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おひとり国王サマ ~毎日忙しい国王は、スキル【冒険の書】で冒険者の旅先へ一瞬でワープして日帰りプチ家出する~  作者: 椎名 富比路
第七章 星の裏側で、モーニングを

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第21話 茶粥で一息

 泥酔とはいかなくても、千鳥足でお店にたどり着く。


「ごめんよ。空いているかい?」


 完全に、声がガラガラだ。ヨッパライ客だから、追い出されかねん。


「どうぞっ」


 ハキハキしたおばあちゃんが、モンペ姿で出迎えてくれた。

 酔っ払いが相手なのに、気前がいい。


「悪い。少し酒が入っている」


「そんなの、いつものことですよっ。すぐお持ちしますね」


 何もオーダーしていないのに、おばあちゃんは厨房へ引っ込んでいった。


「ウチは朝帰りのお客さんも、多いんですよ」


 もうおばあちゃんは、調理を開始している。

 

 メニュー表を見ると、お茶粥しかない。


 だからか。


 冬季限定メニューなども、置いていない。


 お茶粥と、漬物と、味噌しかないとは。やたら、攻めてるなあ。

 

「お茶です。もう少しお待ちを」


 温かいお茶を、持ってきてもらった。

 

 うん。これはメシが進んじゃうお茶だ。


「はいどうぞー」


 でました。お茶粥が。


 丼いっぱいに、お粥が注がれていた。


 本当に、お茶で煮ただけの粥である。これが本当にうまいのか……。


「いただきます」


 思案するより、行動あるのみ。まずは、なにもつけずに食うぞ……。

 


「うっま」



 これは見事なまでに、お茶の粥だ。お茶がウマいのか、コメがウマいのか。その両方だろう。何も味付けしていないのに、うまかった。


 カゼのときに食った白粥とは違って、トロミがない。塩気も、漬物だけで取れというストイックさ。


 なのに、なんだこの多幸感は?


 初めて食べたのに、どこか懐かしい。


 これに、塩の効いた漬物を合わせると……。


「おっほ!」


 シャリシャリと鳴るタクアンが、甘くなった。

 米が溶けたお茶と合わさったことで、塩気がマイルドになっている。


 しょっぱい葉っぱが、またうまい。


「この、超辛い葉っぱはなんだ?」


「大根の葉で、ございます」


 これが、大根の葉かっ! こんな形をしていたとは。


 こっちは、知っているぞ。梅干しだ。


 デカいなあ。中型魔物の魔石くらいあるぞ。しかも、見るからに辛そうだ。これで、めちゃ体にいいっていうのだから、漬物文化は計り知れん。


 うん。合う合う。お茶漬けにはこれだろ、と言わせんばかりの自己主張さがいい。酸味が強いが、これがお茶に合う。


 食えば食うほど腹が減るって、どういう原理なんだ? なんかもう、スイスイ進んでしまう。ただのお茶の粥なのに、全然やめられん。


 飲んだ後だから、余計にこの味がありがたかった。マジで、オレの全身が求めていた味である。


 あっという間に、一杯めが空に。


「すまん。かわりをいただけるか?」


「はい。おかわりは自由ですからね」


 周りを見ると、オレ以外の客も何杯目かのお代わりをしていた。


 やっぱり、うまいんだ。


 二杯目は、味噌を足してみる。


 白味噌と、赤味噌があるのか。


 たしか、味噌と混ぜて食えと、言っていたな。


 まじぇまじぇ……いただきます。


「おおおおお!」


 うまい!


 味噌汁とはまた違った、奥行きのある食感である。


 これは、さっきの漬物よりもサラサラと終わってしまった。うますぎだろ、これ。


 白味噌だけで、二杯も食えちゃった。


 続いて、赤味噌をいただこう。


 あーこっちは、パンチが強いな。こちらも二杯食らう。


 それにしても、止まらん! やばすぎる。何杯目なんだろう、今。


 しかし、急に満腹感が襲ってくる。


「おおっふ。これで、ごちそうさまとしよう」


「ありがとうございました」


 代金を払い、店を後にした。


 いやあ、最高すぎる。お茶粥は、ああいう味なのか。


 イワシの塩焼きも卵焼きも、なにもない。お茶粥だけで、勝負する店とは。


 これは、リピートしちゃうやつだ。


 


 次の日から、オレはモーニングと茶粥をハシゴでいただくことにした。


 甘いものを抑えた日は、運動をした後でアズキトーストを食らう。


 過労でストレスがマッハな時は、アズキに癒やされる!

 脳が糖分を欲しているのが、全身でわかるぞ。たんとアズキを、食らうがいい。バターと合わせても、いい感じだぞ。甘いとしょっぱいが交互にやってきて、格別の味だ。


 で、ハッシュポテトさ!

 シャッキシャキという食感が、オレをトリコにする。ああ、うまい。こちらはなにもたさなくても、十分にうまかった。人を飽きさせない、絶妙な塩加減よ。

 

 

 飲んだ日の後は、お茶粥と決めることに。


 お茶粥は、社交界で疲れた胃に優しい! ちょっと腹が空いたなってときの、ちょうどよさ! あと味噌の魔力! 漬物の食感ときたら! どれも甲乙つけがたい!


 味噌もアズキも、どっちもマメなんだよなあ。豆を潰しただけの食品で、ここまで味が変わるとは。


 これがまた、たまらんぞい。


 現地では朝なのに、夜中に満腹で帰って来るとか。時差ボケがやばすぎるな。今何時だろうとか、時計を確認してしまう。



 ただ、当日の朝を迎えると、さして食欲がわかない時があるんだよなあ。さすがに食いすぎてる。


「あなた、体調でも悪いのでございますか?」


「いや。すこぶる体調はよい。朝食がほとんどいらんくらいだ」


「それは、体の調子が悪いというのです。白粥でもいただいては、いかがですか?」


 朝の白粥ってのも、あるな。また別の地方に、あるらしいが。あっちは肉もいっしょに煮込むんだっけ。


 そっちも、試さねば!


「あら、なんだか、顔色が戻ったような気がしますわね」


「だろ?」


 オレは毎朝、絶好調なので。


 

(第七章 おしまい)

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