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第二話 英雄の価値は知識で決まる

 第二話 英雄の価値は知識で決まる


「これより第一回戦を開始する」


 神の声が闘技場へ響き渡る。


 六人の召喚士。


 六騎の英雄。


 生き残れるのは一組だけ。


 観客席から歓声が上がる。


 英雄召喚戦争の開幕だった。


「組み合わせを発表する」


 空中に巨大な文字が浮かぶ。


 第一試合


 神代ユウマ 織田信長


 VS


 魔導学者ルーク アルベルト・アインシュタイン


 ユウマは眉を上げた。


 いきなりアインシュタインか。


 厄介な相手だった。


 戦闘力は低い。


 しかし知能は英雄の中でも最上位。


 扱う能力次第では危険極まりない。


「どう見る?」


 隣の信長へ尋ねる。


 信長は不敵に笑った。


「貴様はどう見る」


 試すような視線。


 ユウマも笑う。


「勝てる」


「理由は?」


「相手はアインシュタインを理解してない」


 その答えに信長が満足そうに目を細めた。


 ◇


 闘技場中央。


 巨大なフィールドが展開される。


 向こう側にはローブ姿の老人。


 魔導学者ルークが立っていた。


 その背後にいるのは白髪の青年。


 相対性理論の提唱者。


 二十世紀最高峰の天才。


 アルベルト・アインシュタイン。


 歓声が上がる。


「アインシュタインだ!」


「天才英雄!」


「無敵じゃないか!」


 だがユウマは首を横に振った。


 違う。


 本当に恐ろしいのは名前ではない。


 逸話だ。


『開始』


 神が宣言した。


 瞬間。


 ルークが叫ぶ。


「アインシュタイン! 知恵の力で奴らを潰せ!」


 ユウマは思わず頭を抱えた。


 駄目だ。


 理解していない。


「なんだそれ……」


 信長も呆れている。


 アインシュタイン本人まで困惑していた。


『具体的には?』


「え?」


『私に何をさせたいのだね』


「そ、それは……」


 ルークが固まる。


 アインシュタインは剣士ではない。


 将軍でもない。


 王でもない。


 何ができるか知らないまま召喚してしまったのだ。


 そして。


 それが致命的だった。


 ◇


「今だぞ」


 ユウマが信長へ告げる。


「言われんでも分かるわ」


 信長が前へ出た。


 魔力が噴き上がる。


 真紅の炎が世界を染める。


「説明してやろうか」


 信長が刀を構える。


「英雄の力とは何かを」


 瞬間。


 六本の火縄銃が空中へ出現した。


 観客席がどよめく。


 ルークも驚愕する。


「な、何だその数は!」


 普通の英雄より明らかに強い。


 その理由はいくつもあった。


 ユウマが叫ぶ。


「織田信長!」


 魔力が膨れ上がる。


「戦国時代に鉄砲の有用性へいち早く気付いた革新者!」


 炎が増える。


「長篠の戦いで三段撃ちを行い武田騎馬軍を撃破!」


 さらに膨れ上がる。


「天下布武を掲げた戦国最大の覇王!」


 轟音。


 信長の魔力が何倍にも膨張した。


 観客席が悲鳴を上げる。


 戦場全体が震える。


『ほう……』


 アインシュタインが感心したように呟く。


『真名解放か』


「なに?」


 ルークが慌てる。


 アインシュタインは説明した。


『我々英雄は知られることで強くなる』


 ユウマが頷く。


 その通りだった。


 英雄とは伝説だ。


 伝説は語られてこそ力になる。


 しかし。


 この世界の召喚士達はそれを知らない。


 いや。


 知識が無い。


 だから英雄の本来の性能を引き出せない。


 ◇


「撃て」


 信長が指を鳴らす。


 六丁の火縄銃が咆哮する。


 轟ッ!!


 弾丸の嵐が襲う。


 ルークが慌てる。


「アインシュタイン!」


『仕方ないか』


 白髪の英雄が指を動かした。


 その瞬間。


 弾丸が停止する。


 空中で。


 完全に。


 観客席がどよめいた。


「止まった!?」


「時間が止まったぞ!」


 ユウマは冷静だった。


 やはりだ。


 アインシュタインの本質は知識。


 そして相対性理論。


 だからこそ。


「能力名」


 彼は静かに告げる。


「相対性支配」


 アインシュタインの目が見開かれる。


『驚いた』


 空気が変わった。


 初めて英雄本人が興味を示した。


『君は私を知っているのか』


「歴史オタクなんで」


『なるほど』


 アインシュタインは笑った。


 嬉しそうに。


『久しぶりだよ』


 そしてルークを見る。


 少しだけ残念そうに。


『私を理解する召喚士に会えたのは』


 ルークが凍り付く。


 ◇


 ユウマは確信していた。


 勝てる。


 なぜなら。


 アインシュタインは強い。


 だが。


 召喚士が弱い。


 英雄召喚戦争において最も重要なのは英雄の格ではない。


 理解者かどうかだ。


 信長も気付いている。


 アインシュタイン本人も。


 そして。


 ルークだけが理解していない。


「終わらせるぞ」


 ユウマが歴史書を閉じるような仕草をした。


 それを見た信長が笑う。


 獰猛に。


 覇王らしく。


「よかろう」


 炎が天を覆う。


「天下布武」


 真紅の魔法陣が展開される。


 信長最大の逸話が。


 ついに解放される。


 闘技場全体が震え始めた。

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