結果を待つ夜
澪から「今、終わった」というメッセージが届いてから、俺はずっとスマホを握りしめたまま過ごしていた。
『お疲れ。よく頑張ったな』
『うん。悔いはない、と思う』
『結果、いつ分かるんだっけ』
『来週の頭には連絡来るはずって、保科さんが言ってた』
即日発表ではないと聞いてはいたけれど、実際にその「待つ時間」を目の前にすると、想像以上に長く感じられた。
*
週明けの教室では、いつも通りの日常が続いていた。
「――なあ、悠人。今度こそ本当にカラオケリベンジ行こうぜ。もう資格試験のシーズンも終わっただろ」
健人の言葉に、俺と澪は思わず顔を見合わせた。「資格試験」という言葉が、これで本当の意味で最後になるのだと、改めて実感する。
「――ああ、そうだな。今度こそ行こう」
「お、珍しく即答だな。何かいいことでもあったのか?」
「――さあな」
誤魔化すように答えると、健人は不思議そうな顔をしながらも、それ以上は追及してこなかった。隣で澪が、小さく笑いを堪えているのが分かった。
*
放課後、あの公園で、俺たちはいつものように並んでブランコに座っていた。
「――結果、怖いか」
「うん、正直。でも、今回は前よりずっと落ち着いてる気がする」
澪はそう言うと、鞄の中から、あの小さな丸いお守りを取り出した。
「――ユウの分、ちゃんと持ってきてくれた?」
「ああ、ここにある」
俺もポケットから同じものを取り出す。並べて見ると、なんだか対のように見えて、少し照れくさかった。
「――結果がどうであれ、ちゃんと二人で受け止めような」
「うん。私一人じゃない気がする、それだけで、だいぶ心強い」
夕日が沈みかけて、公園全体が茜色に染まっていく。二人でこうして、ただ隣にいるだけの時間が、これほど大切に感じられる日が来るとは、三年前の俺には、想像もできなかった。
*
その夜、澪から届いた最後のメッセージには、静かな決意が綴られていた。
『結果が出るまで、あと少し』
『ああ。どんな結果でも、澪はよく頑張った。それは、もう変わらない事実だ』
『――うん。ありがとう、ユウ』
『何かあったら、いつでも呼べよ。今度は、お守り以外にも何か力になれるかもしれないし』
『ふふ、頼りにしてる』
窓の外に浮かぶ月を眺めながら、俺はもう一度、手の中の小さなお守りを握りしめた。
結果はまだ、誰にも分からない。それでも、ここまで積み重ねてきた日々が、無駄になることは決してない――そう信じられるだけの確かなものが、俺たちの間には、もう出来上がっていた。
文化祭から始まった長い物語は、こうしてまた新しい一区切りを迎えようとしていた。だが、澪の人生を大きく左右するこの結果を、俺たちがどう受け止めることになるのか――その答えは、もう間もなく、明らかになろうとしていた。
第50話まで読んでくださって、ありがとうございます!
最終選考を終え、結果を待つ静かな時間を描きました。「資格試験」ネタもついに卒業となり、二人の関係も新しい段階に入っています。次話では、いよいよ最終選考の結果が明らかになります。どうぞお楽しみに。
いつもブックマーク・評価をありがとうございます。次話もお楽しみに。




