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タイムカプセル~10年前のラブレター~  作者: 柚原 澄香


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気持ちの確認

亮介の名前を見つめながら、

胸の奥が静かにざわついていた。


「……連絡、しよう」


別れ話をしたいわけじゃない。

責めたいわけでもない。


ただ——

自分の気持ちを確かめたかった。


亮介との関係が、

もう自分にとって何なのか。


そして、

“愛されたいし、愛したい”と思った自分が、

どこに向かっているのか。


それを知りたかった。



> 『今日、少し話せる?』


送った瞬間、

胸がきゅっと締めつけられた。


すぐに既読がつく。


> 『いいよ!今から行く!』


……早い。


思わず苦笑した。


本命が別にいるくせに、

こういうときだけフットワークが軽い。


前なら、

その軽さを“楽でいい”と思っていた。


でも今は——

なんだか、

胸の奥が冷える。



亮介は本当にすぐ来た。


「美桜、久しぶり。元気になった?」


軽い笑顔。

軽い声。

軽い距離感。


前はそれでよかった。

むしろ気楽で、

深く考えなくて済んだ。


でも今日は、

その軽さが胸に刺さる。


「……うん。元気になったよ」


自分の声が、

思ったより冷静で驚いた。


亮介は気づかない。

むしろ嬉しそうに距離を詰めてくる。


「会いたかったよ、美桜」


その言葉に、

胸はまったく動かなかった。


ああ——

もう、私はこの人を愛していないんだ。


その事実が、

静かに胸に落ちた。


亮介が話している間、

私はずっと自分の心を探っていた。


この人といるとき、

胸は跳ねない。

頬も熱くならない。

ドキドキもしない。


ただ、

“何もない”。


それが答えだった。




ふと、

叶多くんの顔が浮かんだ。


胸の奥が、

じんわりと熱くなる。


亮介の言葉では動かなかった胸が、

叶多くんを思い出した瞬間だけ、

確かに反応した。


——ああ、そうか。


私はもう、

亮介とは終わっている。


そして、

心が向いているのは別の人なんだ。


その確信が、

静かに、でもはっきりと胸に灯った。


亮介が何か楽しそうに話している。

でももう、その声は遠くに聞こえた。


私はただ、

自分の気持ちを確かめに来ただけ。


そして——

答えはもう出ていた。


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