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おひとり国王サマ ~毎日忙しい国王は、スキル【冒険の書】で冒険者の旅先へ一瞬でワープして日帰りプチ家出する~  作者: 椎名 富比路
第十一章 自堕落国王:ソロガス・キヤネンができるまで

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第41話 冒険者 カロンリーネ

 温泉地から離れた、地下ダンジョンへと足を運ぶ。

 ここに、カロンリーネがいるはずだ。


「ソロガス義兄(あに)様、いたぞよ」 


 フィオに指摘されて、物陰に隠れる。


 たしかに、カロンリーネが数体の魔物を撃退していた。


 それにしても、相当強いな。昔から腕っぷしは強かったが、これまでとは。周りのパーティとも、遜色ないじゃないか。もっと後ろの方で、魔法をペシペシ打っている印象だったぞ。


「あいつが、冒険者志望だったとは!」


 組み付いてきたオークを、オレは回し蹴りで撃退した。


「どうでしょうな、ソロガス義兄(あに)様。単に、暴れたいだけなのかも」


 フィオも、襲ってきたコウモリをノールックで数匹撃ち落とす。

 

 王城にいては、色々とフラストレーションが溜まる。まして、何もしていないのであれば、力を持て余すもの。

 

「ふむ。ここに大型魔物が目を覚まして、温泉地に降りてきてしまう可能性があるとな」

 

 季節的に現れる魔物らしく、定期的に討伐する必要があるそうだ。


 年々強くなっているため、カロンリーネが匿名で討伐に来たようである。


 カロンリーネのパーティを追って、最奥部にたどり着いた。


 聖騎士の盾を、カロンリーネが地面に突き刺す。

 

「わたくしが浄化の魔法で、この地を清めます。その間に、みなさんは魔物をお願いしますね」


 男女問わず、ちゃんと連携ができているな。もっと自己主張が強い子だと思っていた。

 

「来ましたわ」

 

 カロンリーネが、魔法障壁を展開する。


 大トカゲが、ワラワラとパーティを取り囲んだ。


「すごい力だ!」


 レンジャーが矢を放ったが、トカゲの皮膚に弾かれてしまう。


 これは、ピンチか?

 

「義兄様、こちらにも」


 ドドドと、トカゲがオレの背後に迫ってきた。


「よし。ほらよ」


 オレは裏拳で、トカゲをブチのめす。


「さすが、年季が違うのう」


「若武者とは、経験がダンチでね」


 驚いているフィオだって、さすが王族だ。鍛錬は、怠っていないらしい。トカゲだって、すぐに退ける。


 だが、オレたちが追い払ったせいか、カロンリーネのパーティにトカゲが殺到してしまった。数を減らしてやるつもりが、一極集中しちまうとは。


「ヤバいな。姿を隠して加勢するか?」


「いや。王女殿下を信頼しましょう」


 オレは気が気ではない。


 しかし、フィオはカロンリーネを信じ切っていた。


 冒険者たちは、どんどんと劣勢に立たされる。全員生還しているのが、奇跡なほどだ。


「今ですわ! 浄化!」


 カロンリーネが、地面に差していた盾を引っこ抜く。その勢いのまま、天へと盾を掲げた。


 ズンと、天から重量のある光が降り注ぐ。

 

 あれだけ暴れまわっていたトカゲたちが、我に返った。

 

「おお、魔物たちが襲ってこなくなったぞ」


「魔物の正体は、温泉地の瘴気だったようじゃのう」

 

 地脈を通る魔力が強すぎて、コントロールが効かなくなったせいで、魔物たちが凶暴になってしまうのか。それで、浄化魔法で土地を清めなければならないと。


「お疲れ様でした。みなさんの協力のおかげで、今回もうまくいきましたわ」

 

 探索が終わり、カロンリーネは冒険者たちと昼食を共にしている。


「もっと強い聖属性魔力で、いっそここの地脈を塞いでしまうこともできませんか?」


 女戦士が、カロンリーネに問いかけた。

 

「できますわ。けど、それでは再び封じるときも、より強い聖属性の魔力が必要になりますの。バランスが大事なのですわ」

 

 首を振りながら、カロンリーネは答える。


 オレが教えたことを、ちゃんと守ってやがるな。


「ありがとうございます。おかげで地元の浄化がスムーズに終わりました。あなたはさぞご高名な聖騎士様なのでしょうな」


 リーダーらしき騎士の男性が、カロンリーネを称賛した。地元の名士かな?


「わたくしは、しがない旅の聖騎士ですわ」


 カロンリーネは、謙虚にしている。


「お高く止まっておらず、清々しいのう。やはり、王女殿下じゃ」


「ああ。変な虫がついている感じでもねえし」


 オレたちが、酒場の隅っこで話し合っていると……。


「そこのお二方も、お疲れ様でした。こちらにきてお話でも?」


 カロンリーネが、急に声をかけてきたではないか。


 フードを被っていなければ、バレていたぞ。


「よろしければ、こちらでお話でも?」


「ケッコウダ。ソレデハ」 


 とっさに声色を変えて、オレたちはやりすごす。

 

「危ねえ。アイツ、ああいうところはマジで聡いんだよなあ」


「噂に違わぬ、地獄耳ぞ」


「ああ。アイツにだけは、バレないようにしないと」


「まあバレたところで、冒険の書のルールには外れぬがのう」


 知り合いに見られたとしても、冒険の書には【認識阻害:他人のそら似】」という特殊効果がある。

 なので、冒険の書の存在が発覚することはない。


「風呂に入って、落ち着くぞ」


 温水プールを借りて、一服することにした。


 大浴場より物足りないが、仕方がない。

 あっちは、カロンリーネが入っていってしまった。まいったぜ。踏んだり蹴ったりだぞ。



「寂しそうじゃな」


「ああ。なあフィオ」


「ん?」


「あいつに、オレは必要なのか?」

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