第25話 二日目の攻防
文化祭二日目は、朝から昨日以上の人出だった。校門前には他校の生徒や近隣住民の姿もあり、教室の前には開店前から小さな列ができていた。
「――昨日の反省を活かして、今日は効率重視で行くぞ」
委員長の号令で、実行委員一同が気合を入れ直す。三上は昨日の呼び込みが「声はデカいが空回りだった」と反省し、今日はメニューを手にお客さんに丁寧に説明する作戦に切り替えていた。
「――当店自慢のワッフルは、実は焼き加減にこだわっておりまして……」
「三上、営業トーク覚えてきたのか」
「昨日の夜、家でめちゃくちゃ練習した」
三上が真顔でそう答えるものだから、俺は思わず笑ってしまった。空回り気味だった昨日から一転、今日の三上は妙に堂に入った接客をこなしている。
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健人はというと、昨日の反省を活かし、電卓を正しい向きで構えることには成功していた。だが今度は、常連らしき客の顔を覚えようと張り切りすぎて、初対面の生徒に「あ、昨日も来てくれましたよね!」と自信満々に話しかけ、盛大に人違いをしていた。
「――いや、俺、今日が初めてなんですけど」
「――そ、そうでしたか。えっと、他人の空似ですね、はい」
しどろもどろになる健人の姿に、レジの後ろで澪が肩を震わせて笑いを堪えているのが見えた。
「――澪、笑いすぎ」
「だ、だって……健人くん、変な自信満々さだったから……」
珍しく素の反応を見せる澪に、俺までつられて笑ってしまった。
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昼過ぎ、客足が一段落したタイミングで、俺と澪は交代で少し休憩を取ることになった。校舎裏の渡り廊下で、二人並んで座り込む。
「――疲れたな」
「うん。でも、昨日よりずっとスムーズにいってる」
「健人の人違い事件を除けば、な」
俺がそう言うと、澪はまた小さく吹き出した。
「そういえば、健人くんのあの慌てぶり、なんか可愛かった」
「可愛いか、あれ」
「うん。いつも自信満々な健人くんが、たまにポンコツになるところ、ちょっと親近感湧く」
澪の意外な一面に、俺は苦笑した。完璧な澄まし顔で過ごすことの多い澪だからこそ、誰かの不完全さに親しみを覚えるのかもしれない。
「――お前だって、リハーサルの時、盛大に噛んでただろ」
「そ、それは言わない約束でしょ!」
顔を赤くして抗議する澪に、俺は思わず声を上げて笑った。
*
二日目の営業も無事に終わり、二日間の疲労が一気に押し寄せる中、実行委員全員でささやかな打ち上げムードに浸っていた。
『二日間、本当にお疲れ様』
『健人の人違い事件、笑いすぎて今日一番疲れた』
『それ言ったら、澪のリハーサルの噛みっぷりも相当だったけどな』
『――蒸し返すの禁止!』
文化祭二日目は、笑いあり、ヒヤリとする場面ありの、賑やかな一日として幕を閉じた。残すは、後夜祭を含めた最終日だけとなった。
第25話まで読んでくださって、ありがとうございます!
三上の営業トーク特訓や、健人の人違い事件など、今回も賑やかな一日になりました。澪の意外な素の反応も見られた回でしたが、いかがでしたでしょうか。文化祭もいよいよ最終日を残すのみとなりました。
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