胸の奥底の気持ち
「……うん。会いたい」
美桜がそう言った瞬間、
胸の奥がじんわり熱くなった。
嬉しい。本当に嬉しい。
ずっと欲しかった言葉だった。
10年も、心のどこかで美桜を思い続けてきた。
それを本人は知らない。
帰り道を歩きながら、
美桜の横顔をそっと盗み見る。
少しだけ柔らかい表情になっていて、
その変化が自分のせいだと思いたくなる。
(……また会えるんだ)
その事実だけで、胸が軽くなる。
でも——
同時に、胸の奥に小さな棘が刺さったままだ。
(タイムカプセルのこと……まだ言えてない)
あの日のこと。
10年前のこと。
ずっと言えずに抱えてきた秘密。
言ったらどう思うだろう。
重いと思われるだろうか。
引かれるだろうか。
そして——
もっと汚い部分もある。
(……嫉妬深いんだよな、俺)
美桜が田島と話しているだけで、
笑っているだけで、
心が落ち着かなくなる。
(早く……別れてほしい)
思ってしまう。
綺麗じゃない感情だと分かっているのに、
抑えられない。
美桜が自分の隣に来てくれたら——
そんな未来を想像してしまう。
(美桜は……俺のこと、どう思ってるんだろう)
嫌がってはいない。
むしろ、少しだけ心を開いてくれた気がする。
でも、
自分の心のうちの“汚れた部分”を
見せたらどうなるだろう。
10年も思い続けていること。
嫉妬深いこと。
田島を早く手放してほしいと思っていること。
そんな自分を知ったら、
美桜は離れていくだろうか。
(……怖いな)
でも、
それでも——
また会いたいと思ってしまう。
美桜の「会いたい」が、
胸の奥で静かに響いて熱を宿していた。




