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おひとり国王サマ ~毎日忙しい国王は、スキル【冒険の書】で冒険者の旅先へ一瞬でワープして日帰りプチ家出する~  作者: 椎名 富比路
第十一章 自堕落国王:ソロガス・キヤネンができるまで

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第34話 僧侶との冒険で、根深汁

 ゴボウと鶏肉しかないシャモ鍋をつつきながら、オレはフィオに昔話を聞かせてやる。

 

「一五歳のオレにとって、あのヤロウの、ジェアロームの存在は衝撃的だった」


「妾にとっての、義兄(あに)様のようなもんじゃな」


「近いな。血縁関係はないが、悪いことを教える親戚みたいなポジションに、ジェアロームはいたな」


 ~~~~~ ~~~~~ ~~~~~ ~~~~~

 

 オレは冒険者として、旅をすることもあった。

 騎士というより、王族として、世界を見て回ることも多いのだ。


 また、今回向かうダンジョンの敵は強い。オレの腕を見込んで、討伐に当たってほしいとの知らせだったのである。


 普通、こういう討伐依頼に当たる王子ってのは、お飾り程度のことが多い。


 ジェアロームは、オレの先生でもあった。武術のイロハや、回復術の使い方まで、色々教えてくれたのである。


 そのため、オレは他の騎士たちより強い。


 ダンジョン攻略に向かったパーティには、ジェアロームもいた。

 

 ジェアロームは腕も確かだが、主にメシの担当である。


 各自が総出で、食材まで用意していたくらいだ。ジェアロームに、メシを作ってもらうために。

 彼がよく作ってくれたのは、「根深汁」という質素な味噌汁だった。材料は味噌、ネギとダシとしょう油だけ。

 なのに、極上の旨さでオレたちを満たす。


「いつ食っても、あんたの根深汁はうまいよ」


 オレたちは、ネギだけのスープで温まる。

 


 この日は大規模ダンジョンの攻略で、心身ともに疲弊していた。


 他のパーティはみんな、現地調達したモンスターを材料にして食事をしている。


 

 オレたちのパーティは違う。根深汁のような、質素な食事で済ませた。先が長いことを見越して、食糧を温存しているのである。


「よく言うぜ。最初は、馴染めなかったのにか?」


「ネギだけのスープなんて、うまいのか謎だったからな」


 しかし今は、根深汁こそ恋しい。


「ああ、うまい。これだよこれ」


 味噌の香りの中で、ほんのりとしょう油が主張してくるのがたまらないのだ。それにネギが味噌の味を吸って、うまいのなんの。


 これを握り飯と一緒に食えば、元気百倍だ。


「ダンジョンをもう一周、できそうだぜ」


「やってみるかい?」


 ジェアロームが、ニヤリとする。


「いや、他のメンバーがウンザリしているから、やめとくか」


 メンバーと一緒に、笑い合う。


 結果的に、他のチームは食事の在庫がなくなりだして、脱落していった。


 そんな中、オレたちだけがゴールまでたどり着いたのである。


 とはいえ、ジェアロームはまったく自慢することもなかった。「運が良かっただけだ」、と。

 実際、まったくそのとおりだった。近道が見つかったことも偶然で、応援を呼ぶ余裕もなかったのだ。ヘタに未熟な冒険者を呼び込んだら、魔物たちの餌食になっていたから。


 終わった後も、簡単な宴会で済ませる。


「これで、乾杯といこうじゃないか」


 オレたちの前に出されたのは、ゴボウと鶏肉の鍋だ。


「ああ、うまそうな鍋じゃないか。具材がこれだけしかないのに、どうして食欲がそそられるんだ?」


「うまいからさ」


 強めの酒を煽りながら、みんなでシャモ鍋をつつく。


 このうまさときたら、王宮で食っていたものはなんだったのかと思うほどである。

 

 たしかに、王宮で出される料理は、凝っていて、健康も考えられていた。その中で、よりぜいたくな印象を与えてくる。


 対して、この飾りっ気のない鍋はどうか。

 実にうまい。

 鶏肉のプリプリとゴボウのシャキシャキを同時に食らうと、なんとも幸せになる。


 こんな簡単に、幸福というのは手に入るものなのだ。


 ぜいたくをすれば、いいってものではない。


 清貧を追求する、ジェアロームならではのこだわりを感じた。


 質素は美徳ではあるが、けっしてみじめではない。


 この具がほとんどない鍋でさえ、オレを身体の芯から満たしてくれる。

 

~~~~~ ~~~~~ ~~~~~ ~~~~~


 

「これが、そのシャモ鍋かのう」


 フィオが、鶏肉を持ち上げた。

 

「そうだ。熱い酒と一緒に食うのが、スキなヤツだった」


「それにしてもうまいのう。なんの鶏かの?」


 鶏肉を口へ放り込む。

 

「コカトリスだ」


「コ……!?」


 そう。相手を石化させちまう、凶悪な巨大ニワトリである。

 

「マジかえ? そんな魔物を、鍋にしておったのか」


「ああ。オレとジェアロームは、コカトリスを退治に向かったんだよ」


 今でも、この近くのダンジョンでは、コカトリス狩りを生業とする冒険者がいるのだ。どいつもかなりの達人クラスだが、獲物はオレたちが倒した個体よりめちゃ小さい。


「オレたちが食っているのは、当時のコカトリスだよ。デカすぎてな。何年かかっても、まだ肉が食えるんだ」


 魔法で保存しているため、まだ大量に残っている。


「よく生きて帰れたのう」


「鍛えられたからな」


 いざとなったら、オッサンのバステ治癒魔法があったし。


「それでも、ヒーラーがおらなんだら、全滅必至ではないかっ」


「なぜかオレは、ジェアロームがいたら勝てる気がしたんだよ」


 

 で、オレが国王になった話に。

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