嬉しい返信を見つめて
スマホが震えた。
画面に表示された名前を見た瞬間、
胸の奥が一気に熱くなる。
“美桜”
さっき交換したばかりの名前。
まだ見慣れないのに、
もうこんなにも心臓が跳ねる。
メッセージを開く。
> 『ありがとう。
> 本当に助かりました。』
短い。
でも、美桜らしい。
律儀で、
真面目で、
弱ってるときでも礼儀を忘れない。
——だから疲れるんだよ。
そう思った瞬間、
胸がぎゅっと締めつけられた。
続けて、もう一通。
> 『元気になったら、何かお礼させてください。』
その一文を見た瞬間、
思わず息を呑んだ。
お礼なんていらない。
むしろ、こっちがありがとうだ。
会えるなら何でもする。
今すぐ返事したい。
もっと話したい。
声が聞きたい。
——でも。
相手は病人だ。
前のめりに返したら、
負担になるだけだ。
深呼吸して、
気持ちを押し込める。
スマホを握る手が、
少しだけ震えていた。
本当は長文で返したい。
でも、それは違う。
だから、
できるだけ柔らかく、
短く、
美桜が読みやすいように。
ゆっくり文字を打つ。
> 『無理しないで。ゆっくり休んで』
それだけじゃ素っ気ない気がして、
やわらかい笑顔のスタンプをひとつ添えた。
送信。
画面に表示された自分のメッセージを見つめながら、
叶多は小さく息を吐いた。
——ほんとは、もっと話したいのにな。
でも、
美桜からの返信が来たことが、
それだけで十分すぎるほど嬉しかった。
スマホを胸ポケットにしまいながら、
叶多はふと空を見上げた。
10年越しに繋がった名前が、
こんなにも心を揺らすなんて。




