第四話 蒼狼の覇王
第四話 蒼狼の覇王
第一回戦終了後。
六人いた召喚士は五人になった。
敗北したルークとアインシュタインは光となって消え、闘技場から退場していた。
だが観客達の注目は既に次へ向いている。
特に一人。
銀髪の少年へ。
「フェルディア様だ!」
「優勝候補!」
「蒼狼の継承者!」
歓声が響く。
ユウマは観客の反応で察した。
かなりの有名人らしい。
「なるほど」
「気付いたか」
信長が笑う。
「強いぞ、あやつ」
「みたいだな」
英雄が強いのではない。
召喚士が強い。
そこが重要だった。
◇
神が再び空へ現れる。
『第二回戦を開始する』
文字が浮かぶ。
対戦カード。
神代ユウマ 織田信長
VS
フェルディア チンギス・ハン
闘技場が揺れた。
大歓声。
誰もが望んでいた試合らしい。
無理もない。
覇王対覇王。
戦国の魔王と世界最大の征服者。
歴史を代表する二人である。
「面白くなってきたな」
信長が笑う。
既に戦意は十分だった。
◇
フィールドへ降り立つ。
向こうにはフェルディア。
その後ろには巨大な英雄が立っていた。
チンギス・ハン。
身長二メートルを超える巨体。
狼の毛皮。
巨大な軍刀。
そして圧倒的な威圧感。
王だった。
覇者だった。
歴史上最大の帝国を築いた男だった。
『ほう』
チンギス・ハンが笑う。
『貴様が織田信長か』
「そうじゃ」
『会えて嬉しいぞ』
魔力がぶつかる。
大地が震える。
観客席がどよめいた。
まだ戦っていない。
それなのに凄まじい。
◇
だが。
ユウマの視線は英雄ではなく召喚士へ向いていた。
フェルディア。
余裕がある。
焦りがない。
そして。
何より。
チンギス・ハンとの距離感がおかしい。
「あいつ」
ユウマが呟く。
「歴史知識持ちか」
信長が笑う。
「正解じゃ」
やはりだ。
前のルークとは違う。
アインシュタインの時は色々と曖昧だった。
だが今回は違う。
フェルディアは理解している。
英雄を。
逸話を。
伝説を。
◇
戦闘開始。
神の合図と同時だった。
フェルディアが叫ぶ。
「征服王チンギス・ハン!」
魔力が爆発する。
ユウマが目を見開いた。
正しい。
英雄解放だ。
フェルディアは続ける。
「モンゴルを統一!」
大地が揺れる。
「騎馬民族史上最大の英雄!」
風が吹き荒れる。
「ユーラシアを征服した蒼狼の子!」
轟音。
チンギス・ハンの背後に巨大な狼が現れた。
観客席が総立ちになる。
信長も少し驚いていた。
「ほう」
『良い召喚士を引いたな』
チンギス・ハンが笑う。
そして能力が発動する。
《蒼狼の大征服》
大地が割れる。
そこから現れたのは。
騎兵。
騎兵。
騎兵。
無数の騎兵。
五百。
千。
二千。
数え切れない。
モンゴル騎馬軍団だった。
「軍勢召喚!?」
「反則だろ!」
「こんなのどうやって倒す!」
観客席が叫ぶ。
ユウマも焦った。
強い。
予想以上だった。
◇
「どうする?」
信長が楽しそうに言う。
「焦ってないな?」
「負ける気がせん」
即答だった。
覇王である。
ビビるという選択肢が存在しない。
「なら作戦だ」
ユウマは歴史を思い出す。
チンギス・ハン。
最強の征服王。
しかし。
無敵ではない。
歴史上の全英雄に言えることだ。
誰にも勝ち筋はある。
「信長」
「なんじゃ」
「お前が勝った理由を思い出せ」
信長が目を細めた。
そして笑う。
獰猛に。
「なるほど」
理解した。
◇
モンゴル軍が突撃してくる。
大地が揺れる。
まるで津波だった。
その瞬間。
ユウマが叫ぶ。
「織田信長!」
魔力が爆発する。
「既存の戦術を破壊した革命家!」
炎が広がる。
「鉄砲運用の先駆者!」
火縄銃が出現する。
「数ではなく戦術で勝利した英雄!」
信長の目が光る。
そして。
能力発動。
《革新者・織田信長》
発動と同時に。
無数の砲台が現れた。
観客席が静まり返る。
「砲台?」
「そんな逸話あったか?」
当然だ。
これはただの再現ではない。
信長の本質。
革新。
新技術の利用。
既存概念の破壊。
その象徴だった。
◇
ドォォォォォォォォン!!
砲撃。
戦場が吹き飛ぶ。
騎兵が消し飛ぶ。
大地が裂ける。
モンゴル軍が崩壊する。
フェルディアが初めて焦った。
「なっ!?」
「逸話の応用だ」
ユウマが言う。
「英雄は史実の再現だけじゃない」
信長が笑う。
「余の本質は革新じゃ」
炎が吹き上がる。
魔王の覇気が空を裂く。
チンギス・ハンも笑った。
戦場のど真ん中で。
本当に楽しそうに。
『面白い』
両者の覇気が激突する。
闘技場そのものが揺れ始めた。
そして。
ユウマはまだ気付いていなかった。
この戦争の裏側で。
神が静かに彼を見ていることを。
まるで。
値踏みするように。




