表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おひとり国王サマ ~毎日忙しい国王は、スキル【冒険の書】で冒険者の旅先へ一瞬でワープして日帰りプチ家出する~  作者: 椎名 富比路
第九章 国王、ソロで隠れ家作り

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/47

第29話 使い魔、マーヴェリック

 オレはグラシャ=ラボラスに、「マーヴェリック」と名付けることにした。

 

「由来は?」


「……古い友人の名前だ。今はどうしているか、わからんが」


 ソイツはマーヴェリックの名を捨てて、いずこかへ消えた。


「ネガティブな記憶で、申し訳ない。だがお前さんなら、ポジティブに受け継いでもらえるかと思うぜ」


「よかろう。一匹狼とは、我そのものとも思える」

 

「そうそう。お前さんにピッタリだ」

 

「孤高の存在というわけだな。よろしい。では契約と行こうか」


 マーヴェリックと契約をするため、オレは自分の腕をナイフで傷をつけた。血をマーヴェリックに舐めさせれば、正式に契約は成立だ。

 

「うむ。ローガンが……いや待てよ」


 オレ、偽名だった。危ねえ! 偽名では、契約できねえじゃん!


「ソロガス・キヤネンが命じる。かのグラシャ=ラボラス種に名を刻まん! 汝の名はマーヴェリック、孤高の猛獣なり!」


 オレは、マーヴェリックに血を舐めさせる。


「ふむ。契約は成された」


 ポンッ、と、マーヴェリックが煙に包まれた。


 煙が晴れると、コミカルな見た目の魔物が。


 これが、使い魔バージョンのマーヴェリックか? ぬいぐるみのようなサイズに変わったぞ。


「おお、随分と愛らしくなったではないか」


「省エネモードだ。これで過ごさせてもらう」


「危なくないか? そんなにかわいらしかったら、さらわれるんじゃ?」


「そこまで、貧相ではない。いざとなったら、飛んで逃げるわい」


「普段の姿では、過ごさないんだな?」


「いつもの状態では、そなたがくれたエサなんぞ、半日で食い尽くすぞ」


 それは困る。


「この姿ならば、大きな家も不要なり。そなたの小屋で、世話になるぞ」


「いいけど、必要なものはないか?」


「今のところはないな。エサも大量にあるし、このメザシとやらも、一日九匹くらいで十分なり」


 食糧関係は、問題ないという。いざとなったら、川に入って魚を捕るそうだ。

 川だから、自動水飲み道具とかも必要ないよな。


「トイレどうしようか? 付けてやるけどな」


「その辺の川で、済ませよう」


 ならば、必要はないか。


「お、改築の相談をしていたら、来たようなだな」


 冒険者たちが、オレの小屋までやってきた。男女四人組だ。


「なあ、アンタ! これくらいデカいモンスターを見なかったか?」


 剣士タイプの男性が、オレに問いかける。

 

「いいや。知らんな」

 

「その使い魔は、あなたのですか?」


 今度は、魔法使いがオレに聞いてきた。


「おう。マーヴェリックと言ってな。羽の生えたオオカミなんだ」


「その子、グラシャ=ラボラスの子どもでは?」


 ぎくり。


「だったら、気をつけたほうがいいぞ。グラシャ=ラボラスが、この辺りを飛び回っている。素材になるって思ってケンカを売ったんだが、我々の手には負えない」


 彼らも、相当な達人と見える。しかし、あまりにも思考が若い。戦ってもいい相手かどうか判別する術に欠けている段階で、まだまだである。


 もしマーヴェリックがグラシャ=ラボラスとして五体満足だったら、オレでも無事では済むまい。レッドドラゴンのキサラギに、助けてもらおうかしら?


「でも、あきらめたほうがいいかも」


 魔法使いの少女が、思考する。

 

「どうしてさ? グラシャ=ラボラスの羽毛は、いい素材になるんだぞ。それで金を得るんだ!」


「子どもがいるのかも」


 少女の言葉に、さっきまで強気だった剣士が急に萎縮した。


「……そうか。あのグラシャ=ラボラスは親で、巣を守るために暴れたって可能性があるのか」


 剣士も察しがついたのか、引き返すことにしたようだ。


「我々は、討伐をあきらめることにするよ。あんたも、気をつけるんだ。引退した冒険者のようだが、グラシャ=ラボラスの巣が近いというなら……」


「その心配はない。ここは、商業ギルドで買った土地だ。下調べをせずに売ったりなど、せんだろ」


「たしかにな。しかし、気を付けて」


 冒険者たちは、帰っていく。


「危ないとこだったな」


「まあ、バレたとしても、返り討ちにしてやるが」


「よさんか。オレがここにいられなくなっちまう」


 それこそ本格的な討伐が始まって、スロイーライフどころではなくなるだろう。ここも追い出されるに、違いない。「グラシャ=ラボラスを操る魔王が、河原で読書をしているぞ」と。


「冗談だ。また、使い魔になった以上、我に素材としての価値はない」


 使い魔の素材は、すべて主の所有物になる。主を殺さない限り、だが。


「では、オレはそろそろ行かねばならん」


 帰らないと、怪しまれてしまう。


「あいわかった。この小屋は、我が有意義に使わせてもらおう」


「粗相は勘弁な」


 こっちに来て小屋の中が粗相まみれだったら、泣くに泣けない。


「そこまでのシツケは、心得ておる。欲しいものはあるか?」


「あー、じゃあ。お前さんの素材で、枕かベッド、クッション辺りを」


「ぜいたくだな。しかし、羽毛を用意しておくか」


「頼む」



 オレは一旦、国に帰ってきた。


「マーヴェリックのヤロウ。どうしてっかなぁ。いや、元マーヴェリックか」


 今度、フィオにも会わせてやろう。いや、会わせてやらねば。


 魔王となってしまった、元マーヴェリックに。


「魔王は、【冒険の書】の禁を破った者の、末路だからな」

 


(第九章 おしまい)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ