同じ手袋
十二月二十三日。録音のない貴重な休日、俺は澪と、隣駅の商店街で待ち合わせた。
「ごめん、待った?」
「いや、俺も今来たところ」
実際は、三十分前から来ていた。ただ、それは黙っておくことにした。
「今日は、どこに行きたい?」
「えっとね、特に決めてないの。ユウと、のんびり歩きたいなって」
それだけの言葉で、頬が熱くなるのを感じた。冬の空気が冷たくて、助かった。
保科さんの「変な噂だけは立てない」という条件は、忘れていない。学校の連中が来そうにない隣駅の商店街を選んだのも、そのためだった。
*
商店街のクリスマスの飾りは、どれも少し古びていて、それがかえって温かかった。屋台のたい焼きを半分ずつ分け合い、ゲームセンターの小さなぬいぐるみに、二人で百円を三回ずつ投入して、結局一つも取れなかった。
「ユウ、百円、また飲まれたね」
「あれは、クレーンの方が悪い」
「自動販売機のときと、全く同じこと言ってる」
澪は笑いながら、俺の肩を軽く叩いた。その笑顔は、ここ最近見た中でも、ずっと自然で、楽しそうだった。
*
夕方、人通りの少ない川沿いのベンチに並んで座ると、澪が小さな紙袋を差し出してきた。
「あのね、これ。クリスマスプレゼント」
「え、俺にも?」
「当たり前でしょ。開けてみて」
袋の中には、深い紺色の手袋が入っていた。柔らかくて、あたたかい。
「ありがとう。……実は、俺も」
鞄の中から、少し大きめの包みを取り出す。澪が目を輝かせて、そっとリボンを解いた。
中から出てきたのは、淡いグレーの手袋だった。
一瞬、二人の間に、奇妙な沈黙が流れた。同じブランドの、同じデザインの手袋。色だけが、違っていた。
「……え、これ」
「うん。まったく同じやつだ」
「あはは、なんで同じの選ぶの!」
澪が、お腹を抱えて笑い出した。つられて、俺も笑ってしまう。
「お揃いってことで、いいんじゃないか」
「うん。ちょうど、いい」
澪は嬉しそうに手袋をはめて、俺の手を取った。
「あったかい」
「そりゃ、そうだろ」
夕暮れの川沿いで、二人並んで、お揃いの手袋をはめて座っていた。大きな言葉はいらなかった。ただ、隣にいてくれる、それだけで十分だった。
第59話まで読んでくださって、ありがとうございます!
悠人と澪、二人だけのクリスマス前日を描きました。同じ手袋を選んでしまうという、ちょっとした偶然も、この二人らしい愛おしさだと思っています。
いつもブックマーク・評価をありがとうございます。次話もお楽しみに。




