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タイムカプセル~10年前のラブレター~  作者: 柚原 澄香


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ずっと待っていた叶多

スマホを机に置いたまま、

仕事をしているふりをしていた。


いや、している“つもり”だった。


実際は——

ずっと気になっていた。


美桜からの連絡が。


あの日、玄関に袋を置いて、

短いメッセージを送ってから、

既読はついたけれど、

その後は何もなかった。


無理もない。

彼女には一応、彼氏がいる。


自分からしつこく連絡するのは違う。

迷惑になるかもしれない。

嫌われたくない。


だから、

連絡したい気持ちを押し込めて、

ただ待っていた。


……待つしかなかった。


そんなとき——

机の上のスマホが震えた。


美桜の名前。


一瞬、呼吸が止まった。


画面を開く指が、

自分でも笑えるほど早かった。


> 『この前は本当にありがとうございました。

> 元気になったので……

> よかったら、お礼させてください。』


胸の奥が、

じんわり熱くなる。


お礼なんて、

本当にいらない。


あの日はただ、

放っておけなかっただけだ。


でも——

美桜が自分に連絡をくれた。


それが、

たまらなく嬉しかった。


ずっと、

ずっと待っていた。


だから、

本音が漏れた。


> 『お礼なんて別にいいのに。

> でも、せっかくだから、飲みにでも行くか?』


誘いたかった。

ずっと。


でも、

彼氏がいる以上、

自分から踏み込むのは違うと思っていた。


だからこそ、

美桜からの連絡は、

自分にとって“許された一歩”みたいに感じた。


送信してから数秒後、

すぐに返信が届いた。


> 『私あまりいいお店わからなくて、調べておきます!』


その一文を見た瞬間、

胸の奥が熱くなる。


嬉しい。

本当に、嬉しい。


やっと——

やっとここまで来た。


ずっと遠くにいたはずの人が、

少しだけ近くに感じられた。


スマホを握りしめながら、

叶多は静かに息を吐いた。


「……楽しみだな」


抑えきれない気持ちが、

声に滲んでいた。

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