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2日ほど過ぎ、部屋からまったく出てこないミゲルを心配したのか、宿屋の娘のリリアンがミゲルの部屋のドアを叩いた。
「ミゲルさん、だいじょうぶ? ずっとお部屋から出てこないけど、病気なの?」
心配そうな声が聞こえてくる。
無理もない。宿屋の手伝いどころか、食事もせずに部屋にこもっていたのだ。当然、何かあったのではと心配される。
「す、すまない、リリアンちゃん。ちょっと体調が悪くてね……」
ミゲルはドアを開け、顔を見せる。
その顔はげっそりとしており、目の下にも隈がある。
ここ2日は睡眠もとっていないし、携帯食を少しかじった程度の記憶しかない。体調が悪いことは間違いない。
「さすがにお腹も空いてるんだ。何か食べるものはあるかな?」
「ちょ、ちょっと待ってて! 今何か持ってくるから!」
ミゲルのやつれ顔を見たリリアンは、慌てて食堂へと降りていき、しばらくしてスープの鍋と食器を持ってきた。
「簡単な料理でごめんなさい。私が作れるのはこのくらいだから……」
「ううん、おいしそうだよ。食べる人のことも考えて、柔らかく煮込んである。リリアンちゃんは、優しいね」
「そ、そんなことないよ。当然だよ」
謙遜しつつも、嬉しそうに答えた。
しかし、そんなリリアンの表情が曇り、恐る恐るといった様子で聞いてきた。
「ずっとお部屋にいたミゲルさんに聞いても仕方ないかもしれないけど、私の熊のぬいぐるみ、知らないかな?
何日か前から見つからなくて……」
悲しそうな顔で聞いてくる。
そのぬいぐるみには心当たりがある。
<アイテム ボックス>がLv.2になったときに、試しに収納したものだ。
Lv.上げのために宿屋のモノを取ったり戻したりしていたが、戻し忘れていたようだ。
しかし、ここですぐに戻したら、関連していることを白状したようなものだ。
「ごめん、わからないや。もし見つけたら教えるね」
「うん、よろしく……」
優れない顔色のまま、答えるリリアン。
罪悪感も手伝い、ミゲルはリリアンの手に銀貨を数枚握らせた。
「しばらくの宿代と食事代。あと、しばらく宿の手伝いはできなそうだから、多めに渡しておくよ」
「こ、こんなに!? 1か月分はあるよ。いきなりどうしたの、こんなお金?」
「ちょっと仕事を頑張ったんだ。頑張りすぎて、体調崩しちゃったけど」
完全な嘘というわけではない。
どこかの誰かの金庫から、お金を取り出したことが仕事というのかは疑問ではあるが。
「まだしばらくはダメそうだから、部屋で休んでるね。あ、食事だけは欲しいかな」
「わかったわ。お大事にね」
リリアンが去っていくのを確認し、ミゲルはドアを閉めた。
ミゲルの部屋は、相変わらずの殺風景。
唯一の机にスープの鍋を置き、胃がびっくりしないようにゆっくりと食べながら、ミゲルはにやける顔を抑えることができなかった。
部屋の中には何も置いていないが、今、<アイテム ボックス>の中には大量の財宝が収納されていた。
今の<アイテム ボックス>のLv.は7。
Lv.5になった頃には、この町のどのモノにもアクセスできるようになった。
Lv.7の今は、この国のどこにでもアクセスできる。
ここまでにいくつか検証したが、まず<アイテム ボックス>は、アイテムがある部屋などの詳細な配置はわかるが、人がいるかどうかはわからない。
おそらく、アイテムに特化したスキルだからであろう。
なお、逆にアイテムであれば、すべての障害を排してアクセスし、収納できる。
物理的にも、魔法的にも、この国で一番厳重である王宮の宝物庫からも簡単に宝剣を回収できた。
まあ、使い道もないし、売れるはずもないため、すぐに元に戻したが。
ちなみに、「目の前のアイテムが突然消えた」というおかしな現象が起きていると、一部の人々の間では噂になっていたが、ミゲルはそれを知ることはない。
通常、スキルのレベルはこんなに早く上がらない。
一生を費やして1つのスキルを極められるかどうかというのが通常だ。
しかし、このスキルはそんな常識すら関係ないとばかりに、Lv.が上がり続ける。
Lv.MAXになった頃には、世界中のどこからでもアイテムを取れるのではないだろうか。
「これが転生チートってやつか。一体俺は前世でどれだけ善行を積んだんだろうな?」
前世で読んだであろういくつかの物語を思い出し、ミゲルはこれからの自分の輝かしい未来を夢想しながら、眠りに落ちた。
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