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それからまた2日が過ぎたころ、とうとう<アイテム ボックス>のLv.がMAXとなった。
Lv.9の時点で、世界中のどこでもアクセスできるようになっていたため、最後はどこだろう。
元の世界とかかな?
などと考えながら<アイテム ボックス>Lv.MAXで新しく可能となった場所へアクセスした。
表示された場所は【天界】。
「マジか……」
さすがにまずいのではないか、との考えが頭をよぎったが、好奇心には勝てず、【天界】のアイテムにアクセスを試みる。
【天界】には宝物庫のようなものはなかったが、神殿があり、その台座には鏡のような輝く神具が乗せられていた。
ミゲルはその神具を視て息を飲む。
直接見てはいなくとも、感じるその圧倒的な存在感。
用途はわからずとも、それを手にするものは圧倒的な力を得られるであろうことが容易に想像できる。
寝不足の頭で、ミゲルはこの神具を取るべきか悩む。
通常の働きを期待できない脳は、ミゲルにこの決定を伝達した。
このスキルは、この神具を手にするために神が俺に与えたのだ、と。
そんな愚にもつかない妄想に従い、ミゲルを惹きつけてやまない輝く神具を手に入れようとしたとき……泣き声が聞こえた。
声は、宿屋の1階、食堂のほうだ。
神具は気になるが、いまはその泣いている声、リリアンのことが気になった。
<アイテム ボックス>の使用を止め、食堂に様子を見に行くと、テーブルで泣き伏せっているリリアンを、母でありこの宿の主であるリラが慰めている様子が目に入った。
「どうしたんですか?」
リリアンの背中をさすって慰めているリラに声をかける。
「あら、ごめんなさいね。ミゲルさんにはあまり関係ないのだけど、娘のぬいぐるみが無くなってしまいまして」
関係はある。大ありだ。
「そんなに大事なぬいぐるみなんですか?」
「うちの旦那が、この子の10歳の誕生日に買ってあげたんだけど、そのあとすぐに亡くなっちゃってね。娘にとっては旦那の形見みたいなものなのよ」
「……パパが、最後に買ってくれた、ぬいぐるみ、なの」
リリアンが、止まらない涙でしゃくり上げながら、気丈に答える。
「パパがね、ベッドで、話してくれたの。リリアンがおおきくなるのを、本当はパパが見たかったって。
でも、それができないから、熊のぬいぐるみの中から、見守ってるからね、って」
父が亡くなった話は、ある程度リリアンから聞いている。
可愛い盛りの娘。そしてその成長を見られずに、残してこの世を去る無念は、一体どれほどのものだったのだろうか。
またその娘も、父の突然の死を、何年も経たないうちに心の整理がつけられるものだろうか。
「だから、私もパパに約束したの。熊のぬいぐるみ、大事にするから。いっぱい、いっぱい大きくなるから。ぬいぐるみの中から見ていてねって」
そんな、約束が。
「でも、なくしちゃった! 熊のぬいぐるみ、パパのぬいぐるみ! 大事にするって約束したのになくしちゃったの!」
そして再び、声にならない泣き咽ぶ叫びが、宿の中に響き続けた。
母のリラに「あとは私が慰めておきますから。ちょっと声が響いちゃうのだけは、許してくださいね」と言われ、ミゲルは部屋に戻った。
そのまま椅子に座り、うなだれる。
<アイテム ボックス>を使用し、収納したままの熊のぬいぐるみを取り出した。
にこにこ顔のかわいい熊のぬいぐるみの目が、今だけはミゲルを責めているように見える。
調子に乗っていた。忘れていた。考えないようにしていた。
身に余る力を手に入れて、驕り昂ぶり、大事な「何か」を見失っていた。
「そうだよな……みんな、どれも、誰かにとっての大切なものなんだよな……」
転生チートだと。これから優雅なぜいたく三昧の生活が待っていると。想像もつかない素晴らしいものが待っていると。
「そんなわけない。だって」
これは、
「ただの泥棒だもんな」
これからどうするか。
少なくとも、働かない今の頭で考えるべきではない。
贖罪は、明日から。
読んでいただきありがとうございます。




