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おひとり国王サマ ~毎日忙しい国王は、スキル【冒険の書】で冒険者の旅先へ一瞬でワープして日帰りプチ家出する~  作者: 椎名 富比路
第十章 【魔王】、冒険の書の禁を破ったもの

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第30話 ルール違反者

「のう、ソロガス義兄様」


 温水プールに浸かりながら、フィオがオレに尋ねてきた。プールの中で、フィオは足をバタバタさせている。


 今日は釣りの後で、宿の中のスパを利用させてもらっていた。温泉に浸かるついでで、水着を持ってプールを使っている。


「どうした?」

 

「前から疑問じゃったが、冒険の書の禁止事項を破ったものは、どうなるのじゃ?」

 

「よくぞ聞いてくれた」


 いつか話さないとと思っていたが、向こうから問いかけられない限りは話すまいと思っていた。言いふらすことでもないからな。

 

「【冒険の書】の掟は、知っているな?」


「自国の有利に働く行為を禁じる、また、書を使っての侵略行為も同様である。あとは……」


「自分で秘密を言いふらすことだ」


「そうじゃった、そうじゃった」


 まあ他人に言いふらしたくても、『冒険者のメモを取って、再び冒険の地に現れるようにするってだけ』と、勝手に口が動くようになる。文字で秘密を明かそうとしても、同様の現象が起きるのだ。


【冒険の書】なんて便利アイテムがあったら、どうにも他国へ攻め込みたくなるようで。

 まあ、ノーリスクで他国へ潜入できるんだもんな。

 そうやって禁を破り、王位を剥奪された暴君は、実は数しれない。


「彼らは、どうなったんじゃ?」

 

「全員、勇者によって討伐された。【魔王】としてな」


 魔王の正体は、冒険の書を悪用して神の手で王位を追われた元国王たちだ。


「これまで冒険の書を侵略行為に使おうとして、神によって王位を剥奪された者、総称して【魔王】は、この世界が想像されて以来、約一二人が確認されている」


 なぜ「約」なのかというと、一度倒されたヤツらが【あっぷでーと】、【りめいく】、【りますたー】などという謎の技術によって、強化されて復活させられるからなのだ。

 別の世界線で暴れているケースも、見られるという。


 オレも冒険者から、「〇〇という魔王を、別の世界で倒してきた」という話を最近聞いたっけ。


 彼らはなまじ強い力を持ってしまったがゆえに、冒険者たちにとって【いい的】にされているらしい。


 冒険者からすると『強くていい素材を落とす、敵キャラクター』というイメージしかないだろう。


 だが、復活させられる側からすると、体のいい罰ゲームに過ぎない。


「これから、会わせてやる。つい最近、魔王になっちまったやつがいるんだ。『マーヴェリック』って名前だったんだが……」


 ソイツは過去の名前を捨てさせられ、今はとある地域に封印されている。


「今は魔王【ヴェーマ】と名乗り、さる地域に君臨している」


「ではその方も、討伐されたのかえ?」


「おそらく、そのうちな」

 

 こうしてオレは、フィオを連れて旅立つことにした。一三人目の魔王、元マーヴェリックに会うツアーを敢行するのだ。


「今、冒険者がこの地にやってきているのも、どうもそのヴェーマ目当てのようだ」


「ふむ。我々が倒してはいかんのかえ?」


「ダメなんだ」


 魔王を倒すことも、この世界の神からすると【侵略行為】に当たるらしい。


「なんと! 世界の平和を守ろうとしているのに、侵略とな!」


「仕方ねえだろ。オレたちこの地に生きている者たち以外に倒してもらわないと、世界に平和はやってこないんだよ」


 ただ、会いに行くこと自体はOKだという。この辺りは、実にアバウトだ。


「必要最低限の装備で、魔王城に向かうぞ」


「戦闘行為はよいのじゃな?」


「魔王を倒さなければな」


 オレが行っても、ヴェーマの子分とは戦闘にならない。道を開けてくれる。


 しかし、今回はフィオを連れているのだ。もしかすると、フィオにはオレと同じ制約が守られない可能性がある。


 そうなったら、オレがフィオを守るしかない。


 フィオだって、強いけどな。魔法に関しては、オレより強いくらいだけど。




 日を改めて、魔王城にたどり着く。


「魔王城にマッピングしていた冒険者がいて、ちょうどよかったわい」


「ああ、もう魔王ヴェーマは攻略されてしまいそうだな」


 といっても、あいつも手強いけどな。


「トラップじゃ。バリアを張っておるぞ!」


 魔王城の門を抜けて、ダメージ床をフィオが指さした。


 この床は【バリア床】といって、足を踏み入れると体力を大量に持っていかれる。

 

「そのバリアはブラフだ。道はこっち」


 門には入らず、脇道を通っていく。


「この先に階段が……あったあった」


 見るからに怪しい花壇を動かすと、尖塔に扉が浮かび上がった。


「ヴェーマはこの先だ。あの門は、ただのカモフラージュなんだよ」

 

 オレとフィオは、尖塔内の階段を昇っていく。登りきった後で、長い廊下に出た。


「ギョギョ! 敵発見!」


 ヴェーマの配下らしき魔物が、オレたちに気づく。


「ソロガス・キヤネン殿でしたか。お通りを」


 しかし、オレが誰だかわかると、すぐに道を開けてくれた。


「人間の女、お前は通す許可はおりていない」


「彼女はオレの妻の姪だ。最近国王になった子だ。通してもらう」


「ソロガス殿の、お連れでしたか。ならば、お通りください」

 

 今度こそ、魔物にはどいてもらう。


 尖塔の廊下を抜けて、王宮の最上階へ。


「来たぜ。マーヴェリック。いや、今はヴェーマか」


「ソロガス。またノコノコと……」


 黒い鉄のヨロイに身を固めた男性が、オレに視線を向ける。

 いや、ヨロイに身体を蝕まれているというか。

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