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第33話 結果を待つ日々

 審査から数日、澪の表情には、隠しきれない緊張がにじんでいた。


 教室では相変わらず愛想のいい笑顔を保っているものの、休み時間にふとスマホを気にする回数が、以前より明らかに増えている。


「――なあ、雨宮さん、最近スマホばっかり見てるけど、彼氏からの連絡待ちとか?」


 健人が何気なく放った一言に、澪は思い切りむせた。


「――ごほっ、な、なんでそうなるの」

「いや、なんとなく。何か大事な連絡待ってる感じがしたから」


 健人にしては珍しく的を射た指摘に、俺は内心で冷や汗をかいた。だが澪はすぐに、いつもの澄まし顔を取り戻す。


「大事な連絡っていうか……資格試験の結果待ちみたいなもの、かな」

「あー、また資格試験か。雨宮さん、資格マニアなんだな」


 健人はあっさり納得すると、それ以上追及することなく話を切り上げた。以前の「二次審査」を「資格試験」と誤魔化した一件を、まさかここで再利用することになるとは思わなかった。


「――ユウ、さっきの誤魔化し、我ながら苦しかった」


 放課後、二人になったタイミングで澪が小声でぼやいた。


「二回目だから、逆に自然に聞こえたと思うぞ」

「そう思う? ちょっと安心した」


 軽口を交わしながらも、澪の目の下にはうっすらと隈が見えた。結果を待つ緊張が、思った以上に負担になっているのだろう。


  *


 その日の委員会活動では、三上が張り切って新しい提案をしてきた。


「なあ、そろそろ体育祭の話も出てくる頃だし、うちのクラス、応援団に人手足りないんだって。誰か立候補いないか」


 その一言に、健人が勢いよく手を挙げた。


「俺、応援団やる! 声出すの得意だし!」

「お前、うるさいだけだろ」

「うるさいのも才能のうちだ」


 健人の自信満々な様子に、教室から笑いが漏れる。澪も思わずくすりと笑った。こうした何気ない日常の賑やかさが、今の澪にとって、いい息抜きになっているようだった。


「三上くんも出るの?」

「もちろん。俺、応援団長候補だし」

「候補って、誰が決めたんだよ」

「自分で立候補すれば、それはもう候補だろ」


 健人と三上の噛み合っているようで噛み合っていない会話に、俺と澪は顔を見合わせて笑いを堪えた。文化祭が終わっても、こういう賑やかさは変わらないらしい。


  *


 夜、いつものメッセージのやり取りの中、澪がぽつりと本音を漏らした。


『正直、結果のこと考えると、夜眠れない日もある』

『無理すんなよ』

『うん。でも、今日、健人くんと三上くんの応援団の話聞いて、ちょっと笑えた。ありがたい』


 澪の中で、少しずつ緊張と日常のバランスが取れ始めているのを感じて、俺は少しほっとした。


『体育祭、澪も何か出るのか』

『多分クラス対抗リレーとか出ることになりそう。ユウは?』

『備品調達の反省会だけで、もう疲れてる』

『気が早すぎる』


 軽口を交わしながら、俺たちはそれぞれの緊張を、少しずつ言葉にして分かち合っていた。結果はまだ分からない。それでも、こうして支え合える時間があることが、今の俺たちにとって何よりの救いだった。

 第33話まで読んでくださって、ありがとうございます!


 結果を待つ緊張感の中にも、健人と三上の応援団コンビ(?)のやり取りで、くすっと笑える場面を挟んでみました。体育祭という新しい行事の気配も、少しずつ見えてきています。次話では、いよいよ結果が明らかになります。


 いつもブックマーク・評価をありがとうございます。次話もお楽しみに。

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