる!


 見とけよ、見とけよー。行くぞ・・・行くぞ・・・。


 リオンの後ろから軽く駆け出し、29歳半裸童貞オジが力の限り甘えるような声を出しながら、後ろから胸を触るような形で抱き着く。


 大丈夫!これまでの会話の感じだとちょっと怒られるくらいで済むはず!

「ヒカリさま、こんな所でそんなことをしてはいけませんよ、我々は追われているのですから危機感が足りてませんよ。」とか注意されるだけで済むはずだっ!!


 いや、これはリオンが”ヒカリさま全てをウェルカムです”みたいなこと言ってるけど、嘘をついてないか判定してるだけだから!

 慕った風に言ってくれてるけど、本当に拒絶しないかのテストだから!


「りりりりりリオーン♡」ムギュ、ムギュッ!


 おっほっ!柔らかっ、すっごっっ!これ、ナニコレすっご!!!!す・・・・


 その瞬間、リオンが頬を染めながら驚いてる顔を視認した刹那、この世のすべてが反転した。ものすごい力で投げ飛ばされて”死んだ”と思ったが山道から外れた茂みにコロンと転がされた。


 こりゃやっちまった・・・セクハラ過ぎてさすがにリオンもキレたんだ!


 と思った俺はとっさに起き上がり、土下座に移行しようとするも物凄い力で押さえつけられる。


「ごごごごごごごめん、リオン!!怒った??!!」


 地響きのような息遣いとともに俺の身体の上に覆い被さってきた“獣”を俺は見た。


「悪い子・・・本当に悪い子ですね、ヒカリさま・・・あれほど言ったのに、あれほど警告したのに、敬虔(けいけん)な使徒を(たぶら)かすコアクマなんですから・・・」


 リオンの白い指先が俺の胸のあたりを、弧を描きながらソフトタッチしてくる。これはアカン、マジでアカン、ノクターンノベルズへの移行秒読み段階だ。


 さようなら小説家になろう、こんにちはノクターンノベルズ。


「じょ、冗談、冗談っ!ごめん!ごm」


「ヒカリさまとはいえ、女性をあんな風に誘うだけ誘って、積極的に求めて(ちょっと待てそんなことはしてない)は承諾しかねます。天井のシミの数を数えている間に終わりますから・・・ちょっとだけですから・・・先っぽだけですから・・・。」


「逆!!それ逆だから!」


 眼がマジだ。蒼く澄んだ瞳がエ○同人の調()()()()()()みたいに瞳の奥がハートになってやがる。

 

 よーし分かった、俺も男だ。ここまで来たらバッチ来い!バッチ来―いだぞ!


 ノクターンノベルズがなんぼのもんじゃ!


 全年齢適応なんざ幻ってことを教えてやる!


 亡くなったお父さん、お母さんヒカリは異世界初日で大人になれそうです・・。




 覚悟を決めた俺の周りで草木をがさがさとかき分ける音と複数人の足音が近づいてくる。




「「「いたぞ!!大罪人異端者リオンだ!!!エウレカ枢機卿を呼んで来い!こっちだ!!」」」




 ほらね、知ってた。



 ※     ※     ※     ※     ※


 白い修道服を着た10人程度の集団が、俺に覆い被さっているリオンを半円で囲むよう整列する。


 衆人の中でこの体勢(対面座位)はかなり恥ずかしいんで、どいてもらっていいすかね、リオンさん。


 エウレカ枢機卿と呼ばれた眼帯をした白髪のショートカットグラマラス野性的激美女が赤の法衣をまとってゆっくりと現れる。


 この世界は美女しかおらんのか。おっ、こめかみの辺りから角が生えてる!魔族っ娘じゃないか?ありがとうございます、物体Xさまっ!!・・・。しかも、色んな所が大きくってオラ、どうにかなりそうずら・・・

 神子はこんな美女抱きまくってんのかEDの癖に・・・舐めてやがんなぁ。屋上へ行こうぜ・・・久しぶりに・・・キレちまったよ・・・。


 エウレカ枢機卿は見下すような鋭い目つきでリオンを一瞥し


「聖騎士団の雌獅子と呼ばれた貴様も堕ちたものだなぁ。陽光教聖騎士団()団長リオン。ようやく見つけたぞ、大罪人。聖騎士団()団長の癖に、(やぶ)の中で男を押し倒すなど恥を知らんのか?神子様はリオンの清麗(せいれい)さに目がくらんでおったようだが、貴様も一皮むけば淫乱な獣よ。」


 言われてますよ、リオンさん。淫乱な獣ですって。シリアスな場面なんでちょーっと体勢変えた方がいいと思いますよ。あ、自分はこのままでも構いません(にちゃあ)。一向に構わん!


「あら、誰かと思えばエウレカではないですか。陽光教という大きなゴミ山で、日々のゴマすり作業お疲れ様です。神子という名のからっぽの案山子(かかし)に入れ込んでブヒブヒ泣いている雌豚さんが何のご用事ですか?ようやく“洗礼”をしてもらえたのですか?こちらは見て分かる通り、お前らに構っているほど暇じゃないんです。雌豚共に私が()()()()教えて差し上げますけど、非常に大切な儀式の最中なんですよ。」


 おっとリオンさん、普段はこんな毒舌なんですね。俺、こういうリオンさんもイイと思います。でも自分に騎乗している体勢で言っても効果が薄そうですぞ!


「貴様・・・へらず口だけは健在だな・・・。神子様からの寵愛を拒み、教義を踏みにじり何が残ったんだ?女の喜びも知らず、行きずりの男を犯そうとしているこの愚図が・・・ここで我らに聖伐され首だけ法国に里帰りさせてくれるわ。」


 リオンは俺との()()を邪魔されたことに、相当頭に来ているのか怒りが陽炎のように立ち上っているのが見える。


 マジで怖いな・・・よし、リオンは怒らせないようにしよう!


「続きは後程ゆっくりと・・」と耳元ASMRした後、リオンが名残惜しそうに立ち上がり、エウレカ枢機卿と向かい合う。


 身軽になった俺はそそくさと邪魔にならないようにリオンの後ろに回り込む。


 情けないけどAtk1では何も出来んのさ。応援に力を入れていく所存であります。


「「「なっ!!・・黒髪・・・黒眼・・・っっ!!!」」」


 立ち上がった俺を見てエウレカ枢機卿と刺客の皆さんがざわつく。そんなに黒髪・黒眼が珍しいっすか?日本に行ったらわんさかいますぜ。


「なんと・・美しい・・・リオン貴様・・・このような御子を手籠めにしようとは、恥を知らんのか!!貴様はっ!!」


「どこで、攫ってきたんだ!恥を知れ!大罪人!!」


()()()()()男子誘拐は死罪だぞ!!異端者リオン!!」


「貴様のような色気のない雌獅子にそんな美男はもったいないわ!!」


 様々なリオンへの罵詈雑言が飛び交う。


 自分がリオンを弄る分は良いんだが(脳内で)、他人が悪し様にリオンを罵るのは非常に気分が悪いわ。なんか腹立つわ。


「いやいや誘拐じゃねーよ、自らの意志でリオンに自分がくっついてるだけだし。」


 つい、何となく言い返してしまう。鳥の赤ん坊は刷り込みって言って最初に見たものを親だと思うと聞いたが、異世界転移者は、最初に出会った女性を無条件で信頼しちゃうのかも。チョロインやな、俺って・・。


「__ヒカリさまっ!!」


 リオンが感極まったかのように振り返りながら叫んでる。


 とりあえず、リオンにサムズアップしとこう。こういう一連のサムズアップまでの流れ、異世界転移ものっぽくて好きよ、俺。


 そんな俺たちを見ていたエウレカ枢機卿と刺客の方たちは舌打ちをしながら激高し、今にも飛び掛かって来そうになってる。


「見せつけてくれるじゃないか、リオン・・・どうやってこんな絶世の美男を手懐けたんだ?貴様の屍を晒せば、その御子は目を覚してくるのかね・・・。全員でかかれ!腐っても聖騎士団団長だ!リオンを始末したあとは、黒髪の御子を神の名のもとに保護するのだ!!」


 絶世の美男・・・??何言ってんだ?


 エウレカ枢機卿の掛け声とともに、リオンに向かって10人が殺到しようとしている。リオンと刺客の間合いは僅か5m程度。10人の刺客達は片手にレイピアのような細い剣を持ち、空いた手には小さめの盾を持ち今か今かとリオンの隙を探っている。


 結構強そうに見えるんだけど大丈夫?リオン、これ多勢に無勢じゃない?


「リオン、喜べ。お前をあと一歩まで追い詰めた5人の手練れに、さらに優秀な刺客を5人追加してやったぞ、貴様の悪運もここまでだ。()()()()()()()()()()()()()


 リオンを絶望させようとしているのか、エウレカ枢機卿は薄く笑みを浮かべながらそう言ったが、リオンには焦りも動揺もないようだ。


 リオンは腰の鞘から両手剣のような長剣を片手で抜き、切っ先を修道女たちに向け言い放った。



___十字軍クルセイド



 リオンの凛とした声が響き、リオンと修道女たちの間に魔法陣のようなものが複数浮かび上がる。その魔法陣が発光したと思った瞬間、剣や盾を携えた10の光の人型が現れ、意志を持っているかのようにリオンの隙を狙っていた修道女達を襲い始める。


 ナニコレ、主人公スキルじゃん・・。俺、女性の後ろに隠れてるだけなんですけど。


「な・・・き・・・貴様、な・・・何だこれは!こんなスキルを隠し持っていたのか!こんなモノ見たことも聞いたこともないぞ!」


 エウレカ枢機卿めっちゃ狼狽えてる。そりゃそうか、光の人型が一方的に手練れのはずの刺客達を切り伏せていってる。


 おっと血しぶき苦手なんでクラッとしたが、リオンが頑張っているのに俺が倒れるわけにはいかない。


 相手側は10対1の数的優位を覆され残すはエウレカ枢機卿のみとなった。


「エウレカ、あなたたち陽光教には感謝しかないわ。異端審問され仲間や友に裏切られ、命まで奪われようとした結果、我が主ヒカリさまに出会うことが出来たのだから。これまでの絶望が全て希望に繋がっているのを感じています。」


 歌劇(オペラ)の主人公のように声高に、そして恍惚を帯びた笑みでそう語るリオン。怖ッ!


「だから、お礼ですエウレカ、痛みも感じず消してあげる。」


「おのれ!おのれ!!おのれ!!!分かったぞ!ヒカリというその御子なんだな、その力の理由は!何らかの方法で力を得たんだな!貴様を殺し、ヒカリとかいうその御子を奪っt」



断罪ジャッジメント



 スパンッとエウレカ枢機卿の首が飛ぶ。不可視の一撃である。


「ワタシの全てを奪えたとしても、ヒカリさまだけは奪わせない。」


 リオンが()()()()()()()エウレカ枢機卿に対し、冷たくそう言い放った。


 生ぬる日本で暮らしてたワイにはこの戦い、ちょっと刺激が強いンゴね・・・。


 首を失ったエウレカ枢機卿の身体からは噴水のように何かが出ている。


 今までそんなものを間近で見たこともない俺は、薄れゆく意識の中でリオンが倒れる俺を抱きかかえたところで記憶が途絶えた。


 ごめん、リオン。物体XにGOA表現はもっと軽めでってお願いしとけば良かったよ・・。



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