第11話 リオン=アステリアス⑤
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突然のヒカリさまの言葉の衝撃により鼻血を男性にかけてしまうという不始末を行ってしまいましたが、ヒカリさまは一切気にせずワタシの身体の方を心配してくれていました。
この方は、本当に男性なのかと思いました。これまでワタシが話を聞いたり、実際に関わってきた男性達からは遠く離れすぎていました。
チラチラこちらを盗み見しているのは似ていますが、ヒカリさまの視線は本当に心地よく、気持ちが良いのです。
ワタシの状態が少し落ち着いてきたことを見計らって、水辺から離れた大木に二人で腰を掛け会話を始めました。
ヒカリさまのような貴き方がなぜこんな森の中で護衛もつけずいたのか伺ったところ、どうやら記憶喪失で気づいたらここに居たとのことでした。
後程ワタシに打ち明けてくれたのですが、別の世界から転移した後、この森に放り出されたようでした。大変でしたね、ヒカリさま・・。
ヒカリさまから、ワタシがなぜ重傷を負って川に居たのか聞かれました。陽光教本部で起きた顛末を話そうかと思いましたが、彼をワタシの事情に巻き込むのは心苦しく話すのは憚れました。
ではここでヒカリさまと別れて行動するかというと、それは絶対に嫌でした。
しかしワタシと行動を共にすることで、陽光教に必ずヒカリさまが見つかってしまう。そうなった場合、彼は世界でも希少なそしてこんなにも優しく暖かく美しい男性ですから、陽光教で神子として奉られ教皇や枢機卿たちと睦み合うことに・・・。
それを想像したとき、何故だかそれはとても辛く胸が張り裂けそうになりました。
ですのでヒカリさまから尋ねられた時、何も答えられませんでした。
沈黙を貫いていると、ヒカリさまは慈悲深い笑みを向け優しくこう仰いました。
「リオンさん、内情に土足で踏み入るような真似をしてしまい申し訳ない。言いたくないのなら無理をしなくてもy」
ワタシの気持ちを慮って、事情など言わなくてよいと仰るのです。
嫌だ、この方をワタシを貶めた陽光教だけには渡したくない。いや、誰にも渡したくない・・?
今なら分かるのですが、時間にすると短いながらもヒカリさまの笑顔に触れ、優しさに触れ、あまつさえ自分を死地から救って頂いたのです。
ヒカリさまを心の底からお慕い申し上げるのに時間はかかりませんでした。
だからこそ、巷で言う”独占欲”というものが出てしまったのでしょうね。あるいは”嫉妬心”と言うべきでしょうか。
この時、既に心の底からお慕い申し上げていたワタシですので、ヒカリさまをワタシの命が続く限り全てから守ることを心に誓いました。
この辺りからでしょうからか、彼も親しみを込めてワタシを「リオン」と呼んでいただけるようになりました。
多分ヒカリさまと心が通じ合い始めたのだと思います。ヒカリさまも、きっとワタシを独占したいと思っているのだと確かに感じました。
リオンと呼ばれるたび、ワタシの中で温かいものが湧いてくるのを感じます。
その後、ヒカリさまからこの世界のことを教えてほしいといわれたので、この歪で狂った世界のことをお伝えするとともに、ワタシが何故あのような状況だったのかを詳しくお伝えすると彼は怒ってくれていました。
なんとお優しい・・。やはりヒカリさまはワタシを大切に想ってくれているのでしょう。
しかし事情を話す中でヒカリさま自身が囮となって、ワタシを逃がすことを提案してくれました。何という高潔で美しい魂なんでしょうか。しかし、ワタシはその提案を丁重にお断りしました。
陽光教の幹部に汚されてしまうヒカリさまを考えただけで、この身が砕け散るような喪失感で涙が溢れてきました。
ヒカリさま、どうか、どうかそのような悲しいことは仰らないでください。ワタシが命を懸けましてもあなたの日向のような笑顔は守りますからと強く願い出ました。
更にヒカリさまは陽光教からの追手を心配されていたようでした。
「リオン、追手って大丈夫なの?まだ追いかけてきてるんじゃない?」
と聞かれましたが陽光教からの追手など、あなたへの想いだけで何とでもなります。そう答えようとしたワタシに何かが突然語り掛けてきました。
< 汝リオン=アステリアスはヒカリを主と認めますか? >
何を決まりきった事を聞いているのでしょうか。これまで短くも歩んだ19年間のワタシの人生の中では、ついぞ主を得ることなど出来なかったのです、物心ついた時からワタシは美しく誇り高き“剣”として捧げるべき特別な”誰か”を求めていたのです。
その特別な”誰か”はヒカリさまだとワタシは確信していました。
出会ってからのこの短い時間の中でも、ワタシの全てを捧げ主として戴くのは彼しかいないと心が、魂が、叫んでいました。
< 認めます。 >
ワタシは力強く心の中で肯定しました。すると、
< 汝リオン=アステリアスをツキノヒカリの使徒として認めます。 >
< ツキノヒカリよりリオン=アステリアスへ、エキストラスキル“十字軍”と“断罪”が付与されます。 >
< “十字軍”は所有者のLv数を最大数とする自身と同パラメータの光の兵士を作成し、命令に従い動かすことが可能となります。次に“断罪”は所有者のLv数を最大数とする不可視の剣戟を飛ばすことが可能となります。 >
< ・・・本件の仮承認は完了しました。本承認はツキノヒカリ当人への誓約が必要となります。 >
< それでは______よき旅路を______>
本承認という意味は分かりませんでしたが、新たな力が湧いてくるのを感じました。
ああ、ヒカリさま、あなたは本当に・・・。
ワタシの傍で心配そうに見ているヒカリさまに、力強く宣誓します。
「ワタシは大丈夫です。ワタシにはヒカリさまが居ます。あなたさまを想うだけで力が湧いて参ります。ヒカリさまに与えられた新しいスキルも把握できています。
ヒカリさまは、ワタシを死と絶望の淵から救い上げるだけでなく、あなたさまを守るための力を授けてくれました。ヒカリさまというこの世に降り立った神を守護なさいという天啓だと信じております。
ワタシはヒカリさまという神の使徒なのです。何故、神子という名ばかりの俗物が管理する陽光教の手先に負けることがあるのでしょうか。
偽神を信奉させられ、友に裏切られ、手をかけられたワタシを神が救ってくれたのです。傷を癒すだけでなく、今なお心までも癒して頂いています。」
そして、ワタシの可愛い神さまに誓約致しました。
「______ワタシはあなたを守護る“剣”になることを誓います」と
誓約した瞬間、急激に力が湧いてくるのを感じ、ステータスを見てみると能力値の大幅上昇が起こってていましたし、先ほど与えられたスキルもステータスに載っていました。
また、ヒカリさまの使徒となったことがステータス上でも記載されており、この世界において特別な誰かの”剣”になれたのだと泣きだしそうになりました。
ステータスの確認が終了した後、ワタシにとって何の制限にもならない制約を受けました。ヒカリさまから離れることなどないワタシにとってこれが何の縛りになっているのか未だに分かりません。
ただ、入浴を一緒にしようとしたりベッドに一緒に入ろうとすると、ヒカリさまは恥ずかしがりながら離れていきます。こちらをチラチラ見ながら名残惜しそうに。
本当にそういうとこですよ、ヒカリさま。
その後は、ヒカリさまの誘惑により、我慢していたワタシの理性を破壊しかけるという出来事がありました。その出来事を引き金にワタシと彼が神と使徒の関係を越え、より深みに至ろうとする神聖な儀式を行う直前に、空気の読めない陽光教の憎きエウレカと手練れ(笑)の刺客が攻めてきました。
エウレカと刺客どもから罵詈雑言を受けるワタシをヒカリさまは庇ってくれました。ワタシと行動を共にするのは、彼自身が望んでいるということを声高に宣言してくれました。
ワタシはヒカリさまと出会ってからというものの、感情が強制的に呼び起こされ、知らない自分を発見してばかりです。ワタシはこんなにも彼を求めてしまうのかと。
ヒカリさまの言葉や一挙手一投足で、こんなにも感情が揺れるのかと驚いています。
話を戻して攻めてきた陽光教のゴミどもの顛末に触れましょう。今まで一度も戦闘では勝利することが出来なかったエウレカを含め全員を返り討ちにさせて頂きました。取るに足らない出来事です。
しかし、一つ大きなミスを犯してしまいました。憎きエウレカを仕留めたと思ったのですが、スキルを使われまんまと逃げられてしまったのです。
自害物の失態です。
しかし、ワタシはヒカリさまの許可なく自害など出来なくなりましたので、次回汚名を返上することと致しましょう。
エウレカはワタシの実力を、聖騎士団団長であった頃を基準としているので、舐めていたと思います。だからこそ、ワタシに直接とどめを刺すため幻影を使わず自らの手を下しにくると踏んでいたのですが、用心深いのか幻影をしっかりと使われ逃げられました。
本当に、力を与えてくれたヒカリさまに顔向けができませんね。
陽光教の刺客たちの遺体の処理ですが、ワタシはその辺に捨ておこうと思っていました。ワタシの誇りや信頼を踏み躙り陽光教を信奉し、あまつさえワタシの命よりも大切なヒカリさまを連れ去ろうとしたのですから、魔物や虫の餌になって頂こうと思っていました。
しかし、信じられないことが起こりました。
遺体を前にしたヒカリさまは自らのお手を汚し、穴を掘り始めたのです。
「・・・・何を・・何をされているのですか、ヒカリさま」
「ん?さすがに、遺体をそこら辺に捨てておくのは可哀そうじゃない。だからスコップはないから、手で浅目に掘って埋めてあげようかとね。」
・・・驚きました。女性の遺体などその辺に放っておいて土に返すのが普通です。なぜなら、幾らでも女性はこの世にいるから。しかも世にも希少な男性が自ら手を汚し、埋葬するなんて聞いたことも見たこともありません。
穴を掘り、遺体を埋めようとするヒカリさまの姿は、夕日に照らされ神々しく一枚の絵画のようでした。
ワタシは、ヒカリさまは本当はこんな事したくないのではないか。ワタシが居る手前、本当は嫌だけど我慢して女性の遺体を埋葬しようとしてくれているのではないかと思い、つい意地悪な質問をしてしまいました。
「・・・ヒカリさま、敵として立ちふさがり、あまつさえヒカリさまを拐そうとした女どもにも慈悲をお与えになるのですか?」
「・・?慈悲かどうかわかんないけど、このままじゃ可哀そうだし、夢見が悪そうじゃない。」
・・・ヒカリさまにとって散っていった女性たちが可哀そうなのですね。女性は忌むべきものでも、嫌悪するものでもなく、ましてや快楽のためにあるヒトでもないのですね。ワタシたち女性をモノではなく人として見てくれているのですね。
そう思うとワタシは胸中に色んな想いが溢れ、泣きそうな、それでいて胸の奥が熱くなるような気持ちを抱きました。そうした結果、自分の口から言葉が勝手にこぼれました。
「・・ヒカリさま」
「ん?どうしたリオン?」
「・・ヒカリさま、ワタシはあなたに出会えて本当に幸せです。」
「何言ってんのw
こんな遺体だらけの所で。ムードも何もあったもんじゃないよw」
「それでも、それでも、伝えずにはいられなかったのです。」
その後、遺体の処理を終え、血が苦手なヒカリさまのためにも戦いは極力避け、ワタシとヒカリさまは王都へと急ぎました。
これから冒険者ギルドに登録し、二人だけでの生活が始まります。
でもきっとすぐに仲間は増えることになるでしょう。
だって、あなたはこんなにも優しく温かいのだから。
あなたと歩む闇夜の道は、優しい月に照らされて、救いに溢れる未来へ続く。
ツキノヒカリに導かれ__________
__________これが、ワタシの絶望と希望の物語です。
上手くまとめれた気がしませんが、とりあえずこれにてリオンとヒカリの出会い編は終了です。リオンがヒカリへ堕ちていく所を描きたかったのですが、どうだったしょうか。チョロインも大好きなのですが、ヒロインがなぜ好きなのか明確な理由がある方も好きだったりします。次回からは王国編スタートです。書きたいことをつらつら並べてしまって読みにくいかもしれませんがご容赦ください。




