第28話 建築開始そうそう、珍客が
丸太などは、王都から持ってきた。ちゃんと、乾かしてある。
乾かした丸太を、建築スキルで動かす。
ウッドゴーレムを召喚して、家を組み立ててもらった。
スキルのお陰で、特別な知識なども必要ない。
「よし」
簡素な丸太小屋が、完成した。
若干小さいが、オレしか使わないからな。広さは、こんなものでいいだろう。
水車も引いちまうもんね。
続いて余った丸太を、家具用の木々として使うため、表面を削っていく。
テーブルと、椅子を作った。他には、ここ専用のアイテムボックスを設置しておいた。
ボックスの中身は、非常食用のメザシだ。
前にフィオと釣りに行って、近くの宿で大量にメザシを作ってもらった。
分けると言ったのだが、「こちらも売るほどある」と言われて、保管することにしたのである。
オレでも食いきれない。
なんかモンスターでも現れて、根こそぎ食ってくれんだろうか? まあ、そんなヤツいねえわな。ガハハ……。
細かい家具などの製造は、ウッドゴーレムに任せよう。
さて、本でも読もうっと。
「ああ、眠い」
いかん。ここで寝てしまったら、まともにゴーレムに指示も出せなくなるではないか。
しかし、ゴーレムの指揮にここまで脳のリソースを取られるとは。
読書しながらお手軽にエンジョイDIY、と思っていたが。
やはりDIYの本質は、「自分でやれ」ってことか。
限界だ。ゴーレムも休ませてちょいと休もう。
「おっと、小一時間は寝てしまったか?」
早く帰らないと、王都に怪しまれる。
「ん、なんだコイツは?」
白い毛玉のような物体が、オレの側でゼエゼエと息を荒くしていた。犬型のモンスターか。なんて巨大な生き物だろう?
「お前、ケガをしているのか?」
この魔物、足にケガをしていているようである。
傷口を洗い、回復魔法を注ぐ。
オレを蹴らんばかりに、魔物はジタバタした。飛び起きることはできないが、オレを蹴り殺すだけの体力はあるみたいだ。
「おお、暴れるんじゃねえよ。ジッとしてろ。そうだ。コイツを食えるか?」
巨大な犬っころに、メザシを与えてみる。食えるかどうかわからないが、ここまで大きいのだ。味の濃くなった魚くらい、問題なかろう。
「おお、食ってる食ってる」
わっしわっしと、ワン公は元気よくメザシを食い始めた。
モリモリと食ってもらっている間に、オレは治癒魔法を施す。
「よし、これでよくなったぜ」
いやはや、まさかメザシを消費してくれる魔物が現れるとは。
「ニンゲンよ、感謝する」
お? コイツ、しゃべることができたのかよ?
「おそらくニンゲンの食い物をもらったことで、魔物の言葉を魔力でお主に伝達できるようになったらしい」
「そうかよ。オレはローガンだ。お前さんは?」
「名前はない。グラシャ=ラボラスと呼ばれておる」
えーっ。災害級の魔物じゃねえか。
大きな翼も、図体も、白い。猛禽の前足と瞳以外、なにもかもが白かった。
グリフォンだと頭が鷹なのだが、グラシャ=ラボラスは頭が狼だ。
たしか、翼が布団用の素材としてめっちゃ高く売れる。
「しかし、冒険者に狩られそうになってな。命からがら逃げてきたのだ」
「負けたのか?」
「勝ったわい! 前足で軽くポーンと追っ払ってやったぞい」
茶化すと、グラシャ=ラボラスは激昂した。
「ふうむ。じゃあ、オレがかくまっても、また別の冒険者に狩られそうになると」
「そうなる」
もう負けた冒険者が、コイツの存在を冒険者ギルドに報告しているだろう。
「だが、突破口はあるぞ」
「……契約か?」
魔物は、人間と契約することで、使い魔として第二の人生を歩むことができる。
とはいえ、自分から人と契約したがるような魔物なんて、まずいない。
オレとのケンカに負けたドラゴン【如月】でさえ、オレとの契約を拒否った。
魔物にとって、主導権を握られるってのは、それくらい抵抗があるのである。
「お主は、命の恩人なり。このまま得体のしれぬ輩の素材になるくらいなら、お主と契約をしてやろうではないか」
「してやろう」、ですかい? 随分と、尊大じゃありゃせんか?
まあ、いいや。ここで問答して戦闘、なんて気分にはなれないな。
ここはオレの癒し空間なんだ。トレーニング施設じゃねえんだよ。
「わかった。契約といこうじゃんか」
「話が早くて助かる。して、この小屋を守ってやればよいのか?」
「ああ。オレがいない間に、スキに使ってくれよ」
「心得た。番犬としてはちと巨大すぎるが」
「お前用の犬小屋も、建ててやるよ」
予定とはちょっとかけ離れてしまったが、話し相手がいるってのは楽しい。
「それでは、契約の儀式と行こう」
そうだな。うかうかしてられん。もうすぐ、冒険者が報復に来てしまう。
やられちまう前に、使い魔にしてやる。
「どうすれば?」
「名付けよ。続いて、お主の血を舐めさせよ」
「わかったぜ。グラシャ=ラボラス。お気に入りの名前とかはあるか?」
「お主が決めてくれれば、従おう」
うーん。名付けセンスなんて、ねえんだよなあ。
ほとんど、王妃が決めちまうから。
孫の名前だって、王妃が決めちまった。
「お前はオス、メスどっちだ?」
「オスである」
「じゃあ、マーヴェリックだ」
「ほう、一匹狼とな?」




