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おひとり国王サマ ~毎日忙しい国王は、スキル【冒険の書】で冒険者の旅先へ一瞬でワープして日帰りプチ家出する~  作者: 椎名 富比路
第十一章 自堕落国王:ソロガス・キヤネンができるまで

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第38話 娘の様子がおかしい

「最近、娘の様子がおかしいんだ」


 キヤネン国へ公務にやってきたフィオに、オレは相談を持ちかける。


 


 一人娘カロンリーネ・キヤネン第一王女は、二〇代ながら未だに嫁の貰い手がない。

 お見合いをしても、袖にする始末。水をぶっかけられて帰っていった貴族も、いたなあ。お気の毒に。


「わたくしは、自分で財を成して、女性の社会進出を促進させるのです。結婚なんてしている場合ではございません」


 これが、口癖だ。

 自分が社会を変えられると、信じて疑っていない。


 しかし、夜な夜などこかへ出かけているようなである。


 オトコかも? ついに、お目当ての殿方ができたとか?



 


 で、公務でボッティからこちらにきたフィオリーヌ王女に、相談を持ちかけたわけだ。

 

「カロンリーネ第一王女様じゃろ、ソロガス義兄様? どうせ冒険者とつるんで、食道楽の旅をしているに違いありませぬ」


「フィオ。お前は女だから、そういう見方をするんだよ」

 

「女だからこそ、わかることもありまする。恋をする女というのは、どこか気配や匂いがするものでございましょう。ですが本日お会いした感じだと、特別殿方の様子などうかがえませんでしたぞ」


「わかるのか? さすがだな」


「さっきは女だから見誤るとか、申しておりませんでしたかの?」


 ジト目で、フィオがオレを見る。


「いやいや。言葉のアヤってもんだ」


「とにかく、お気になさるなら、後をつけるしかございませんのう」


 やっぱ、そうなるか。


「妾も、カロンリーネ様がどのような活動をなされているか、気にはなっておりまする。女性の先輩として、見習うところもあるやもしれませぬからな」


 フィオがカロンリーネのマネごとをしたら、とんでもないじゃじゃ馬になりそうだが。

 

「ひとまず公務と称して、カロンリーネ王女様のお仕事ぶりを見学なされませ」


 相手の出方や思惑を知らずして、判断をするべきではない。いっそ打って出て、相手を知ることも大事ってことか。


「わかった。見学に行こう。フィオもついてきてくれ。女性の意見も聞きたい」


「義兄様。お妃様も、連れてまいりましょう」


「そうだな」


 フィオを含め、オレたちは一家総出で、カロンリーネの仕事を見学させてもらうことにした。


 カロンリーネの業務は、女性の労働環境を見て回ることだ。

 休憩は取れているか、主婦が労働する際に育児は夫婦で分担されているか、などである。


「わたくしはなにも、『女性に特別な待遇をせよ』とは言いませんわ。正当な評価をせよと言っているのです」

 

「はい。心得ています。我が社には、女性の管理職もおります。正しく、評価をした結果です」


「ご意見、ありがとうございますわ」

 

 カロンリーネが、織物職場の社長と話し合う。


 決して、押し付けがましい訳ではない、と。


 昼食は、女性数名で切り盛りする鉄板料理屋へ。

 ホテルで見るような、ステーキハウスではない。場末の、鉄板焼屋である。


 カウンターに、オレたち一家が一列に並ぶ。


「義兄様、なんじゃ、この料理は。シャレにならぬほど、うまし」


「これは、【お好み焼き】だ。メシに合うんだよ」


 王妃たちは未知の料理に困惑する中、オレはただ一人、コテで切り分けてみんなにシェアをしていく。使用人を使わず、自分で。


「これは、うまいな。焼き加減が、最高だ。生地とキャベツの分量がちょうどいい」


 身近に、こんな最高のメシが食える店があるとはね。いつも深夜に【冒険の書】を使うから、こういった店には入れないんだよなあ。


 王妃と息子夫婦は、みんなで一枚のお好み焼きをシェアして、メインは肉料理だけ。やっぱり、未知の料理には慣れないか。


 カロンリーネは、小さいお好み焼きを食らう。


 デカいサイズを一枚丸ごと食っているのは、オレとフィオくらいだ。


「あなた、随分と下々のお食事に慣れている感じですが?」


「んあ?」


 お好み焼きをオカズにドンブリメシをかき込んでいると、王妃からツッコまれた。


「メシってのは、こうやって食うものさ。なあ?」


「そうですじゃ。姉様」


 フィオが、同じようにドンブリを傾けている。メシ粒がホッペについているのも構わず。


「孫までマネをするので、やめてください」

 

 息子夫婦の方を見ると、孫娘がオレたちのマネをしてメシをガツガツと食っていた。


「よく噛んで食べなさいよ」


「はーい」


 オレが伝えると、孫娘は行儀よく食い始める。お好み焼きも、直接コテで鉄板から食ってやがった。教えていないのに。息子よりよっぽど、教え甲斐があるなあ。


「この店は、何年ほど続いていますの?」


「かれこれー、四〇年くらいかねー?」


 オバちゃん同士でゲラゲラと笑い合いながら、店員たちはカロンリーネからの質問に答える。


「後継ぎなどは? みなさん、結構なお歳ですわよね?」


「そんときゃ、そんときよ。あたしだって、ババアが歳になって、自然と後を継いだものさー。若い頃は、ババアとケンカケンカの毎日だったのにさ」


「そういうものですのね」


「孫も手伝いに来てくれるからさー。別に困ってねーんだわー」


「男性の働き手などは?」


「いらないよー。息が合わんのよ。旦那は畑をやってくれたらえーがね」


 また、ガハハーとオバちゃんたちが笑い出す。


「ありがとうございます。ごちそうさまでしたわ」


「またどうぞー」


 全員で、お好み焼き屋を後にした。


 うますぎて、フィオと焼きそばまでもらってしまったぜ。



 カロンリーネ王女は特に、変わった様子はないな。普通だ。



「のう、言ったとおりぞよ。カロリーネ様に限って、殿方とどうなるとかはないものじゃ」


「いざとなったら、【冒険の書】を使う」

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