陽キャの運命
火が消えかけた校庭を、
彼はゆっくりと歩いていた。
輪の中心から離れたのは、
ほんの数分。
でもその短い静けさの中で、
ようやく見つけた。
——あ。
校舎裏へ続く小道。
薄暗い照明の下、
ひとり歩いていく後ろ姿。
制服の裾が揺れて、
風に髪が少しだけ流れて。
彼は思わず足を速めた。
声をかけようと、
息を吸った。
その瞬間。
「会長、少しお時間いいですか?」
背後から、
震えるような声。
振り返ると、
後輩の女子が立っていた。
校庭の照明に照らされて、
その目が少し赤いのが見えた。
——ああ、これか。
文化祭の後夜祭。
毎年、誰かが泣いて、
誰かが告白する。
陽の中心にいる彼は、
その“誰か”の対象になりやすい。
「……ごめん、ちょっとだけいい?」
彼はもう一度だけ、
小道の先を見た。
さっきまでいた影は、
もうどこにもいなかった。
後輩の女子が深呼吸をして、
彼の前に立つ。
「ずっと……好きでした」
火の残り香が漂う校庭で、
彼は小さく息を吐いた。
——今日、何回目だろう。
それでも、
胸の奥のざわつきはいつもと違った。
さっき見えた後ろ姿が、
まだ頭のどこかに残っている。
「……ありがとう。
気持ちは嬉しいよ」
声が少しだけ掠れた。
「でも、今は……誰とも付き合うつもりがないんだ。
ちゃんと向き合えないまま返事するのは、
もっと失礼だから」
言いながら、
ポケットの中のハンカチに触れた。
返せなかった。
聞けなかった。
——直してくれたなら、
ありがとうって一言だけでも言いたい。
胸の奥が、
静かにざわついた。




