第17話 予算オーバー事件
「――で、内装の予算、あと三千円しか残ってないんだけど」
放課後の実行委員会議で、会計係の報告に教室が一気にざわついた。三上が頭を抱える。
「マジか……木材とペンキ、まだ買い足さないといけないのに」
「装飾用の布地も、追加で必要って内装班から聞いてる」
健人が備品リストを片手に難しい顔をする。予定していた内装のクオリティを保つには、明らかに予算が足りていなかった。
「学年全体の予算配分、見直してもらえないか掛け合ってみるか?」
「先生に相談しても、簡単には増やしてもらえないと思うぞ、多分」
沈黙が流れる中、俺はふと備品調達班として、これまで見てきた発注リストを思い出していた。
「――ちょっと待ってくれ。ホームセンターの端材コーナー、まだ使ってなかったよな」
「端材?」
「規格外のサイズだったり、色がちょっと違うだけの木材とか、安く売ってるコーナーがあるんだ。前に澪と買い出しに行った時に見かけた」
澪が、はっとしたようにこちらを見た。
「あ……そうだ、あった。デザイン次第では全然使えそうな端材、結構あったよね」
「サイズが不揃いでも、いっそデザインの一部にしちまえば、逆に味が出るかもしれない」
三上が身を乗り出してくる。
「それ、いいかもしれない。統一感より、あえて手作り感を出すデザインにすれば、端材でも違和感なくなる」
俄然、教室の空気が前向きになっていく。健人が笑いながら肩を叩いてきた。
「相馬、意外と頼りになるじゃん」
「別に、たまたま覚えてただけだ」
照れくさくなって視線を逸らすと、澪と目が合った。澪は何も言わず、ただ小さく微笑んでいた。
*
会議のあと、備品調達班として実際に端材コーナーを確認しに行くことになった。健人と手分けして店内を回っていると、途中で澪と鉢合わせた。
「今日、格好良かったよ」
「大袈裟だろ」
「ううん。ちゃんとみんなのこと考えて、解決策出せるユウ、意外と頼りになるなって、改めて思った」
まっすぐな言葉に、俺は思わず視線を泳がせる。
「三年前より、ずっと頼もしくなったね」
「三年もあれば、多少は成長するだろ」
「うん。私も、負けないように頑張らないと」
澪の声には、これまでにない前向きな響きがあった。予算オーバーという小さなトラブルを乗り越えたことで、実行委員全体の結束が、また一段と強まった気がした。
*
その夜のメッセージには、珍しくクラスの出し物への意気込みが綴られていた。
『今日の作戦会議、盛り上がったね』
『みんなで知恵絞って乗り越えるの、悪くないな』
『うん。文化祭本番、絶対いいものにしようね』
予算の危機は去ったものの、文化祭本番までの道のりは、まだまだ長い。それでも、こうして一つずつ課題を乗り越えていく過程が、俺たちの関係だけでなく、クラス全体の絆をも、確かに育てていた。
第17話まで読んでくださって、ありがとうございます!
予算オーバーというピンチを、実行委員全員の知恵で乗り越える回になりました。悠人の意外な頼もしさに気づく澪、いかがでしたでしょうか。クラス全体の団結力も、少しずつ描いていきたいと思っています。
ブックマーク・評価、いつも励みになっています。次話もお楽しみに。




