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第34話 結果発表

 放課後、視聴覚室での委員会解散式――文化祭実行委員としての活動は、この日で正式に終わりを迎えることになっていた。


「みんな、三週間以上お疲れ様。文化祭、大成功だったな」


 委員長の挨拶に、拍手が起こる。健人と三上が肩を組んで、感慨深げな顔をしていた。


「なんか、寂しいな。もう実行委員の集まりないのか」

「三上、お前、意外とウェットだよな」

「ウェットで悪いか」


 二人のやり取りに、澪も小さく笑っている。だがその笑顔の端に、隠しきれない緊張がまだ残っているのを、俺は見逃さなかった。


  *


 解散式のあと、下駄箱で靴を履き替えていると、澪のスマホが小さく震えた。画面を見た澪の顔が、一瞬で強張る。


「――保科さんから」


 澪はその場で電話に出た。俺は少し離れた場所で、祈るような気持ちで待つ。数分後、電話を切った澪が、ゆっくりとこちらを振り返った。表情からは、まだ何も読み取れない。


「――どうだった」


 澪はしばらく黙り込んだあと、ふいに、くしゃっと顔を崩した。


「――通った。二次審査、通過したって」


 その一言に、俺は思わず声を上げそうになった。


「マジか……! おめでとう!」

「うん……ありがとう」


 澪の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。三年前、引っ越しの日にも見せなかった涙。今、こうして目の前で流れているそれに、俺は胸が熱くなるのを感じた。


「これで、あとは最終選考だけ。詳細はこれから連絡が来るみたいだけど、多分、もう少し大きな規模の審査になるって」

「最終選考、か」

「うん。でも、今日はまず、今日の結果を喜びたい」


 澪はそう言って、目元を拭いながら笑った。三年前と変わらない、屈託のない笑顔だった。


  *


 その場に、たまたま忘れ物を取りに戻ってきた健人と三上が通りかかった。


「――お、二人ともこんなとこで何してんの」


 健人の呑気な声に、澪は慌てて涙を拭う。


「な、なんでもない。ちょっと、感動する話聞いてただけ」

「感動する話?」

「うん、資格試験、無事に合格したって聞いて」


 三度目の「資格試験」誤魔化しに、俺は思わず笑いを堪えるのに苦労した。健人はあっさりと納得し、三上が「おめでとう」と屈託なく祝福する。


「雨宮さん、資格試験にそんなに真剣になってたんだ。すごいな」

「あ、ありがとう、三上くん」


 澪が引きつった笑顔で応じるのを見て、俺は肩を震わせて笑ってしまった。


「相馬、なんで笑ってんだよ」

「いや……いい話だなと思って」


 誤魔化す俺の顔を、澪がじとっと睨んでくる。だがその目には、隠しきれない喜びが滲んでいた。


  *


 その夜、スマホには、これまでで一番弾んだメッセージが届いた。


『今日は、本当にありがとう』

『こっちこそ、おめでとう。よく頑張ったな』

『うん。最終選考も、もっと大きな壁になると思うけど……今なら、なんとかなる気がする』

『何かあったら、いつでも言えよ。健人の資格試験ネタ、また使えるかもしれないし』

『――さすがにもう限界だと思う、あのネタ』


 冗談を交わしながら、俺は画面越しに、澪の弾んだ気持ちが伝わってくるのを感じていた。文化祭という大きな山を越え、澪はまた一つ、新しい扉を開こうとしていた。

 第34話まで読んでくださって、ありがとうございます!


 ついに二次審査通過という結果が出ました。健人の「資格試験」ネタもいよいよ限界を迎えつつありますが(笑)、次話ではいよいよ最終選考に向けた新たな展開と、文化祭を終えたクラスメイトたちとの関係の変化を描いていきます。


 ブックマーク・評価、いつも励みになっています。次話もお楽しみに。

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