第26話 先代国王のおひとりさま趣味
オレは先代の国王がなにをしていたのか、古い日記帳で確かめることにした。
おひとりさまっていったって、ネタは頭打ちになる。
他の国の国王なんかも、どうやって自分時間を過ごしているのか。また、その秘匿方法は?
「ふーむ。【魔王】となったヤツも、いるんだな」
【魔王】……【冒険の書】を悪用したものは、問答無用でアイテムを没収される。
他所の国を侵略しようとしたり、名産品を自国で転売したり。
あまり、褒められたものではないな。
転売なんて、タダのパクリ行為である。自分の国が貧窮にあえいでいて、市民に分け与えたならともかく。
「で、オヤジはどうしていたのか、と」
ふむふむ。あまりよその国へ出かけたって、記録はないな。出先は、オレとたいして変わらないのか。
そのかわりに現れたのは、大量のアルバムである。
素人ながら、被写体を大切にした、見ていて心地の良い写真ばかり。
オレたち家族を写したものの他に、風景写真がやたらとある。
「ああ、そうだった。そうだった。オヤジは、写真が趣味だったんだよな」
先代国王は生前、「自分が国王でなかったら、写真家になりたかった」と話していた。
こういう趣味があったら、また楽しかっただろうな。
写真撮影か。いい趣味してるねー。
オレはあんまり、得意ではなかったけど。
第一、国王になってから、いろんな趣味を集めている感じである。料理や釣り、温泉巡りなど。
「ん?」
これは、建物か。なにかの小屋のようだけど。
「土地は、見覚えがあるぞ」
たしか、アルマーじゃないか? 温泉郷がある場所で、父のアルバムにもよく出てくる。
小屋の写真は、内装や外壁の画像が大半だ。しかし、人が住んでいる気配はない。
「ときどき、そこをネグラにしていた盗賊と戦った」という記録も、アルバムに記載されている。
「あれか、廃墟探索か!」
こんな趣味が、あったとは。おそらくカメラ趣味がこうじて、廃墟の探索まで発展したんだろうな。
カメラか。それも楽しそうだ。
だが、オレはもう一つやってみたいことが。
「そうだ。家を建てよう」
自分だけの隠れ家を、自分だけで作ってみる。
これって、最高のぜいたくなのではないか?
オレの建築スキルなんて、王都でちょっくら壁を修理したり、孫にせがまれて犬小屋を作るといった、日曜大工レベルである。
とはいえある程度まで鍛えたら、家を建てられるくらいにまで作れるのでは?
できた家は、掘っ立て小屋でもいい。作ってみれば、それなりの家が作れるはずだ。スキマ風が、入ってきてもいい。ずっと、住むわけではないからな。気になってきたら、改装すればよいのだ。
場所は、やっぱアルマーだな。
よし。そうと決まれば、スキルアップしてやろうじゃん!
「誰か!」
「はっ。ここに」
大臣が、オレの呼びかけに現れた。
「なにか建てる仕事などはないか? 橋をかけるとか、高台を修理するなどだ」
「近々、橋の修理を致します」
「オレにやらせろ」
大臣は、オレの言葉にクビをかしげる。
「配下の者に、やらせます。ソロガス陛下自らがお出ましになるような件では」
「建築スキルを、鍛えようと考えているのだ。万が一王宮の改装があった場合、オレがスキルを持っていたほうが、スキにできるではないか。建築士とも、相談がしやすい」
これ、実は本当のことだ。実際、王宮の改装は近いうちに行われる。
「ははあ。いやはや、すばらしいご提案だと思います。ですがお手を煩わせるようなことは」
「オレが、やりてえって言ってるんだ。やらせてくれ」
「しょ、承知! さっそく、ご案内いたします!」
大臣に連れられて、橋の改造予定地に到着。
たしかに、狭い。いつ頃の建造物よ、これ。
「先代国王の代に作られたものでもあり、『伝統を残したい』という意見と、『頻繁に使うのに古すぎて不便』という意見が入り混じっておりまして」
「改造だ! 問答無用である」
先代をリスペクトするなら、記念碑でも建てておけ。
「写真家を呼べ。改装前の記録を、看板でも置いて残しておけ」
それだけやっておけば、先代国王のファンも納得するだろうよ。
改築前の古い橋の写真を撮らせて、改築を始める。
「【建築】スキル発動!」
新品の丸太を、モリモリと重ねていった。
「バランスをお考えくださいね、陛下」
「わかっておる」
ちゃんと建築士からアドバイスを受けながら、自分で魔法を使って橋をかけ直す。
「よし、こんなもんか?」
「お見事にございます。修正するつもりでしたが、杞憂でしたな」
建築士もご満足の様子だ。
ひとまず、スキルアップはまずまずのようである。
さて、【冒険の書】でアルマーに飛び、手頃な土地を探そう。
今は昼間である。昼食の時間を、ズラしたのだ。
なるべく商業ギルドの空いている時間に、飛ぶためである。
アルマー内の、商業ギルドへ。
「おや、あなたは?」
「こんにちは。旅の方。いつぞやは、お世話になりました」
この前、オレが助けた貴族の男性ではないか。
貴族の男性は、商業ギルドの制服を着たお姉さんと話していた。
あんとき馬車の中にいた女性は、ギルドのえらいさんだったのか。




