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おひとり国王サマ ~毎日忙しい国王は、スキル【冒険の書】で冒険者の旅先へ一瞬でワープして日帰りプチ家出する~  作者: 椎名 富比路
第十一章 自堕落国王:ソロガス・キヤネンができるまで

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第39話 冒険の書、用途外使用!?

 昼以降は、美術展の展示物を見学する。女性作家たちによる、個展だそうで。

 珍しいというので、客足も相当なものだ。


 コップ一つとっても、芸術的でありつつ機能美を持つ。主婦が扱うからか?


「見事な色彩ですね。それでいて、家に飾っても景観を損ねない。このカップがあるだけで、場が華やかになりますわ」


「ありがとうございます。食器は使われて初めて存在意義を持ちます。飾っているだけでは、さみしいかなと」


「わかりますわ。このカップを持つ手の暖かさまで、伝わってきますもの」


 カロンリーネが、作家たちと語り合う。


「ソロガス様、ちょっと」


「なんだよ? 飽きたのか?」


「そうではない。ちょっと!」


 フィオが、オレの袖を引っ張って、会場の隅まで連れて行く。

 

 オレが【冒険の書】を使って娘を追跡すると聞いたからか、フィオは青い顔になっていた。

 

「ソロガス義兄(あに)様、それは用途外使用なのでは?」


「侵略行為ではないから、大丈夫のはずだ」


 聞けば我が娘カロンリーネは、明日の朝アルマーへ向けて発つという。

 商業ギルドの女性責任者と、会うつもりなのだ。


「温泉に入れて、ちょうどいいではないか」


「よいが! それでは、遊びに行っているようなものではないのか? ちゃんと追跡できるのかえ?」


「できるとも。オレだってその辺りは、ちゃんとわきまえてるんだぜ?」


「ホントですかの?」


 夕飯は、ホテルでの食事に。


 女性シェフが、腕を振るう。


 優しい味だな。かといって、物足りなさなんてない。


 オレがフィオをヒソヒソ話していると……。


「あなた、フィオリーヌとなにをコソコソ話し合っているのです?」


「なんでもない。食いたいものがないか、聞いているだけだ」


「妻のわたくしがいながら、親戚と睦言をしているのかと思いましたよ?」


「とんでもないさ! フィオリーヌは、女王陛下になられたのだ。先輩国王のオレに、聞きたいことや相談事が山ほどあるんだ」


「それにかこつけて、逢瀬を重ねるなんてことはございませんわよね?」


「ございませんとも」


 デートなんぞ、恐れ多い。とてもじゃないが、オレとフィオの一連の旅は、およそ貴族や王族がするデートとは程遠い。まさに悪事。ヤンチャなガキの遊びだぜ。


「あなたを参考になさったら、暴君になるとはいいませんが、頼りない国王になりそうですわ」


「ある程度気の抜けた王のほうが、国民の気も引き締まるってもんさ」


 できの悪いトップを持つと、自分たちがなんとかしなければならないと、国民たちの士気がむしろ高まるのである。

 世間様ってのは、そういうもんだろうが。


「なら、よろしいのですが」


 王妃が気にすることなんて、なにもねえよ。

 間違いなんて、起きるはずもなく。




 翌朝、カロンリーネが外出することになった。馬車ではなく、【天使の羽根】という転送アイテムで。一人用で、一週間に一度しか使えない。だが一瞬にして目的地まで到着できるという、超レアアイテムだ。


「レアアイテムが必要なほど、急ぎの用事なのか?」

 

「早めに到着して、お湯に浸かりたくて」


「ああ、アルマーなら仕方がない」


「お父様は、入ったことがございますの?」

 

「騎士時代に何度か、な。アルマーの湯は、一瞬で疲れが取れる。オススメだ」


「ですわよね。では、行ってまいります」


 カロンリーネが、羽根を頭上へ放り投げた。

 


 さて、オレも近々向かうか。


「フィオ。一応、手筈通り」


 オレは、帰宅したフィオに連絡を取る。冒険の書に備わっている、遠隔通話機能だ。

 

『うむ、義兄様。くれぐれも、悟られぬよう』


「わかってる。ついてきてくれ」


『心得た。おそらくカロリーネ様の目的は、アルマーだけではなかろう』


 なんだか、ソワソワしていたからな。


「冒険の書で、転送するぞ」

 

『うむ』


 昨日一日中歩いたので、今日は午後まで公務がない。


 朝のうちに、娘の動向を探ることとしよう。




 アルマーに到着した。


 オレもフィオも、冒険者ルックである。


「ン?」


 冒険者ギルドや商業ギルドを見て回ったが、娘はアルマーにいなかった。


 どういうことだ? カロンリーネは確かに、アルマーへ向かうと言っていたのに。


 一杯食わされたか?


「失礼」


 オレは、たまたま通りかかった商業ギルドのマスターに声をかけた。


「二〇代くらいの若い女が、あんたに会いに来ていないか?」


「さあ。今、ギルドを開けたばかりですので。女性のお客様は、お見えになっていませんね」


 なんとまあ。


「どうするのじゃ、義兄様?」


「探す手段はある」

 

 かくなる上は、アイツに頼もう。


 オレは、アルマーに作った小屋まで向かった。


「なんじゃ、ここは?」


「オレの隠れ家だよ」


「そんなものまで、作っておったとは」


 自由を謳歌するには、ここまでやらんとな。

 


「おやおや。久しいな、ソロガスご主人」


 久しぶりに会ったグラシャ=ラボラスのマーヴェリックは、元気にやっていた。ワッシワッシと、メザシを頬張っている。

 

「なんじゃ、この犬は!? 小さくて、かわいいのじゃ!!」


 フィオが、オレが飼っているグラシャ=ラボラスと対面した。

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