クリスマス会のプレゼント交換
終業式の日の午後、教室では、三上主催のクリスマス会が開かれていた。
「それでは、ルールを説明します。各自、千円以内のプレゼントを用意して、くじ引きで交換する。誰が何を用意したかは、開けるまで秘密だ」
黒板の前で説明する三上は、やはり司会進行の腕章をつけていた。
「まだ持ってたのか、それ」
「応援団の備品は、卒業まで借りておくことにした」
「返せ」
一方、健人はなぜかサンタクロースの赤い帽子をかぶって、教室中を駆け回っている。
「メリークリスマース! みんな、楽しんでるかー!」
「健人、帽子がずり落ちてる」
「え、嘘、うわっ」
つまずいて机にぶつかり、積んであったお菓子の山を、見事に崩してしまった。
*
くじ引きの結果、プレゼントが次々とクラスメイトの間を回っていく。俺のところには、手のひらサイズの可愛いペンギンのキーホルダーが届いた。
「相馬、それ、俺が選んだやつだ」
「三上、これ、お前の趣味か」
「ああ、癒やされるだろ」
意外な一面に、思わず笑ってしまう。
「じゃあ、次は雨宮さんだね。開けてみて」
澪の手元には、少し大きめの、きれいにラッピングされた包みが渡されていた。
「ありがとう。……あれ、これ」
包みを開けた澪の手が、ぴたりと止まった。中から出てきたのは、Rinの公式ロゴが入ったトートバッグだった。
「あ、それ、俺のだ!」
元気よく手を挙げたのは、サンタ帽の健人だった。
「公式のグッズ、保存用と使用用で二つ買っててさ。使用用の方を、思い切って出してみた!」
「……そ、そうなんだ」
澪の笑顔が、一瞬だけ引きつった。俺は必死に笑いをこらえながら、そっと目をそらす。
「実はそのバッグ、先着特典の限定デザインなんだぜ。雨宮さんも、Rinの曲、聴いたことあるだろ?」
「う、うん。すごく、好き」
澪は、そのトートバッグを両手で大切そうに抱きしめた。
「ありがとう、健人くん。大事にするね」
「おう! それ、大事に使ってくれよな!」
健人は誇らしげに胸を張った。自分の推しのグッズが、本人の手に渡ったことなど、夢にも思っていない顔だった。
*
会がお開きになったあと、廊下で澪が小声で呟いた。
「……どうしよう。自分のグッズ、もらっちゃった」
「大事にするって、約束したもんな」
「うん。でも、ちょっと複雑」
澪は、バッグを胸に抱えたまま、くすくすと笑った。
「でも、嬉しかった。あんなに喜んでもらえるなんて、思ってなかったから」
その笑顔には、これまでの苦労が、少しだけ報われたような温かさがあった。
第58話まで読んでくださって、ありがとうございます!
健人が引き当てたプレゼント交換の結果、いかがでしたでしょうか。本人のグッズが、本人の手に渡るという、ちょっと不思議な巡り合わせを描いてみました。
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