第27話 祭りのあと
文化祭が終わった翌日は振替休日で、実行委員だけが登校し、最後の後片付けをすることになっていた。正式な解散式は、報告書の提出と決算処理が済んでから、後日改めて行われる予定だという。
「――三日間、お疲れ様でした! 今日はひとまず、片付けだけよろしくお願いします」
委員長の一声に、疲れの滲んだ笑い声が上がる。教室に残っていた飾りつけや看板を丁寧に片付けながら、実行委員たちはどこか晴れやかな表情を浮かべていた。
「なあ、この飾り、記念に一部もらってっていいかな」
健人が、端材で作った小さな装飾を手に取りながら言う。三上が呆れたように肩をすくめた。
「お前、そういうとこだけマメだよな」
「思い出は大事にしたい主義なんだよ」
健人はそう言いながら、しっかり三つも装飾を確保していた。マメというより、単に欲張りなだけな気もしたが、誰も指摘しなかった。
*
澪と俺は、内装班として最後まで残った飾りの撤去を担当していた。三週間かけて作った看板を外しながら、澪がしみじみと呟く。
「――なんか、寂しいね。あんなに大変だったのに」
「まあ、終わってみればあっという間だったな」
「うん。予算オーバー事件がなかったら、この飾りも生まれてなかったと思うと、不思議な気分」
澪はそう言って、看板の端に残った端材の切れ端を、大事そうに手のひらに乗せた。
「――澪、まさかそれも記念に持って帰る気か」
「だ、だめ?」
「健人と同じこと言ってるぞ、それ」
「――くっ、否定できない」
悔しそうに顔をしかめる澪に、俺は思わず声を上げて笑ってしまった。
*
片付けが一段落した頃、澪が少し改まった様子で切り出した。
「――今日の帰り、保科さんに電話する」
「今日、か」
「うん。文化祭が終わったら、って約束したから。先延ばしにすると、きっとまた言い訳を探しちゃう気がする」
澪の声には、覚悟がにじんでいた。俺は小さく頷く。
「――何か手伝えることはあるか」
「ううん、これは私が自分の言葉で話さないと意味がないから。でも……」
「でも?」
「終わったら、一番に相馬くんに報告する。それでいい?」
澪の真っ直ぐな瞳に見つめられ、俺は少し照れながらも頷いた。
「――ああ。待ってる」
*
その日の夕方、澪から短いメッセージが届いた。
『これから電話する。緊張してきた』
『大丈夫だ。今までちゃんと積み重ねてきたんだから』
『――うん。行ってきます』
澪らしくない、どこか儀式めいた一言に、俺は小さく笑いながらも、画面の向こうの澪の緊張を思って、しばらくスマホを見つめ続けていた。
第27話まで読んでくださって、ありがとうございます!
文化祭の後片付けと、健人・澪の記念品争奪戦(?)でくすっと笑える場面を挟みつつ、いよいよ澪が保科さんに向き合う決意を固めました。次話では、その電話の内容が明らかになります。
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