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おひとり国王サマ ~毎日忙しい国王は、スキル【冒険の書】で冒険者の旅先へ一瞬でワープして日帰りプチ家出する~  作者: 椎名 富比路
第十一章 自堕落国王:ソロガス・キヤネンができるまで

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第40話 召喚獣を使って、追跡

「ソロガス義兄(あに)様は、ペットを買いなさっておるのか。というか、召喚獣じゃのう?」


「マーヴェリックだ。かわいがってやってくれ」


「うむ。妾はフィオじゃ。よろしく頼むぞ。マーヴェリック殿」


 すっかりフィオは、マーヴェリックのトリコになってしまったようだ。「ホレホレ」とジャレながら、メザシを与えている。


「見たことのない犬じゃのう? あるいはオオカミか。どんな種類の召喚獣なのじゃ?」


 フィオは、マーヴェリックの腹を撫で続けていた。メザシを、マーヴェリックの顔に近づける。

 

「グラシャ=ラボラスだ」


「このかわいいのが、グラシャ=ラボラスとは!?」


 驚いたフィオは、指ごとパクっとメザシを咥えられた。


 マーヴェリックはメザシを、フィオの指とともになめっている。


「でもかわいいのう。愛らしいのじゃ」


「そう思ってもらえるだけで、こちらとしても楽しいぞ」


「しゃべったのう。召喚獣じゃから、言葉もわかるのかえ」


「主・ソロガスから知恵を拝借したのだ」


「器用じゃな」


 ほとんどの召喚獣は、知恵を手に入れたとしても有効活用できない。


「自分が食うために、ちょっとしたイタズラなどで迷惑をかけることも多いというに」


「我は、低俗な魔物などではない。偉大なる、グラシャラ=ボラス種だからな。魔物たちの手本にならねばならんのだ」


「見事な志ぞな」


 またフィオは、わらベッドの上でマーヴェリックと戯れる。


「ソロガス義兄様、マーヴェリックとは、あの?」


「ああ。魔王になっちまった親友の旧名だ」


 今は違う名前を名乗っているため、マーヴェリックの名をコイツに継がせた。

 彼なら、マーヴェリックの偉大なる名前を汚すことなどない。


「して、義兄様。マーヴェリック殿に、なにをさせるつもりじゃ?」


「コイツを嗅いでもらう」


 オレが手にしたのは、カロンリーネのハンカチだ。


「そんなもの、どこで手に入れたのじゃ? 場合によっては、ヘンタイオヤジぞな」


「オレの私物だよ。カロンリーネがオレの誕生日に、自分で編んでくれたんだ」


「使わんかったのかえ?」

 

「もらったはいいものの、もったいなくてな」


 ずっとアイテムボックスに閉まっていた。誰かに洗ってもらうのもしのびなく。


「ますますヘンタイオヤジに、一歩近づいておるのう。もう同じ桶で、下着を一緒に洗うてくれなくなるぞよ」


「もうとっくに、洗ってくれねえよ」


 このハンカチには、カロンリーネの香りが大量に含まれているはず。

 

 オレはマーヴェリックに、ハンカチを嗅がせた。


「ふむふむ。なんとも勝ち気な女の香りがするな。して、これがなにか?」


「このハンカチの持ち主を、探してもらいたい」

 

「……なあ、ソロガスよ。我は騎士犬のマネごとなどせぬぞ」


 騎士犬とは、関所などにいる検品係の連れている犬だ。

 嗅覚は普通の犬の四〇倍を誇り、危険な薬物や爆発物の持ち込みを厳しくチェックする。

 おかげでキヤネン国は、これまで薬物や危険爆発物を持ち込んだ犯罪が起きていない。


「いや、お前さんなら絶対に、カロンリーネを探し出せる」


「それは騎士犬としてか? それとも召喚獣としての仕事か?」


「マーヴェリックという、一個人を信頼して頼む」


 オレが説得すると、マーヴェリックはしばらく考え込む。


「あいわかった。もっとウマい獲物がほしい。それで手を打とうではないか」


「感謝する」


「ただ、この姿のままでは。いかんせん、嗅覚が鈍っていてな。本来の姿で探させてもらう」


「お前さんが、やりやすいようにしてくれ」


「ではフィオ殿、外に」


 フィオに抱きかかえられながら、マーヴェリックは小屋の外へ出た。


「もとに戻るゆえ、離れておれ」


「うむ」


 マーヴェリックを、フィオが放す。


 川の側まで来て、マーヴェリックが巨大化した。


「なんか、巨大化しても魔物としての威厳はないな」


「ホントじゃ。あの犬の姿が、そのままデカくなっただけじゃわい」


 大量に食いすぎたか?


「人と触れ合いすぎたことで、魔物としての本性を忘れてしまったようだな。まあ、これでも鼻は問題なく機能するので、安心するがよい」


「それは、頼もしい。さっそくやってくれ」


 オレは、ハンカチをマーヴェリックに近づける。


「ふむ。あちらだな」


「あっちだと?」


 ここから随分と離れた位置にある、中規模ダンジョンじゃないか。


 そこは確か、冒険者ギルドが調査している地下洞窟のはず。


 そんな危険地帯に、カロンリーネは乗り込んだってのか?


「一旦、冒険者ギルドへ向かったほうがよくないかのう」


「しかし、ギルドには話に行ったぜ?」


「メンバーの詳細については、聞いておらぬ」


 アルマーの冒険者ギルドに、戻ってみた。


 一応、マーヴェリックは犬の姿に。


「大規模パーティですか? 確かにいましたね」


「本当か! あの地下洞窟に行くって言っていたか?」


「はい。あまり目立っていませんでしたが、前衛に女性の聖騎士様を連れていました。騎士様が立ち会いでなければ、入れないダンジョンですので」


 女性の聖騎士! 間違いない。


「どうしたのじゃ、義兄……ローガン殿」


 フィオがオレのことを、冒険者としての偽名で呼び直す。


「カロンリーネは、騎士の修行を受けていた時期があってな。男勝りに腕っぷしが発つんだよ」


 おまけに身分は、申し分ない。


 あいつ、オレに黙ってダンジョン攻略しようってか!

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