即レスに焦る
送信ボタンを押した瞬間、
心臓がドクンと跳ねた。
あ……
あれ……?
私、今……何したの……?
夜風の中で立ち止まる。
スマホを握る手がじんわり汗ばんでくる。
「や、やだ……ちょっと待って……」
勢いで送った。
完全に勢いだった。
考えるより先に指が動いていた。
“お礼させてください”
なんでそんな……
なんでそんな可愛いこと言っちゃったの私……。
取り消したい。
今すぐ取り消したい。
震える指で、
“送信取り消し”のボタンに伸ばす。
その瞬間——
既読。
「……え?」
目を見開いたまま固まる。
早い。
早すぎる。
今送ったばっかりなのに。
え、なに、見てたの?
スマホ握ってたの?
通知来た瞬間開いたの?
そんなことある……?
胸がドキドキして、
息が浅くなる。
取り消しなんて、
もうできない。
どうしよう。
どうしよう。
どうしよう。
画面を見つめていると——
ぽんっ
返信が届いた。
早い。
反射みたいな速さ。
画面に表示された文字を見た瞬間、
胸がぎゅっと締めつけられた。
> 『お礼なんて別にいいのに。
> でも、せっかくだから、飲みにでも行くか?』
優しい。
落ち着いてる。
でも、どこか嬉しそうで、
誘いたい気持ちが隠しきれてない。
その“でも”に、
胸がまた跳ねた。
「……どうしよう……」
恥ずかしいのに、
嬉しい。
怖いのに、
胸が熱い。
亮介と会った帰り道なのに、
今、心を占めているのは——
叶多くんの返信だけだった。




