↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タイムカプセル~10年前のラブレター~  作者: 柚原 澄香


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
63/103

美桜と田島

エントランスに近づくにつれて、

空気が少しだけ張りつめているのがわかった。


声が聞こえる。

男女の、少し荒い声。


足を止める。

耳が自然とそちらへ向いた。


「……美桜?」


柱の影から見えたのは、

少しだけお洒落をした美桜と、

その前に立つ田島亮介だった。


美桜は落ち着かない様子で視線をそらし、

田島は苛立ちを隠そうともしていない。


叶多はゆっくりと二人に近づきながら、

会話を聞き取ろうとした。


「で? その格好、何。どこ行くの?」


田島の声は、

抑えているようで抑えきれていない。


美桜は短く息を吸い、静かに言った。


「そんなの……気にする人じゃないでしょ?」


その言い方は、どこか諦めたようで、

でも、強さもあった。


田島の眉がぴくりと動く。


「……お前、なんか変わったよな。男でもできた?」


美桜は一瞬だけ目を伏せ、

それから田島をまっすぐ見た。


「……亮介に関係なくない?自分だって遊んでるくせに」


田島の表情が一気に険しくなる。


「はぁ? なにお前」


「私、“お前”って言われるの嫌い」


その瞬間、田島の肩がわずかに動いた。


手を上げるつもりなのか、

あるいは肩を掴むつもりなのか——

どちらにしても、美桜に触れようとした。


叶多の身体が、考えるより先に動いていた。


「——やめろ、田島」


田島の手が美桜に触れる前に、

叶多は二人の間に割って入った。


美桜が驚いたように目を見開く。

田島は一瞬、状況が飲み込めない顔をした。


叶多は静かに、しかし揺るぎない声で言った。


「彼女、困ってるだろ」


その言葉に、田島の表情がさらに歪んだ。


美桜の肩が小さく震えているのが見えた。

叶多はそっと、彼女の前に立つ位置を変えた。


守るように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。