期末テストと、勉強会
十二月の半ば、教室の空気が、すっかりぴりぴりしていた。期末テストが、いよいよ明後日に迫っていたのだ。
「悠人、頼む、一生のお願いだ。勉強会を開いてくれ」
放課後、健人が両手を合わせて頭を下げてきた。
「お前の一生のお願い、今月に入って何回目だ」
「三回目。でも、今回は本気度が違う」
見かねた三上が、横から助け舟を出す。
「相馬、俺からも頼む。こいつ、このままだと本当に追試だ」
「去年もそれで夏休みを潰してたもんな」
「その情報、今ここで暴露する必要あったか?」
結局、駅前のファミレスで、俺・健人・三上、そして澪の四人で勉強会を開くことになった。
*
「では、始めます」
ファミレスのボックス席で、澪が教師のような口調で宣言した。意外にも、真っ先に準備を整えたのは澪で、ノートと参考書が整然と並んでいる。
一方、健人はというと。
「すみません、ドリンクバーと、パンケーキと、ポテトと、あとチョコパフェを」
「勉強しに来たんだよな、お前」
「糖分がないと、脳が動かないんだよ」
三上が静かに溜め息をついた。
「俺が数学を教えるから、お前は黙って手を動かせ」
「はい、先生」
三上は、意外にも教え方が上手かった。健人が間違えても、決して怒らず、一つずつ丁寧に解き方を示していく。普段はお調子者の三上だが、こういうところは、ちゃんと頼れる奴だった。
*
勉強会が始まって一時間ほど経った頃。
澪が、問題集に向かいながら、小さな声で鼻歌を歌い始めた。本人は無意識だったのだろう。それは、あの川沿いの夜に聴いた、あの曲のサビだった。
俺は、思わずシャーペンの動きを止める。
「――なんか今の、アニメの主題歌っぽくない?」
健人が、パンケーキをフォークで刺したまま、ぱっと顔を上げた。
「雨宮さん、今のメロディ、何の曲?」
「え、あ、えっと」
澪の肩が、びくりと跳ねた。鼻歌が止まる。
「ちょっと、前にテレビで聴いたやつで」
「へえ、いい曲だね。雨宮さん、アニメ好きなんだ」
「うん、少しだけ」
澪は何とか笑顔を保ったまま、小さく頷いた。俺は内心で冷や汗をかきながら、そっと話題を変える。
「健人、パンケーキが冷めるぞ」
「あ、やべ、そうだった」
健人は何事もなかったかのように、再びパンケーキに向き合った。三上が呆れたように肩をすくめる。
「お前の集中力、本当に金魚並みだな」
「その言い方、地味に傷つくからやめろ」
テーブルの下で、澪がこっそりと、俺の袖を引っ張った。
『ごめん、ついうっかり』
と、声に出さず唇だけで伝えてくる。俺は小さく首を振って、笑ってみせた。
第56話まで読んでくださって、ありがとうございます!
期末テスト前の勉強会という、学園ものの定番回を書いてみました。三上が意外にも教え上手なところや、澪の無意識の鼻歌など、細かな小ネタも入れています。
いつもブックマーク・評価をありがとうございます。次話もお楽しみに。




