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打ち明ける相手

 期末テストが終わった翌日、澪のスマホに、保科さんから連絡が入った。


 放課後、あの公園のベンチで、澪は少し迷うような顔でスマホを見つめていた。


「保科さんがね、こう言ってたの」

「なんて?」

「発表の日の直前なら、本当に信頼できる人には、先に伝えてもいいって。ただし、絶対に口外しないという約束付きで」


 その言葉を聞いて、俺は少し驚いた。これまでの保科さんなら、もっと慎重に線を引いたはずだ。


「保科さん、変わったな」

「うん。私も、ちょっとびっくりした」


 澪は、手の中のスマホをぎゅっと握りしめた。


「ねえ、ユウ。健人くんと三上くんには、ちゃんと話したいなって思うの」

「俺も、そう思ってた」

「でも、怖いの。話した途端に、今までみたいな普通の友達でいられなくなっちゃうんじゃないかなって」


 その声は、震えていた。有名になることよりも、手に入れたこの穏やかな日常を失うことの方が、澪にとっては怖いのだと、俺はあらためて知った。


「大丈夫だ。あの二人なら」

「どうして、そう言い切れるの」

「健人は、一度信じたことは、頭から最後まで信じる奴だ。三上は、誰が何を話しても、ちゃんと受け止める奴だ。それは、澪も知ってるだろ」

「……うん」


 澪は少しだけ俯いたあと、小さく頷いた。


「じゃあ、発表の前の日に、二人に話す。ユウも、隣にいてくれる?」

「ああ。いつでも、隣にいる」


  *


 その夜、俺は自分の部屋で、猫のぬいぐるみに向かって、ひとり練習をしていた。


「えー、あの、健人、三上。実は、折り入って話があって」


 ……なんだか、たどたどしい。


「違うな。もっと自然に。『実は、雨宮はな――』いや、いきなりすぎる」


 ぬいぐるみは、当然のように何も答えない。


「そもそも、健人にどう伝えれば、素直に信じてもらえるんだ」


 しばらく考え込んだ末、俺は、ぬいぐるみに向かって、そっとため息をついた。


「――まあ、その時になったら、きっとなんとかなるよな」


 布団に潜り込みながら、俺は、窓の外で瞬く星を眺めた。大事な友達に、大事な秘密を打ち明ける日が、少しずつ近づいている。その日が、笑って迎えられるものであるように、と、静かに願った。

 第57話まで読んでくださって、ありがとうございます!


 今回は、「いつか友達に打ち明ける」という、物語の大きな目標が正式に動き出す回になりました。悠人のぬいぐるみ相手の練習シーンは、書いていて一番微笑ましい場面でした。


 いつもブックマーク・評価をありがとうございます。次話もお楽しみに。

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