↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タイムカプセル~10年前のラブレター~  作者: 柚原 澄香


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/105

陽キャの運命

火が消えかけた校庭を、

彼はゆっくりと歩いていた。


輪の中心から離れたのは、

ほんの数分。


でもその短い静けさの中で、

ようやく見つけた。


——あ。


校舎裏へ続く小道。

薄暗い照明の下、

ひとり歩いていく後ろ姿。


制服の裾が揺れて、

風に髪が少しだけ流れて。


彼は思わず足を速めた。

声をかけようと、

息を吸った。


その瞬間。


「会長、少しお時間いいですか?」


背後から、

震えるような声。


振り返ると、

後輩の女子が立っていた。

校庭の照明に照らされて、

その目が少し赤いのが見えた。


——ああ、これか。


文化祭の後夜祭。

毎年、誰かが泣いて、

誰かが告白する。


陽の中心にいる彼は、

その“誰か”の対象になりやすい。


「……ごめん、ちょっとだけいい?」


彼はもう一度だけ、

小道の先を見た。


さっきまでいた影は、

もうどこにもいなかった。


後輩の女子が深呼吸をして、

彼の前に立つ。


「ずっと……好きでした」


火の残り香が漂う校庭で、

彼は小さく息を吐いた。


——今日、何回目だろう。


それでも、

胸の奥のざわつきはいつもと違った。


さっき見えた後ろ姿が、

まだ頭のどこかに残っている。


「……ありがとう。

 気持ちは嬉しいよ」


声が少しだけ掠れた。


「でも、今は……誰とも付き合うつもりがないんだ。

 ちゃんと向き合えないまま返事するのは、

 もっと失礼だから」


言いながら、

ポケットの中のハンカチに触れた。


返せなかった。

聞けなかった。


——直してくれたなら、

ありがとうって一言だけでも言いたい。


胸の奥が、

静かにざわついた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。