驚くほど冷めた気持ち
スマホを握ったまま、
しばらく画面を見つめていた。
(まずは……亮介に向き合わないと)
叶多と会う前に、
ちゃんと終わらせなきゃいけない。
自分の気持ちを曖昧にしたまま
進むのは嫌だった。
ゆっくり息を吸って、
指を滑らせる。
「話があるから会えないかな?」
送信した瞬間、
胸の奥が少しだけ重くなる。
すぐに返事が来た。
「別れ話なら会わないから」
(……そう来るんだ)
ため息が漏れた。
逃げるんだ。
いつもそう。
でも、
このまま放置するわけにはいかない。
画面を見つめながら、
自分でも驚くほど
迷いなく電話ボタンを押していた。
コール音が続く。
出ないと思った。
出ないでほしいとも思った。
でも——
亮介は出た。
「……もしもし?」
声が少し慌てている。
息が乱れている。
(話せないなら出なきゃいいのに)
そう思った瞬間、
電話の向こうから女の声が聞こえた。
「ねぇ、どうしたの?」
小さく、
でもはっきりと。
胸の奥がすっと冷える。
(……ほら)
何も変わってない。
口だけだよね、いつも亮介は。
「美桜、今ちょっと……」
言い訳の声が続く。
その声を聞きながら、
自分の心が
完全に静かになっていくのが分かった。
怒りでも悲しみでもない。
ただ、終わったんだと理解する静けさ。
「亮介、もういい。また連絡するから」
自分でも
驚くほど落ち着いた声だった。
電話を切ったあと、
スマホをゆっくり置く。
胸の奥に残ったのは、
迷いのない感覚だった。




