気持ちの確認
亮介の名前を見つめながら、
胸の奥が静かにざわついていた。
「……連絡、しよう」
別れ話をしたいわけじゃない。
責めたいわけでもない。
ただ——
自分の気持ちを確かめたかった。
亮介との関係が、
もう自分にとって何なのか。
そして、
“愛されたいし、愛したい”と思った自分が、
どこに向かっているのか。
それを知りたかった。
> 『今日、少し話せる?』
送った瞬間、
胸がきゅっと締めつけられた。
すぐに既読がつく。
> 『いいよ!今から行く!』
……早い。
思わず苦笑した。
本命が別にいるくせに、
こういうときだけフットワークが軽い。
前なら、
その軽さを“楽でいい”と思っていた。
でも今は——
なんだか、
胸の奥が冷える。
亮介は本当にすぐ来た。
「美桜、久しぶり。元気になった?」
軽い笑顔。
軽い声。
軽い距離感。
前はそれでよかった。
むしろ気楽で、
深く考えなくて済んだ。
でも今日は、
その軽さが胸に刺さる。
「……うん。元気になったよ」
自分の声が、
思ったより冷静で驚いた。
亮介は気づかない。
むしろ嬉しそうに距離を詰めてくる。
「会いたかったよ、美桜」
その言葉に、
胸はまったく動かなかった。
ああ——
もう、私はこの人を愛していないんだ。
その事実が、
静かに胸に落ちた。
亮介が話している間、
私はずっと自分の心を探っていた。
この人といるとき、
胸は跳ねない。
頬も熱くならない。
ドキドキもしない。
ただ、
“何もない”。
それが答えだった。
ふと、
叶多くんの顔が浮かんだ。
胸の奥が、
じんわりと熱くなる。
亮介の言葉では動かなかった胸が、
叶多くんを思い出した瞬間だけ、
確かに反応した。
——ああ、そうか。
私はもう、
亮介とは終わっている。
そして、
心が向いているのは別の人なんだ。
その確信が、
静かに、でもはっきりと胸に灯った。
亮介が何か楽しそうに話している。
でももう、その声は遠くに聞こえた。
私はただ、
自分の気持ちを確かめに来ただけ。
そして——
答えはもう出ていた。




