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タイムカプセル~10年前のラブレター~  作者: 柚原 澄香


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俺じゃダメか?

「……幻滅されちゃうと思う」


その小さな声が落ちた瞬間、

胸の奥がきゅっと締めつけられた。


「幻滅なんかしないよ」


思わず言葉が出た。

迷いも、ためらいもなかった。


「教えて。困ってるなら力になりたい」


美桜は驚いたように目を瞬かせ、

それから視線を落とした。



「……」


沈黙。

けれど、その沈黙は“拒絶”ではなかった。


叶多は、そっと問いかける。


「ああいうふうに手を上げられるようなこと……

よくあるのか?」


美桜は慌てて首を振った。


「あ、違うの。

あれは初めてで。

それに……叶多くんの部下だったら、

やりにくくなっちゃうよね?ごめん」


「気にしなくていいよ。平気だよ」


即答だった。

本当に気にしていなかった。


むしろ——気にしていたのは別のことだ。



美桜は小さく息を吸い、

覚悟を決めたように口を開いた。


「実はね……

り、田島さんは、本命の彼女が別にいるみたいで」


「え?」


声が少し大きくなった。

知っていたけれど、

知らなかったふりをするしかなかった。



美桜は続けた。


「でも、私もそれわかってて。

……なんていうか、

彼氏がいた方が都合がいいことって、

この歳になるとよくあって……」



言葉が弱くなる。

自分を責めるような声音。


叶多は黙って聞いていた。


「……幻滅した……よね?」


美桜が不安そうに顔を上げる。


叶多はゆっくり首を振った。



「……いや」


そして、静かに踏み込む。


「相手がいると何かと都合が良いって……

どういうこと?ストーカーとかいるのか?」


「そういう訳じゃないんだけど……」


美桜は困ったように笑った。

その笑顔が、痛かった。


叶多は一度だけ息を吸い、

覚悟を決めたように言った。



「その役目……俺じゃダメか?」


言った瞬間、

美桜の目が大きく揺れた。

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