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叶多の優しさ
叶多くんが
そっと涙をぬぐってくれた指先を、
私は思わず掴んでしまった。
自分でも驚くくらい、
その温もりにすがりたくなった。
目が潤んだまま、
私は叶多くんを見つめる。
「あのね……
叶多くんに、話さないといけないことがあって」
言った瞬間、
喉の奥がぎゅっと締めつけられた。
「あ……あの……えっと……」
言葉が出ない。
息がうまく吐けない。
胸が苦しい。
(どうしよう……
こんなはずじゃなかったのに)
叶多くんが、
私の様子を見てすぐに察した。
「落ち着いて話せる静かなところに
移動しようか?」
優しい声。
逃げ道を作ってくれる声。
「話すの、今じゃなくても平気だよ。
いつでも時間取れるから、無理しないで」
その言葉だけで、
胸の奥がじんわり温かくなった。
でも——
「……ううん、今がいい」
自分でも驚くほど、
はっきり言えていた。
今じゃないと、
きっとまた逃げてしまう。
叶多くんの前だからこそ、
ちゃんと向き合いたかった。




